趣味2023.09.16

「惹かれたら“運命”だと思って引き取る」吉田羊が楽しむアンティーク着物との出会い

友人との食事やお買い物などのシーンで普段から着物を嗜んでいる女優の吉田羊さん。フォトエッセイ集『ヒツジヒツジ』をはじめ、着物にまつわる発信を積極的にされています。「私の毎日を楽しくしてくれた着物文化へ感謝の気持ちも込めて、着物のハードルを下げたい」と話す羊さんは日頃からメルカリを愛用するヘビーユーザーでもあります。着物の買い物術からメルカリの上手な活用方法まで、たっぷりお話しいただきました。
(取材・文/羽佐田 瑶子、撮影/伊藤 圭、編集/メルカリマガジン編集部)

買ってお終いではなく、手を入れて“自分のものにしていく”という楽しみ

─『ヒツジヒツジ』では、すべての着物コーディネートを羊さん自身が手がけられていましたが、本日も羊さんのスタイリングだとうかがいました。どのような合わせ方をされたのでしょうか?

私の場合は、まずその日のコーディネートで何をメインにするのか考えて、そこを基準に合わせる着物や小物、ヘアメイクを考えます。真夏は明るい雰囲気の着物を着ていましたが、夏も終わりに近づき、落ち着いたトーンにしようと。残暑を涼しく過ごすというテーマで、白熊の帯を主役にスタイリングを考えました。存在感のある絵柄なので、着物や半襟、帯揚げ、帯締めなど全体的にモノトーンでまとめています。

帯留めは「下がり藤」で、藤原家に伝わる家紋です。2024年にNHK大河ドラマ『光る君へ』で藤原詮子(ふじわらのせんし)を演じるため、偶然京都のお店で見つけたときは「この子に呼ばれて、ここに来たんだ」と舞い上がりました。
(※取材日は2023年8月下旬)
─着物は「季節」を取り入れるのも楽しみのひとつですが、白熊は涼し気で残暑にぴったりですね。どのように出会われた帯なのでしょうか?

白熊の帯は、一度アンティークショップで出会ったとき「素敵だけれどちょっと強いかな」と思って手に取らなかったんです。後日、着物のイベントに同じお店が出店されていて、またこの帯を見つけてしまって。モノトーンの着物と組み合わせて飾られていたのも素敵で「もしかしてこの子はうちに来る子かしら」と呼ばれている感じがして、自分のもとにお迎えしました。
─「呼ばれる」という感覚で、お買い物をされるんですね。

明確に買いたいものをイメージすることもありますが、どちらかと言えば「モノに呼ばれる」という感覚で買い物をすることが多いです。もう、買わないようにしなきゃといつも、いつも思っているのですが(笑)、アンティークは2つとして同じものがないので、惹きつけられたらそれが“運命”だと思って引き取ることにしています。自分のワードローブに合うかどうかは、あまり気にしないですね。合わないときは、その子に合う着物や小物を探す旅に出ます。
ただ買ってお終いではなく、自分流に手を入れて、より“自分のものにしていく”というのも私の楽しみ方です。白熊の帯は存在感の強さから、もともと男モノの羽織の裏や襦袢を帯に仕立て直したのではないかと、前の持ち主の遊び心に想像が膨らんで、ときめきました。その個性を出したいので、着物を直してくれる悉皆屋(しっかいや)さんに出して、目のところに刺繍を入れてもらおうかと計画中です。
─羊さんが着物を着るようになったのは、20代の頃「友人のライブに浴衣で行こう」と誘われたのがきっかけだったんですよね。

浴衣は持っていても道具がなかったので、着られないと思ったんです。ですが、着物を嗜む友人から「着物はもともと普段着だから、専用の道具がなくても大丈夫。帯枕がないのならトイレットペーパーの芯に紐を通して作ったり、あるもので工夫したりすればいいよ」と言われて、ハードルが下がりました。そこから、着物は自由なものというイメージに代わり、日常的に楽しむようになりました。

─『ヒツジヒツジ』で着物にブーツや普段着の帽子を合わせるなど、遊び心のある自由な着こなしに目を奪われました。

ありがとうございます。着物や小物を集めるのも楽しいのですが、私はコーディネートを考えるのがいちばん好きだと書籍づくりで実感しました。アンティークを組み合わせることが多いので、ピッタリ合う組み合わせを見つけるのは奇跡のような瞬間でもあって、とても楽しかったですね。
─どのような場面で着物を着るのがお好きですか?

以前は、歌舞伎や落語など演者の方が着物を着ている舞台を見に行く時が多かったのですが、いまは普段着のように、家の中でもお出かけでも着ています。食事会に着ていくと、その場の会話が盛り上がるので、コミュニケーションの一環になっています。

買い物をより楽しむには経験を積み重ねて自分の目を養っていくしかない

─羊さんは売る側としても買う側としてもメルカリを愛用しているとうかがったのですが、どのように出会ったのですか?

はじめて利用したのは、廃盤になったボディーローションを探していたときです。友人から「廃盤や限定商品を探すならメルカリがいいよ」と教えてもらい、検索をしたらすぐにアイテムが見つかりました。使用期間が切れているので香りを嗅ぐだけだったのですが、愛用していた当時のことが思い出されて、懐かしい気持ちになりました。書籍づくりでも大活躍で、具体的に欲しいものがあるときはメルカリで探しました。イメージ通りのものがすぐに見つかって、頼もしいと思いましたね。
─メルカリではどんなものを買われることが多いですか?

モノにこだわりがあるタイプなので、売り手の方の思いが込められていると買いたくなります。最近は「無農薬で父が大事に育てた果物ですが、規格外のためもらってほしいです」というメッセージに惹かれてポチッとしてしまいました。個人同士のやり取りなので、信頼度が確かめられるのもいいところですよね。本人確認が済んでいるチェックマークが入っていたり、最近は受け取り評価がすぐ見られる仕様にアップデートされてすごくいいなと思いました。

売るときも、「欲しい」と思ってくださっている方の手に渡るのが嬉しいです。商品の紹介文に「ずっと探していた方にお譲りしたいです」と一言添えると、同じ気持ちの方の手に渡る気がしています。
─着物を購入するのは、通常のお洋服にくらべて難しさもあるかと思います。メルカリをはじめ、上手にお買い物をするコツがあれば教えていただけないでしょうか?

メルカリでもリアルなショッピングでも同じなのですが、欲しいと思う「サイズ」を具体的にイメージすること。着物は調整がしやすいものではありますが、あまりに大きすぎると着付けが難しいので自分の体に合う着物のサイズがわかると失敗も少なくなります。できれば、具体的に参考になる着物が1枚あるといい。それを参考に、サイズを測ってメモしておけば、お買い物しやすいと思います。

あとは、直感を信じることですね。「着ないかもしれない」と迷いがあったり、写真や紹介文から「怪しいな」と感じたりしたら、その直感は大体あっています。私も一度だけ失敗してしまって、メルカリさんの場合は受取り評価をしてから支払いというシステムなので返品できたのですが、自分の直感をもっと信じようと改めて思うできごとでした。あとは、気になることはしつこく質問をしたり、評価を見たり、経験を積み重ねて自分の目を養っていくしかないですね。

─アンティーク着物を購入する際のコツはいかがですか?

アンティーク着物はお店に行くのが一番だと思います。というのも、店主の方々は着物に対する思い入れが非常に強くて、購入してくれる方の顔を見て手渡したいと思っていらっしゃる方がほとんどなので、イチオシの着物はネットになかなか出回らないというのが自論です。見る目を養う意味でも、なるべくお店に足を運んで、着物の背景にある話を店主から聞きながら自分の好みを理解する。それから、メルカリを利用するのがいいと思います。

お店は敷居が高いイメージがありますが、『ヒツジヒツジ』に掲載しているショップリストは初心者の方も行きやすいお店なので、実際に訪ねてもらえたらうれしいです。9/30・10/1に開催予定の着物を楽しむイベント『マトウヒツジ』でも17店舗に出店いただくので、まずはそこでお店の雰囲気を知ってもらうのもいいかもしれません。

─最後に、初めて着物を着る方に向けて、最初の一歩におすすめの着物やアイテムがあれば教えていただけますか?

浴衣ですね。着る手順や必要な小物が少ないので、初めての方もトライしやすいと思います。夏ならば花火大会やお祭りだけでなくてお友だちとのお食事に、他の季節なら家の中で湯上りに着てみるなど着る回数を増やしていくと、身体が着物に馴染んで、「着物を着る身体」になっていきます。そうすると着崩れもしにくくなるのでぜひ浴衣からはじめてみてください!

吉田羊(よしだ・よう)
小劇場を中心に活動後、TV・映画などの映像へと活動の幅を広げる。
2007年『愛の迷宮』で連続ドラマデビュー。
2014年には『HERO』でクールな女性検事を演じ注目を集める。
映画『ビリギャル』では第39回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を、2021年には舞台『ジュリアス・シーザー』で第56回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。
現在は、映画・ドラマ・舞台・CMと幅広く活動。
2022年には俳優デビュー25周年を迎えた。

【マトウヒツジ】オフィシャルグッズをメルカリshopsで販売中(期間限定)

吉田羊さん初の着物イベント『マトウヒツジ』のオフィシャルグッズショップがオープンしました。半襟や靴下、扇子など充実しています!ぜひチェックしてみてください。
↓メルカリshops
【マトウヒツジ】オフィシャルグッズ

イベント開催情報「マトウヒツジ」

ファッションショーあり、トークショーあり、着物や浴衣のマルシェ、そしてお祭り縁日のようなフードありと、着物をたっぷり楽しめるイベントです。
開催期間  
〇2023年9月30日(土)【1部】
・開場:10:45 ~
・開演:11:00 ~ 14:00
〇2023年9月30日(土)【2部】
・開場:14:45 ~
・開演:15:00 ~ 18:00

〇2023年10月1日(日)【1部】
・開場:10:45 ~
・開演:11:00 ~ 14:00
〇2023年10月1日(日)  【2部】
・開場:14:45 ~
・開演:15:00 ~ 18:00

開催場所
CARATO71(東急東横線「代官山」駅 正面口から徒歩 10 分)

チケット
5,500円 ※完売しました
32 件

WRITTEN BY

メルカリマガジン編集部

誰かの「好き」が、ほかの誰かの「好き」を応援するようなメディアになりたいです。

好きなものと生きていく

メルカリマガジンは、「好きなものと生きていく」をテーマにしたライフスタイルマガジンです。いろいろな方の愛用品や好きなものを通して、人生の楽しみ方や生き方の多様性を紹介できればと思います。