ミニマルな暮らしのなかに、少しの偏愛。ローランドが手放せない青春の相棒と純愛映画

現役ホストを引退してからは実業家へと転身し、現在はホストクラブをはじめ、美容系サロンや飲食店の経営など、チャレンジを続けるローランドさん。その原動力となっているのが、青春時代の全てを注いだサッカーの経験と純愛映画だといいます。
数々の名言の背景にあるのは、ローランドさんならではの、モノや暮らしに対する美学。なぜ、多くの人が彼に惹きつけられてしまうのかを探るとともに、そんな彼の「今、どうしても気になってしまう偏愛アイテム」を教えてもらいました。
(執筆/秦レンナ、撮影/藤原慶、編集/メルカリマガジン編集部)

「あのときできた傷」のストーリーに魅了される

気になるのは、ローランドさんのこだわりが、なぜ、どのように生まれたのか、ということ。登録者数145万人を超える、公式YouTubeチャンネル「THE ROLAND SHOW」では、自宅のインテリアや愛用品などを紹介し、「家にあるものは白か黒」、「配線がとにかく嫌い」「目に入るものは左右対称にしたい」などと、独特の美学を語っています。

「幼い頃から几帳面だったことが影響しているのかもしれません。何でも左右均等じゃないと気持ちが悪かったり、配線が見えているのが許せなかったり。人の家だったらまだ我慢できるんですけど、自宅だったり、自分の店だったり、普段目につく空間にちょっとのズレがあるのが、許せないんです。もう少し妥協できたら生きやすいのにとも思うのですが、それができない」

さらに、身につけるモノも、家に置くモノも、必要最小限だけしか持たないというローランドさん。選択肢が少ないほうが自分にとっては心地いいのだそう。

「僕、数多くのものを愛せないんですよ。ひとつのものを徹底的に愛する方が性に合っているし、何より素敵じゃないですか。ただ、数年前はたくさん服を持っていた時期もありました。でも、『今日は何を着よう』と考える、その作業が僕にとってはあまり楽しいものじゃなかったんです。着る服を決める程度の事でも、他に意思決定しなくてはいけないことが多すぎる僕にとって、結構疲れる作業だったんですよね。そこに時間や体力を使うのが、だんだんストレスになってしまって。思い切って手放したらすごく楽になったんです。必ずしも選択肢が多いことが幸せではないんだなと思いました。モノ選びにおいて最も大切にしているのは、10年後もこれを持ち続けられるかどうか。そうすると、選ぶのは自然と上質なモノになります。振り返ってみれば10年未満で手放しているものもありますが、まずは一生使えるかどうかが基準になります」

そう語るローランドさんは、新品が一番かっこいいものよりも、少し時間が経った状態がかっこいいものに惹かれると言います。

「革ジャンなんかそうですが、買ったそのときよりも10年後の方が価値が増すと思うんです。傷やシワができていき、それを見るたびに『これはあのときできた傷だな』と、思い出すことができる。それは自分にしかわからない価値かもしれないけれど、他人にはわからない自分だけのストーリーが刻まれていくなんて、ロマンティックじゃないですか」

暫定一位を常に更新

数々のモノの中から自分が一生愛用できると思えるモノ、つまり暫定一位を選ぶことが、ローランドさんの上質でミニマルなライフスタイルを築く大前提。聞けば、他にもモノに対するこだわりやルールがあるようです。

いちアイテムいちデザインで迷わない

「ブーツやサンダルなど、同じ靴でもジャンルがあると思うのですが、1ジャンルにつきモノはひとつと決めています。そうなると、本当に自分が好きなデザインや機能にこだわりたいし、オーダーメイドのモノも自然と増えてしまいます。プラダの白のサンダルは3つ持っているのですが、これは、外出用、東京の家用、大阪の家用とそれぞれに同じモノを用意しておきたいから。違うデザインのモノがあると、そこでまた迷うのが煩わしいので、できるだけ持つものは統一したいんです。ちなみに、これは人に理解されにくいこだわりなのですが、僕は奇数が好きで、靴下や下着は同じデザインのものを3つ、パジャマも全く同じヘンリーネックの黒のデザインを5着と、必ず奇数でモノを買うようにしています

暫定一位は“柔軟に”更新

「10年、一生と、長く付き合いたいモノを選んでいても、使っているうちによりいいモノに出会ってしまうことはあります。そんなときは迷わず買い替え。一度『一生大事にする』と決めたからといって、過去に捉われたくないんですよね。『ブレてる』というよりかは、『柔軟性』だと思っています。自分の環境も気持ちも日々変化していくものなので、そのタイミングで、世界で一番いいと思うモノを選びたい。だから、暫定一位も常に変化していく可能性がある。タイミングとフィーリングを大切にすることも、僕のスタイルだと思っています。暫定一位が入れ替わると、モノとのお別れもあるわけですが、そこは割と冷静に判断しますね。もちろん捨てずにとっておくというのも一つの愛情のスタイルだと思うけれど、僕は2つを同時に愛するのって、しんどいなと思ってしまうんですよね」

青春と純愛。“自分だけの価値”が詰まった偏愛アイテム

フィーリングやタイミングを大切に、暫定一位を迷いなく更新し続けるローランドさんですが、その順位が揺らぐことのない、絶対的な偏愛アイテムもあると言います。

帝京高校サッカー部のキーホルダー

一つ目は、ローランドさんの母校、帝京高校のサッカー部の卒業生がもらえるというキーホルダー。OBである木梨憲武さんがデザインしたエンブレムが刻まれています。

「僕は、小学生の頃からプロサッカー選手を目指してひたすらサッカーに打ち込んでいたのですが、、高校の部活ではレギュラーになれなかったんです。高校3年間は、楽しい思い出もあるけれど、結構つらい時期でした。同期のメンバーがスタジアムで女子生徒から歓声を浴びているのを、僕はスタンドでかっこ悪く応援するだけ。同じように頑張って同じように練習しているはずなのに…といつも唇を噛み締めていました」

青春時代のすべてを捧げたサッカーが、実を結ばなかった悔しさは相当なものだった、とローランドさん。

「このキーホルダーは、僕にとって反骨心を忘れないためのモノなんです。今、『成功していますね』『素敵な人生ですね』と言われる機会が増えて、良くも悪くも慢心してきてしまうんですよね。現状の幸せをかみしめることも大事だとは思うのですが、こと経営者に関していうと、ハングリーさがなければ、成長していけない。だから、ときどき『宝物ボックス』からこのキーホルダーを取り出しては『今の成功なんかで満足すんなよ』と自分に言い聞かせているんです。プロ選手になれなかったあのときの悔しさとか、ギラギラした気持ちを忘れちゃダメだと。値がつくかわからないようなモノだけど、僕にとっては何にも代え難い価値があるモノです」

映画『タイタニック』」のスクリプトブック

次に紹介してくれたのは、映画『タイタニック』のスクリプトブック。

「『タイタニック』は僕の一番好きな映画で、誕生日に一人で観るのが年に一度の楽しみなんです。本当は毎日観たいくらいなのですが、そうすると次の日も同じ新鮮さで感動することは難しい。そこで、作品のシーンを読んで想像し、映画を観るのとはまた違った楽しみ方ができる、スクリプトブックがあれば感動が薄れることを防止しつつも、いつもそばに『タイタニック』を感じられると思ったんです」

「タイタニックが好きな理由ですか? 単純にこうした純愛に憧れがあるからだと思います。歌舞伎町って、良くも悪くも愛情がギブアンドテイクで成立しているんですよ。誰かに『かわいいね』と言うときは、なにかしら見返りを期待した下心があるわけで、リターンのために愛情を与えるんです。でも、『タイタニック』の主人公ジャックと、ヒロインのローズは違う。例えば、ローズは沈没しかけた船から一度ボートで逃げかけるのですが、ジャックの元へ戻ってくるんです。そこに『戻ったらバーキン買ってくれるかな』とか、『助けたらシャンパン入れてくれるかな』とか、そんな下心ないわけじゃないですか(笑)。純愛と程遠い業界に従事している者としては、非常に心打たれてしまうんです。きっと自分が一生経験できないであろう純愛を、『タイタニック』を観ることで夢物語として味わっているんだと思います」

0か100か、買うなら徹底的に。サッカーユニフォームへの偏愛

ミニマリストでありながらも、最近ついつい買い集めてしまった、というモノがあります。「ドリルトップのサッカーユニフォーム」で、30着以上集めたのだとか。

「コレクションするなら徹底的に全部コンプリートしたいんですよね。0か100か、中途半端が許せない。しかもサッカーのユニフォームって、年代によってデザインが変わるから、欲しいモノを見つけるには中古をしらみつぶしに探すしかない。メルカリでひたすら探して、買い集めました。でも楽しかったのは、最初だけ。『昨日はクリスティアーノ・ロナウド、今日はメッシ、じゃあ明日はエムバペと、ルカ・モドリッチのクロアチアのジャージか…』なんて延々考えていると、どうしてこんなことで悩んでいるんだと、だんだん面倒になってきてしまって。あんなに必死に集めたのに、最終的にみんなにプレゼントしてお別れしました。やっぱりモノを持ちすぎるのは自分に合っていないと再認識した買い物でしたね」
最後に、ローランドさんが今、メルカリで出会いたいものがあるとするならば、それは何か聞いてみました。

「本当に、どうしても欲しいモノがあるんです。『ドルトムントの18/19シーズン公式戦用のユニフォーム』です。ルーズなシルエットのデザインは結構出回っているんですけど、僕が欲しいのは、ストレッチの効いたタイトなタイプ。現行品にはないモノです。実は以前持っていたのですが、誰かにあげてしまったのか無くなってしまって…。すごく気に入っていたので、取り戻したいです」

ローランド
高校卒業後、大学をすぐに中退し18歳で歌舞伎町へ。1年間の下積み時代を経たのち、歌舞伎町の売上記録を更新し続け「現代ホスト界の帝王」と称される。現在はTVや雑誌などメディアでも幅広く活躍する他、実業家として自身がオーナーを務めるホストクラブ「THE CLUB」、脱毛サロン、美容院、アパレルブランド経営など複数の事業を手掛ける。

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メルカリマガジン編集部

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