毎日、自分らしく、丁寧に。そんなライフスタイルを実践しているモデルの高山都さん。彼女のような生活がしたいと憧れる人も多いだろう。日々の生活を投稿しているInstagramのフォロワーは13.8万人を超え、自身の生活模様をまとめたフォトエッセイ集を出版。彼女がプロデュースした展示会は常に好評で、ものが飛ぶように売れていく。
そんな高山さんが愛を注いでいるのが「器」だ。5年かけて、コツコツと集めてきた器のコレクション。それらを「うちの子たち」と愛情たっぷりに呼ぶ。高山さんが器を集め始めたきっかけや、おすすめの器の選び方を教えてもらった。(編集/メルカリマガジン編集部、撮影/川原﨑宣喜)
2人暮らしから1人暮らしになっても「器」を集めた
5年ほど前、高山さんは彼と一緒に、都内の築50年のアパートに住んでいた。リノベーションされた物件で気に入っていたが、風呂はついていなかった。
「今だから言えるけれど、彼も私もそんなにお金がなくて。遊びに来た友達も『え、ここ?』みたいな反応でしたね(笑)。でもその築50年のアパートで暮らし始めてから、外に向いていた意識を内側に向けるようになったんです。どうやったらこの古い家で楽しく暮らせるか、とか、どうやったら自分らしさを見つけられるか、とか、いろいろ考えるようになって」
その頃、最初に自分で買った器を今でも大切に使っている。中目黒の「SML」というセレクトショップで開かれていたイベントで出会ったものだ。もともと高山さんが持っていた器は、白い“フツーの”食器ばかり。いわゆる作家の作品は持っていなかったのだが、そのイベントで吸い寄せられるように手に取った器が、島根県の森山窯でつくられた平皿だった。濃い青に魅せられたのだ。
「いつもと変わらない朝食のトーストが、そのお皿に乗っているだけで、全然違って見えたんです。決して手の込んだ料理でなくても、ちゃんと器に盛ったり、器の配色を考えたりするだけで、いただきますという気持ちが生まれるんですよね。作ったぞ、食べるぞという気持ちになるんです。忙しい毎日のわずかな時間ですが、幸せな気持ちになりました」
そこから少しずつ器を買いそろえ始めた。毎日がちょっとずつ楽しくなっていった。外食よりもお家ごはんの方が好きになった。
そして、今から2年半ほど前のこと。高山さんは、彼と別れた。
「相当落ち込みました。でも、仕事をしなくてはいけないし、いつまでも引きずっているわけにもいかない。結婚資金として貯めていたお金を使って、引っ越しをしました」
広い窓から光と風が入る家だった。築36年で、自分と同い年の建物。何か縁があると思い、住むことに決めた。
「自分の城にしようと思って。第二の人生、ここで頑張るしかないんだという感覚でした」。
ライフスタイルを仕事にしようと思っていたし、自分の生活を発信することが自分の表現方法の一つだった。好きなものをもっともっと大事にしようと、集めた器を見せる収納にした。コレクションも増やし続けた。今はもう100以上はあるだろうか。1つ1つの器が自分の子どものように愛おしい。海外へ旅行や出張で行くときは、器を棚から全て下ろして、ダンボールに梱包してから出かけるほどだという。
「だって、器は私の財産ですから」
ずっと使ってあげられる子を選びたい
高山さんが器を買う時には自分なりのルールがいくつかある、という。自分の部屋に似合わないものは買わないようにして、“質感”で選ぶこと。買うからにはこだわって選んで、ずっと使ってあげること。
「実際に手に取って、この子(器)にはどんな料理が似合うかなと想像するんです。洋服と同じで、なるべく着回しができる子を選ぶようにしています」
彼女の「好き」は一貫しているし、彼女自身も自分の「好き」をわかっている。それは器に限った話ではなさそうだが、こだわって選んだ「好き」に囲まれた生活を送っている。
「作った料理に何を合わせようかなと考えている時も、自分の『好き』を再確認しているような気がします。…きっと5年後も好きなものは変わっていないと思う。集め始めた頃に買った器もいまだに、たくさん使っています。飽きがこないんです」
そう語る高山さん。好きな器だからこそ、食べ終わった後の器もかわいいと感じるし、洗い物の時間さえも楽しいという。
「ビンテージものも好き。ちょっとくたびれた感じだから、愛着がわくんですよね。焼き物も手で作っているから、歪だし、ムラがある。そういうところに惹かれるんです。完璧なものより、ちょっと何か足りなかったり、欠けている部分に愛おしさを感じて」
ちなみに、これまで集めてきた素敵な器たちとはどうやって出会ってきたのか。仕事柄、撮影を通じて出会うこともあるが、多くはインスタグラムを活用しているという。高山さんは料理が素敵だと思う人をフォローしていて、「この器、素敵!」と思ったら、ハッシュタグをたどって情報を得る。そして、器を扱っている店や窯元に出向いて、実物を見せてもらうという。
器あつめ初心者に伝えたいアドバイス
最後に、器あつめの初心者は何から買えばいいのか、高山さんにアドバイスをもらった。
1枚大皿があるといい
「大皿は難しいと思われがちですが、一人でも使えます。ご飯とカレーでもいい。サラダとパンでもいい。少し盛り付けを工夫すれば、ワンプレートでも十分完成します。1枚だと洗い物も楽なので、自分の家のテーブルにあった、程よい大きさの大皿があるといいと思います」
ワンセットで買おうとしなくていい
「全部種類をそろえなくてはと意気込む方もいらっしゃいますが、一気買いをしなくていいと思います。器を複数買うとしても、例えば同じ作家さんの色違いのものを購入してみてはどうでしょう? 色違いの器というのは程よいペア感も出るし、組み合わせの幅が広がります。ポイントは全体の質感をそろえること。チグハグした感じにならないように気をつければ、自然と心地よい統一感が生まれると思います」
青い食器はドラマチック
「きっと多くの人が持っている白い食器。レストランでシェフたちが腕を振るうならともかく、なかなか普通の食事で白い器に盛り付けるだけだと、華やかさや温かみが出にくいんですね。なので1枚買うとしたら、青がおすすめです。青は食材にない色なので、すごく奥行きが出て、ドラマチックになります」
取材中、ひとつひとつの器を大切そうに眺めながら、高山さんが言った。
「ちょっとずつ大切に集めたうちの子(器)たち、なかなか手放せないんですよね。でも収納には限界があるので、大切に使ってくれそうな友人に“里子”に出そうかな、なんて思っています。自分が大切にしていたものを、自分ではない人が受け継いでくれることはすごく素敵なことだと思うんです。ただ要らないから捨てるのではなくて、循環させていきたいですね」
高山都(たかやま・みやこ)
1982年生まれ。大阪府出身。モデル、ドラマや舞台の出演、ラジオ番組のパーソナリティなど幅広く活動。趣味はランニングと料理。著書に『高山都の美食姿「したたかに」「自分らしく」過ごすコツ。』、『高山都の美食姿2「日々のコツコツ」続いてます。』(ともに双葉社)。webマガジン「&w」にて、器についての連載 『高山都の、日々うつわ。』 もスタート。