好きなものと生きていく #29
モーニング娘。6代目リーダーとして、同グループを牽引した高橋愛さん。卒業後は女優・モデルとして活躍し、アパレルブランドとのコラボレーションアイテムをプロデュースするなど、仕事の幅を広げている。
今年で、デビュー20周年目。記念イヤーだけに、多くのイベントが決まっていたが、新型コロナウイルスの影響もあり、仕事はストップ。しかし、いま気持ちは穏やかだという。
メルカリマガジンは「メルカリオンラインフェス」で高橋さんへの公開取材を実施。逆境にめげず、前向きに日々を楽しむ思考について聞いた。(編集/メルカリマガジン編集部、撮影/伊藤圭)
先を悩んで不安になるより、今自分ができることを考える
デビュー以来、毎日仕事に忙しく過ごしてきた高橋さん。ところが、新型コロナウイルスの流行でファッション誌の撮影やイベント関連の仕事はストップ。突然の「強制休業」を余儀なくされてしまった。だが早々に発想の転換をし、日々自宅でゆったりと過ごすことができたという。
「やっぱり、先のことを考えると、怖くなっちゃうじゃないですか。大丈夫かな? これから私、どうなるんだろう? って。もちろん不安もあるんですけど、『だったら今できることを楽しもう』と気持ちを切り替えています」
「悩む時間を早く切り上げられるのが特技」という彼女。もともとの素質でもあるが「やるべきことがありすぎて、そもそも悩む時間がなかった」という、多忙なモーニング娘。時代に身についた考え方の癖もあるという。
今回の自粛期間も、その思考法をいかんなく発揮。もともと、料理があまり得意ではなかった高橋さん。普段のおうちごはんは料理上手なパートナー・あべこうじさんが担当しているというが、ステイホーム中には自炊にもチャレンジ。
「自粛生活中は、当然外食もできず。デリバリーとかもあるんですけれど『せっかくだし、今まで全然してこなかったけど、料理でもやってみる?』って思うようになったんです。とにかく、気分をプラスの方向に持っていければなと」
彼女の料理手順は、実にユニークだ。献立は一切決めずに、先に玉ねぎのみじん切りを始めるのだという。
「『玉ねぎ切ったけど、コレをどうアレンジする?』って、後から考えるんですよ。塩胡椒を振って、鯖缶を入れてアレンジするとか、ちょっとずつ進めていくの。脳みそが鍛えられる感じがします(笑)」
夫婦コミュニケーションの秘訣は、お互いの客観視
2014年に結婚した夫・あべこうじさんとの関係は良好。以前から、InstagramやTikTokでもツーショットを披露しており、仕事で夫婦共演する機会も多い、おしどり夫婦だ。
10代の頃から団体行動で育った高橋さんと、ピン芸人として自分ひとりでネタを組み立ててきたあべさんは、思考も得意・不得意なことも真逆。そんなお互いを思いやる秘訣は、「客観視」だという。
「私はもともと『なんでわかってくれないの!』と、ワーッと言葉にしてしまうタイプ。でも、あべさんはすごく大人なんです。少しづつ気持ちを紐解いてくれるから、私も気持ちの伝え方がうまくなった気がします。成長させてくれたあべさんのことは、とても尊敬しています」
結婚して6年以上が経ったが、喧嘩は数えるくらいしかしたことがないという。高橋さんも、何か相手に意見をするときには、やわらかくして伝えることを意識しているそうだ。
「『私はこうだって言ったじゃん!』と『こうだと思うんだよね』だと、少しニュアンスが変わってきますよね。自分の考えって、相手にはあまり関係のないこと。その前提でコミュニケーションをとっているから、喧嘩にならないのかなぁ? あとは、ちょっとでも何かしてもらったら、欠かさず感謝の言葉を伝えるようにしています」
構えず、素直に周囲を頼るようになってから楽になった
今でこそ、あべさんにも目一杯甘えている高橋さん。だが、昔はなかなか人を頼ることができず、キャパオーバーしてしまうこともあったという。
「モーニング娘。に加入した当時、先輩達とどう会話をしたらいいんだろう? と、コミュニケーションに戸惑うことも多かったんです。ダンスも、全然覚えられなくって。でも、苦手なことはしょうがないんですよ。習得スピードが遅くても、いいんじゃない? って、自分を受け入れることが大切なのかなって。最終的にはなんとかなりますし」
リーダー就任後も、苦手なトークは新垣里沙さんにお願いした。自分が気負って空回りしてしまうより、チームが上手く回ると考えたそうだ。
「5期メンバー(同期は小川麻琴さん、紺野あさ美さん、新垣里沙さん)って、昔からずっと一緒にいて、先輩から『なんでずっと固まっているの? だから個性が出ないんだよ』と言われてしまったこともあるくらい、絆が強いんです。『自分の苦手なことは、得意な人にお願いします』と頼ってもいい」
グループとしては厳しい時期もあったが、ずっと前を向いてパフォーマンスを磨き続けることができたのは、メンバーのおかげだったという。そんな高橋さんは、モーニング娘。’20の現役メンバーを、どんな気持ちで見つめているのだろうか。
「卒業してから、愛が増しましたね。『私、なんていいグループにいたんだろう!』って。今のモーニング娘。が、一番かっこいいと思っています。少しでも立ち位置がズレるとバランスが崩れちゃう、難しいフォーメーションダンスも頑張ってくれているので、OGとしては『本当にありがとう』って感じです」
現役リーダー・譜久村聖さんとは頻繁に連絡を取っているといい、コンサートにもなるべく足を運んで行くつもりだという。
会えないご贔屓への想いは、別ジャンルで発散
モーニング娘。の中でも宝塚好きとして有名な高橋さん。2011年の卒業公演は、大階段のセットのど真ん中で『Mr.Moonlight 〜愛のビッグバンド〜』を男役として披露。
「小さな頃からクラシックバレエをやっていたんですけど、宝塚に憧れてからは声楽も習い始めました。宝塚は、生きる活力。やっぱり、ご贔屓がステージで輝く姿を観ると、自分も頑張ろうと思えるんですよね」
大好きな柚香光(ゆずか れい)さんが花組トップに就任し、4月にはムラ(宝塚ファンによる兵庫県・宝塚大劇場の通称)までお披露目公演に行く予定だったという高橋さん。だが、公演も中止になってしまった。ご贔屓に会えない日々が続くフラストレーションを、どう発散しているのか。
「ショックですけど、実はそこまで落ち込んでないんです。今は、別ジャンルに集中できる時期なんだと考えて、『ファイナルファンタジーシリーズ(以下、FF)』のゲームをやりこんでいます。昨日、X(10)をクリアしたばかり。ああ、終わっちゃった〜! って、ちょっと寂しいくらいです。まだFFをやったことがない人がいたら、X(10)、IX(9)、VI(6)、VII(7)、VIII(8)の順番でやってみてほしいです(笑)」
ファッションは、ときめきを軸に
長く続いている外出自粛生活で、ファッションを楽しむ機会が少なくなってしまう人も多いが、高橋さんは「おうちの中でも、自分のテンションを上げるために好きな服を着るのがいいと思います」と語る。
「出かけなくても、『着たいから着る』っていう、気持ちが大事。私はルームウェアもお気に入りを揃えています。『EMILY WEEK』というブランドのお洋服を、オンラインストアで結構ポチってます。オーガニックコットンを使ったアイテムが多いんですよね。和紙を利用した肌着ブランド『UNDERSON UNDERSON』も好きです」
肌触りや素材にこだわりを持っているそうだ。女優・モデルとして、仕事現場でも日々たくさんの服に触れている高橋さんだが、自分に似合うお気に入りの服は、どうやって見つけているのだろうか。
「『似合う』は、ファッションの第二段階だと思うんです。まずは、ときめくかどうかが大事。ときめかない服って、結局似合わないんですよ。私は、ときめきを大事にしているから、すぐ物があふれちゃうんですけど(笑)。だって、欲しいんだもん! で服を選んでも、いいんじゃないかな」
増えすぎた服は、定期的に棚卸し。どれもときめきを軸に選んだ服だから、捨てることはしない。後輩にバトンを渡しているそうだ。
「後輩が、私のお下がりの服を着ている姿を見てると、うれしいんです。私のクローゼットにずっといるよりは、お洋服も出番が増えるので。『お洋服も、喜んでるよー!』って、言ってます」
メルカリを通した個人間リユースは、地球環境のためになる
高橋さんは、メルカリのヘビーユーザー。ファッションアイテムは、ブランド名や品番をピンポイントで検索。これまでに、スニーカーやコスメなど、たくさんの買い物をしてきたという。
「メルカリって、ユーザーさんのアカウントが、それぞれショップみたいですよね。今、地球上にはコロナだけでなく、温暖化の問題もあります。リサイクルやリユースって、すごく素敵なことだと思います。自分が使わなくなったものも、メルカリを通して、必要な人にバトンを回せる。地球のためでもあり、自分のためでもあり。みんながハッピーなことにつながると思うんです」
地球環境への配慮が伺える。楽屋入りの際にもマイボトルを持参していた、高橋さんらしい考えだ。
「今はみんな大変な状況だけど、気持ち次第でプラスに変わることもあるはず。ポジティブな空気感がまわりに伝わって、どんどん良くなって行くと思うんです。まずは、それぞれが自分を大切にして、生きていきましょう!」
高橋愛(たかはし・あい)
モーニング娘、第5期メンバーとして10年間在籍し、6代目リーダー及びハロープロジェクトのリーダーとして活躍した。2011年より地元・福井の『ふくいブランド大使』に就任。
卒業後は、女優として、ミュージカルや舞台・ドラマで活躍しながら、現在は幼少期から大好きなファッション誌にモデルとしても多数出演中。最近では、自身のこだわりを活かした各ファッションブランドとのコラボアイテムも展開中。ファッションコーディネートアプリ『WEAR』ではなんとフォロワー数250万人を突破。