ノスタルジー2024.08.21

「気になったらまっしぐら」。漫画もファッションも「好き」を自由に楽しむ内田理央の偏愛遍歴

女優として活躍し、ファッションやメイクなど、まばゆいトレンドの世界を謳歌する一方、漫画やアニメ、サブカルなどをこよなく愛する“オタク”としても知られる内田理央さん。その “偏愛癖”は幼少期から今に至るまで続いているそう。偏愛遍歴を振り返りながら、その原点にはじまり、収集の楽しさや好きなモノを発信する喜び、さらに、現在進行形の偏愛モノまで、純粋に「好き」を追求してきた内田さんの「オタク魂」について伺いました。
(執筆/秦レンナ、撮影/藤原慶、編集/メルカリマガジン編集部)

今ハマっているのは、懐かしいモノとの「偶然の出会い」

心のアンテナが動いた瞬間からとことん「好き!」を追求する「偏愛癖」の持ち主、内田理央さん。最近は、どんなモノが気になっているのでしょうか?

「少し前から、古着や懐かしいおもちゃにハマっているんです。数年前、古着屋さんに行く機会があり、ほぼ初めて古着に触れたのですが、見たこともない素材や柄、昔の海外ブランドなんかを見つけて、興味を持って。新品にはない、偶然の出会いみたいなものに惹かれたのだと思います。一体誰が買うんだろうというようなモノほど、運命を感じてしまうんですよね」

最近見つけてお気に入りだというのが、白地に蛇のグラフィックが描かれたTシャツ。その「奇妙さ」も魅力だと言います。

ほかにも夢中なのは、「平成のおもちゃ」。

「最近手に入れたのは、『おジャ魔女どれみ』のキーホルダー。新品では売っていないモノだったので、出会った時は『わぁ〜!』と興奮してしまいました。子どものころは自分で買うことのできなかった懐かしいおもちゃたちを、今再び思い返しいては、拾い集めているような感覚です。リサイクルショップをめぐることもあれば、メルカリもよくチェックしています。誰かの手元で大切に残されていたモノが、回り回って再会できるのって、素敵ですよね」

これまでに漫画やフィギュア、ぬいぐるみなど収集したものは数知れず。収集したものをお部屋でどのように保管しているのかも、気になるところです。

「もう秩序やばいです(笑)。でも好きなモノに囲まれているのが何より幸せなんですよね。次、引っ越したら、壁一面に棚を作って、集めたものを全部並べたい。自分の家をおしゃれなおもちゃやさんみたいにするのが夢なんです」

偏愛癖のはじまりは1歳から。好きなモノはとことん愛してしまう

内田さんの偏愛癖の始まりは1歳から。ぬいぐるみとの出会いが、自分の中に宿る、“好きなモノはとことん愛してしまう”性質に気づかせてくれそう。

「夏祭りで親に買ってもらったぬいぐるみ『ベルちゃん』は、1歳から今でもずっと一緒。かわいいぬいぐるみはたくさんあるけれど、ベッドで一緒に寝るのは、この子じゃないとダメなんですよね。家族もベルちゃんをぬいぐるみとしてではなく、私の相棒として接しています (笑)。親に聞いたところ、幼稚園生のときから“オタク気質”は垣間見えていたようで、図書館に行くと、子ども向けの絵本よりも人体図鑑や拷問図鑑を借りたがったそうです。たぶんあまり人が触れないものや、隠したいと思うようなモノに興味関心があったのだと思います。とにかく気になったものはなんでも知りたくなってしまう。それが大人になった今も伸び続けているんでしょうね」

漫画「GALS!」に憧れて。おしゃれもオタクカルチャーも追いかけたネラーの学生時代

小学校、中学校時代は、漫画家に憧れていたという内田さん。漫画雑誌を端から端まで読み込み、小さな文字だけの「編集後記」のちょっとしたひと言まで暗記してしまうほどだったとか。

「初めて自分で買った漫画が、藤井みほな先生の『GALS!』でした。渋谷を舞台に、3人のギャルが友情を育み、家庭問題や学校問題を解決していくストーリー。この漫画をきっかけにおしゃれも大好きになりました。小学生ながら厚底とルーズソックスで闊歩していましたよ(笑)」

漫画とファッション。2つの「偏愛」を見つけてからというもの、情報収集に忙しかったという内田さん。

「当時はまだネットがなかったので、情報収集はもっぱら雑誌で。ファッション雑誌も、気に入った1冊を擦り切れるぐらい毎日読み込んでいました。特に好きなモデルさんへの偏愛ぶりはすごくて、ちょっとした一言やスナップは切り抜いて保管していましたし、私物紹介なんかがあると、その一つひとつを全部言えるくらい覚えていました」
当時、学校では、いわゆる「属性」によって仲良しグループがつくられていたため、ファッションが好きなギャルっぽいグループと、漫画やアニメが好きなオタクっぽいグループの間を行き来していたという内田さん。しかし、次第に居心地の悪さを感じるようになってしまったと言います。
 
「今だと、ファッションが好きでオタクで、みたいな子はたくさんいますし、むしろ属性にこだわらず幅広い知識がある人がかっこいいという風潮もあると思います。でも、当時は属性の線引きみたいなものがはっきりしていて、そこを飛び越えるのはタブーというような雰囲気がありました。そんな中で、本当の自分を出すのはなかなか難しいことだったんです」
 
そんな内田さんの孤独感を救ったのが、ネットの世界でした。
 
「10代はずっと『ねらー(※)』でした。趣味が合う人同士の掲示板とか、好きなモノのサークルとかがあって、そこではのびのび話せるし、新しい友達もネットの中ではどんどんできて、すごく楽しかったですね。私にとってはネットの方がリアルだったんです」
 
※インターネット掲示板「2ちゃんねらー」の略称で、インターネット掲示板「2ちゃんねる」(現在の5ちゃんねる)を利用する人のことを指すネットスラング

「オタク卒業宣言」からのキラキラ女子。今やどっちも“私”

現在は自分のオタクぶりを公言している内田さんですが、一時期はそんな自分を変えたいと、「オタク卒業」宣言をしたこともありました。

「雑誌のレギュラーが決まったり、モデルとしてのお仕事が増えたりするなかで、『あの憧れのモデルに自分がなれるだなんて』と、とても嬉しかった一方、“このままじゃダメだ!”と思ったんです。アニメ柄のTシャツを着て、家でネットばっかりやって、適当なご飯を食べている自分は、私の知っているモデル像とあまりにも違いすぎて、恥ずかしくなってしまって」

自分が憧れとするモデル像に近づこうと、まずは形から入ることを考えたという内田さん。

「ファッションを勉強したり、一人で文庫本を持っておしゃれなカフェでサラダを食べたり、カフェでコーヒー飲んでみたり…。憧れのモデルさんならきっと絵になるだろうことをとにかくやってみました。また、雑誌で『私のバッグの中身』を紹介することになったのをきっかけに、アニメ柄のポーチをやめ、ハイブランドの小物を持ってみたりもしました」

そんな日々を続けた結果、今まで “キラキラ”と眩しかったことも、自分なりにモノにできたと感じたそう。今では、自分を取り繕うこともなくなったと言います。

「今は、モデルの自分も、オタクの自分も、どっちも自分なんだと、思えるようになりました。あの頃、私が必死に本来の自分を取り繕っているのを見て、仲のいい編集者さんが、『オタクなのが、理央ちゃんのいいところじゃん!』と言ってくれて。その一言で、本当の自分を恥ずかしがる必要なんてなかったんだと、気づくことができました。

最近はファッション誌で漫画やアニメを特集するなど、オタクカルチャーへの偏見がなくなってきているように感じます。それによって、好きなモノを『好き!』と堂々と言える時代になってきているのは、すごく嬉しいなと感じます」

ジャンルの境界を軽やかに飛び越えて。偏愛の融合から見つけた、新たな喜び

最近では、「偏愛」をテーマにブランドを立ち上げるなど、ますますそのパワーを発揮しています。

「私はアニメや漫画のキャラクターが描かれた、いわゆる『オタクTシャツ』が大好きなのですが、みんな『恥ずかしくて外で着られないでしょ』って言うんですよ。それに、例え好きで買っても、パジャマになってしまうと。でも、それってすごくもったいないことだなと思って。オタクTシャツをおしゃれ側の存在にできたら、これまで興味を持ってなかった人にも、もっとその良さが伝えられるんじゃないかって思って」

そこで始めたのが、Instagramの投稿。
「“#オタtの着こなし”とハッシュタグをつけて、自分なりのオタTコーデをインスタグラムにアップしてみたんです。例えば、オタクTシャツにマルジェラを合わせてみると、とたんにおしゃれに見えるから不思議ですよね」

そうした投稿が反響を呼ぶ、Tシャツブランドを立ち上げるまでになったといいます。

「オタクTシャツとハイブランドをコーディネートするなんて、抵抗のある人もいるかもしれません。でも、私自身は、『こうであるべき』という“枠”みたいなものへの意識があまりないんです。それこそ今では女性に人気のグラビアアイドルもたくさんいますが、15年前は、グラビアといえば男性のもの。だけど私は “おしゃれな女の子が可愛いと思うグラビア”を作りたいと頑張っていました。その頃は普通じゃないと思われただろうけれど、おしゃれとグラビアをつなげられるんじゃないかと希望を持っていたんです。私は、自分の好きなモノと好きなモノを融合させるのが、好きだし、喜びなんだと思います」

人に共感されなくてもいい。自分の中で「好き」を大事に育んで

「漫画やアニメはだいぶ市民権を得てきたように感じますが、まだ『アングラ系』の部分は理解が広がっていないですよね。例えば、私がアンダーグラウンド系の作品中に出てくるセクシャルな描写について語ると、私自身に対して偏見がつく。それって全然違うのになって。そうすると、好きなことやモノについて公言できない人はいるんだろうなという気になります。私は、人に迷惑さえかけなければそれでいいじゃないかと思っています。別に人に言わなくたって、共感なんかしてもらえなくたって、その『好き』という気持ちは自分の心の中に大事に育んでいけば、十分じゃないでしょうか」

そんな内田さんの最近の悩みはというと、「偏愛」が増えすぎていること。

「私、『好き!』に関して、めちゃくちゃストライクゾーンが広いんだと思います。例えば友達が『これいいよ』と何か勧めてくれて、最初は疑いの気持ちでいるのですが、結局めちゃくちゃ好きになってしまう。チョロいんですよ(笑)。でも、そうやって人生の中に、ワクワクできる関心ごとがどんどん増えていくのは、いいことなのかなって思います」

内田理央
女優。1991年9月27日生まれ、東京都出身。 ドラマ『おっさんずラブ』シリーズ(テレビ朝日系)で主人公の幼馴染・ちず役で人気を博し、同作で第22回日刊スポーツ・ドラマグランプリ助演女優賞を受賞。その後、主演作ドラマ『来世ではちゃんとします』シリーズ(テレビ東京系)で話題となる。 2024年は1月期ドラマ『おっさんずラブ-リターンズ-』(テレビ朝日系)にレギュラー出演、4月期ドラマ『ダブルチート 偽りの警官』(テレビ東京×WOWOW共同製作)にヒロイン役でレギュラー出演。7月期ドラマ『嗤う淑女』(東海テレビ・フジテレビ系)に主演。

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メルカリマガジン編集部

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