有名人のサブアカ。その響きだけで「いけないものを見ている」感覚になる。
「モテクリエイター」として活躍するゆうこす。SNSで絶大な支持を誇るインフルエンサーである彼女は、Twitterに2つめのアカウントを持っている。
それが1年前に開設した「てきと〜なゆうこす」だ。これまで「ゆうこす」として、「SNSではポジティブな発信を心がけましょう」と言ってきた彼女が、ダウナーな投稿や、ぶりっ子キャラが聴きそうにないサブカル的な趣味、彼氏の話や整形手術を受けたことなどを赤裸々に綴る。有名人が見せることのなかった「非・表」の部分は注目を集め、サブアカにもかかわらずフォロワーは10万人を超えた。
「これは、サブアカであって裏アカではないんです」とゆうこすは言う。
SNS上での完璧な所作で夢を叶え続けてきた彼女は、この数年で何を考え、「てきと〜」さを表に出すようになったのか? (撮影/飯本貴子、編集/坪井遥、メルカリマガジン編集部)
「遊ぶ」って何をすればいいのかわからなかった
「モテたい」と思ってることも本当だし、「ゆうこす」の活動を心の底から楽しんでやっています。「モテチャンネル」「可愛い」っていう部分を出していて、起用してもらっている仕事としても、そういうものが多いです。「ゆうこす」として嘘をついてるわけでは全くなく、たんにサブカルっぽい部分もネガティブなメンタリティも私自身で、そういう部分を押さえつけると苦しくなっちゃって……。
ダイヤモンドって色んな面があるからキラキラ光って見えるじゃないですか。それと同じで、人もいろんな面があるほど、魅力的だと思ったんですよね。だから単に「モテ!」「可愛い!」という面じゃなくて、ゆるいところも大切にしたいな〜と思ったんですよね。
あと友だちが欲しかった。私は10代の頃から、好きだった男の子の影響もあって、銀杏BOYZが大好きで、ほかには岡村ちゃん(岡村靖幸)ばっかり聴いてたんです。音楽以外には、ずーっとマンガを読んでて……そういう話ができる友だちが周りにいなくて、話したいなと思っていました。
私、モテクリエイターをやっているのに、女の子と話すのが苦手で学生時代の時からガッチガチのぶりっ子だったから、周りに女子がいなかったんです。悪口を言われたり、はぶられたり。でも、その理由が自分でよくわからなくて。悲しさとか怒りよりも「不思議だな、どうやったら女の子とも仲良くなれるのかな?」って考えていました。 今思えば、しっかりと男子に媚びていたので仕方ないのですが…。
「遊ぼうよ」と言われても、正直何をしていいのかわからなかった。服を買いに行くとか? それって付き合わせてるみたいで申し訳ないし。パフェを食べに行くとか? 「美味しかった、ご馳走さま」で終わりじゃないですか。脱出ゲームに行っても、本気になりすぎて会話なんてしないで終了しそう。
遊びに行く時は、いつも会話の練習をするんですけど、まったくうまくいかない。
私の彼氏はすごく社交的なので、一回しか会ったことがない人とでもサクッと遊びに行っちゃうんですよ。自分から誘って。
すごいなぁって思って「遊びに行くってどうやってするの?」と聞いたら、「他愛もない話をするだけでいいんですよ」と言われて、ちょっと驚きました。それから、私も人を誘うようになった。でもやっぱり、好きなことを共有できる友だちが欲しくて、サブアカの方では、好きなことばっかり呟いてます。見てくれる人も(本アカの)「ゆうこす」のフォロワーとは全然違くて面白いです。
「なんで整形が後ろ指さされるんだろう?」
私は、自分の顔が好きで、「今日が一番だな」って毎日思うんですよ! 昔の写真を見返すと今の方が可愛くなってるぞ、と...!(笑) 当時は当時で、「今が一番可愛い」と思っていたんですけれど。
多分、私は可愛い自分をもっと可愛くするのが好きなんです。それを発信したら女の子の友だちもできるかもしれないし!
…もっと可愛くなりたいからこそ、ここだけは変えたいと思うのが鼻でした。小さい時からずっとコンプレックスで、毎日気になりすぎて、無意識に鼻を触る癖がついていたんですね。それをからかわれたりして「あ、変なことしてるんだ」という意識が芽生えたものの、余計に気になってしまって…今でも、登壇している最中でも鼻を触ったり動かしたりしちゃうんです。挙動不審というか…前に出させていただいている手前、よくないなと。
確かに、痛みとか金銭面とかいろんな懸念材料があるけれど、それを上回るぐらい整形したい気持ちがあったんです。
そもそも、整形が非難される理由もよくわかってないし、自分的には悪いことだと思ってない。整形をしてる人もその事実を隠すし、否定する人も多い。その気持ちすら、わからなかったんです。
なんで整形が後ろ指さされるんだろう?
だから身をもって「なぜダメと言われるのか」を理解してみたかったのもあって、サブアカの方で公表しました。
SNSで発信すると、「整形するんだ(笑)」と嘲笑する人もいたし、「整形しなくてもいいのに」と言う人もいたし、普通に怒られもしました(笑)。
整形を「悪」とする側の人もいくつかパターンがある、ということに気付きました。
まずは「お金を使って可愛くなるなんてズルいです」という派閥。でも、そのお金自体、私が頑張って稼いだから自由だと思うし、お金をかけないことが美徳とも思わない。自分の中で直したいところがあって、そこをお金を払って直すだけなので! 「まあ、いいじゃ〜ん」と思いました。
ふたつめが「親からもらった身体だから傷をつけたらダメ」という派閥。「親に謝った?」と聞かれることもありました。悪いことしたと思ってないから謝罪してないですけど…。
親って確かに大事な存在。人によるけれど、18歳ぐらいまでの長い時間を親と過ごすので、すごく影響を受けると思うんです。中には、親自身の理想を子供に押し付けてしまう家庭もある。ただ、親の価値観と私の価値観は同じところもあれば、違うところもあるのが普通ですし、私は私の人生をよくしたいから整形をしたにすぎないんですね。幸せな気持ちで生きてる方が、私の親もきっと喜ぶって思ってます。
あとは、表面的に「整形=悪だからダメでしょ」と信じている人たち。そういう人に「なぜ整形はダメなんですか?」と逆に質問すると、返答がない…みたいな。
いろんな「否定派」の人たちを見ても、私は悪いことをしたわけじゃないと思ったし、一方で「整形=悪」とする人たちがいて、その理由もなんとなくわかった。自分と違う意見の人たちがいるのは自然なことなので、説得しようとは思わない。なので、最初から整形について言及しようとは思っていませんでした。私的には悪くないけど、悪いと思う人もいるから。推奨したいわけでもないので。
整形に関係なく、フォロワーの多い人を叩く人たちが言うのは「意見を言ってあげてる」とか「芸能人なのに傷つくのはおかしい」ということ。壁に向かって言葉を投げてる感覚なんだと思うけれど、みんな普通に人だから、悲しいし傷つく。整形に関しては「私は悪くないな」と腑に落ちたので今は大丈夫になりましたけど。
「てきと〜なゆうこす」では、表の完璧な感じとは違う、傷つくときもあるし、嬉しいことも悲しいことも発信してますね。裏も表もあるし、どっちもゆうこすなんです。私の、波のあるサブアカを見て、 こいつウケるな〜と思ってもらえたら嬉しいです。
仕事で一線を引く、彼氏の公表
彼氏がいる事を公表しちゃダメな理由って、逆になんだろう。私の場合だと、本当になくないですか?(笑)
もちろん、アイドルだったら彼氏の存在は公言しないと思います。夢を与える仕事だから。
でも、アイドルやってたのも9年前だし、ファンの方も女性が多いし、男性の方もガチ恋って感じではないと思うんです。もうアイドルでもないんだし、「彼氏いるの?」と聞かれた時に「うーん、いません♥」と嘘つくのもおかしいじゃないですか。それに「モテクリエイター」を名乗ってるのに、ずっと彼氏がいないっていうのは説得力がなくないですか?(笑)
あと、なんか会食とかでチャラい雰囲気を出されたり、よくわからない人からDMで誘われたり……なんてことが一切なくなって、ラッキーって思いました(笑)。
「モテ」の定義が変わった
「モテ」の定義は、すごく変わりました。「モテクリエイター」を名乗り出したときは、20歳ぐらい。当時の私は、ほぼ学校とか家族とかの世界しか知らない状況で、田舎に住んでいたからか、周りはいわゆる男性社会でした。
男性はキッチンに立たないとか、女性は一歩下がるものみたいな、古い価値観が当たり前でした。その社会しか知らなかったから、疑問すら浮かばなかった。
小さい頃から「女性は男性に媚びて、男性をうまく扱った方が勝ち」だと思っていたんです。だから「モテクリエイター」を始めたときは、「男ウケメイク」とか「あざとメイク」とか、そういう風な発信だったんですね。
でも、フォロワー数も仕事も増えて、必要に駆られて起業することになり。少しずつ会社も大きくなって、社員が増えたり人をプロデュースしたりしていく中で「起業家」として人と接するようになって、私が間違っていたなって思うようになりました。
相手に合わせるだけじゃなくて、自分の気持ちも、相手の気持ちも大事にできる人。どちらが前とか後ろとか関係ない人はとても魅力的だし、私もそういう人になりたいと思うようになりました。
昔の「モテ」は媚びの要素が強かったけれど、今はどちらかというと「自立してる人がモテる」と思ってます。当初の意味合いと、あまりにも違いすぎるので、発信しづらいなと思いつつ、まぁいいかと(笑)。
「可愛い自分」が好き、歳を重ねるのは怖くない
私、30代になっても普通にめっちゃ可愛いと思うんですよね。20代前半と今の写真を比較して「今の方がいいな」というのに似てるんですけど、その時々で可愛い定義を変えながら、多分満足してる。
例えば、今年ノースリーブの服をやっと着られるようになったんです。10代の頃って、腕がもっとムチムチしていて、着るのが怖くて……でもやっと、今年着られたんです!
年齢に応じて、接する人も環境も変わって、それに合わせて表情や雰囲気も変わっていくじゃないですか。それに合わせて、自分に似合うものも変わっていくんだろうなぁって。ずっと同じだったら飽きちゃうし。
30代になったら、ちょっとモードな服着てみようかな、とか。若すぎると「着させられてる」感がでちゃうから、早く着てみたいなって思ってます。40代になっても、きっとその時の好きなものとか環境に合わせて変化しながら、可愛く生きてる。それが楽しみだな〜。
1994年生まれ、福岡県出身。アイドルグループを脱退後ニート生活を送るも、自己プロデュースを開始し、「モテクリエイター」という新しい肩書で株式会社KOSを起業。現在はタレント、モデル、SNSアドバイザー、インフルエンサー、YouTuberとして活躍中。InstaguramやYoutubeチャンネルで紹介するコスメなどが完売するなどの影響力を持ち、SNSフォロワーは150万人以上。スキンケアブランド「youange」の立ち上げやアパレルブランド「REVEYU」のプロデュースなど数々の事業を手掛けている。著書に『共感SNS 〜丸く尖る発信で仕事を創る〜』等多数。
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