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予約のとれない餃子レストラン苑主の思い出餃子──メルカリ食堂 パラダイス山元

心に残る料理やレシピ、キッチンアイテムを紹介いただく企画「メルカリ食堂」。
第3回はパラダイス山元さんに「思い出の餃子」について語っていただきます。

マンボミュージシャン、マン盆栽家元、グリーンランド国際サンタクロース協会公認サンタクロース。多彩な顔をもつパラダイス山元さんが半世紀にわたって情熱を傾けてきたのが〝餃子〟です。
会員制餃子レストラン「荻窪餃子 蔓餃苑(まんぎょえん)」苑主として腕を振るうだけでなく、これまで400軒以上の飲食店で餃子を食べ歩き、餃子に関する著書や雑誌連載も多数。そんな餃子人生の中でも忘れられない餃子とは?
(構成/宗像幸彦、編集/メルカリマガジン編集部)

イクラ、タラバガニより餃子がごちそうだった

私は北海道で生まれ育ちました。海産物が豊富な環境だったせいか、札幌市内の実家では、日常的にタラバガニ、毛ガニ、イクラ、ホタテがあたり前のように食卓にのぼっていました。いま思えば相当贅沢な環境でしたが、当時の自分にとっていちばんのごちそうといえば、母が包んで焼いてくれた餃子でした。

母親がつくる餃子にはどんこ(干ししいたけ)が入っているんです。学校から帰った時に、水をはったボウルの中にどんこが戻してあったら「やった! 今日の晩ご飯は餃子だ」と思って嬉しかったですね。

母親の焼く餃子はすごくきれいな形をしているんです。詳細なレシピや写真こそ手元には残っていませんが、見かけや味はいつまで経っても舌と脳裏に焼き付いています。餡の味付けから包み方、焼き方まで、自分にとっての完璧なお手本でした。

母が包んだ餃子は、ひとつひとつしっかりと丁寧に包まれたものでした。あの餃子に少しでも近づきたいなと思っています

今までいろんな餃子を食べてきましたが、母親の作った餃子を超えるものには、いまだに出会えていないなぁ。きっと、あの味は自分の〝餃子人生〟のベースになっているんだと思います。実家のいちばん楽しかった思い出が、トムとジェリーを観ながら、母と一緒に餃子を包んだことかもしれません。他に楽しかったことって、思い浮かびません……。

石膏デッサンよりも餃子を包む方がはるかに上手い浪人生

そんなわけで「餃子こそ一番のごちそう」と信じて疑わなかったんですが、高校卒業後、東京芸大を目指し18歳で上京して浪人生活に入ったとき、衝撃を受けました。だって、当時は餃子といえば、ほとんどのお店でラーメンやチャーハンと一緒に頼むサイドメニューみたいな扱いでしょ。ひとくち食べてみても、母親の作った餃子とは見た目も味もまるで違う。極端に言うと、餃子という名のついた別の食べものというか。

母の餃子の味で育ったせいか、いまだに「餃子はごちそうじゃないといけない」と信じているところがあって、自分が美味しいと思う餃子、自分が納得できる餃子しか作りたくないし、中途半端なものは他人にも食べさせたくないんです。

浪人時代、八百屋さんから大量に大葉をもらったことをきっかけに、餃子の皮と餡の間に大葉を入れて包んだ餃子をつくるようになりました。刻んで餡の中に入れるよりも、こちらの方がダイレクトに大葉を感じることができるんです。大葉の先っぽがアクセントで飛び出させているのは〝デザイン性〟に他なりません

料理自体は、浪人生時代から凝り始めていました。豊島区の椎名町に下宿していた頃、八百屋のオヤジさんと仲良くなって。閉店間際に行くと大量の野菜を激安で箱に詰めて売ってくれるわけですよ。台所も冷蔵庫も共用でしたから、入りきらないのです。それを腐らせるわけにもいかないから、じゃあ全部餃子にするしかないなと。

そうすると隣の部屋の住人が「今日もいいにおいしてるね〜」って言いながら寄ってきてね。そういうのがまた楽しかったんですよ。東京芸大を目指していたのに、石膏デッサンより餃子の包み方の方がはるかに上手になっていましたね。受験科目に「餃子」って科目があったら、絶対にトップ合格していたはずです。

クルマや音楽とは別の感動が餃子にはある

東京パノラママンボボーイズでデビューした後、音楽の仕事が安定してくると、次にまたなにか新しいことを始めたくなりました。ちょうど契約更新で、原宿の個人事務所を自宅近くの荻窪界わいに移そうと思っていた頃です。

事務所兼スタジオをつくるようなミュージシャンはあたりまえすぎるので、だったら事務所兼厨房、事務所兼ダイニングをつくったら面白そうだなと思っていたんです。それに、打ち合わせの時に餃子を出せば、いいアイデアも浮かびそうだし、都心から離れた場所でも餃子目当てで誘き寄せられるかな? とも考えていました。

あと、一般のファン向けにメルマガを配信して「パラダイス山元の餃子を食べたい人が1,000人集まったら餃子レストランを開店します」とmixiで募集をかけてみたんです。そうしたら、食べたい人の申し込みが相次いでしまって。ちょうどいいタイミングで東京オリンピックの年に建った元新聞販売店の物件を見つけて契約。手仕事で改装して、東京ディズニーシーグランドオープンの1ヵ月前の2001年8月5日に、「会員制高級紳士餃子レストラン 荻窪餃子 蔓餃苑(以下、蔓餃苑)」をオープンしました。

お店をオープンして以来20年間、本当に数多くの餃子ラバーズにお越しいただいています

思い出を挙げればキリがないんですが、印象深かったのは『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系列)の収録でタモリさんがいらした時かなぁ。自分がつくった餃子を「美味いね」って褒めてもらえるだけでも震えるほど嬉しかったんですが、気分が乗ってきたのか「俺も餃子つくりたくなってきた」って言い出して。

本番中にもかかわらずマネージャーさんに「白菜と味王(調味料)、買ってきてくれ」って頼んで、もう台本には全然ない展開になってしまって(笑)。タモリさんがつくってくださったのは、ご本人曰く「満洲餃子」という白菜を使った非常にシンプルなレシピで、文句なしに美味しかった。母親の餃子と共に忘れられない味のひとつになりました。

蔓餃苑を続けていて気づいたのは、カーデザイナーだったサラリーマン時代(※)や、ミュージシャンとしてステージに立つときとはまた違った快感とか喜びがあるってことでしょうか。

自分がデザインに携わったクルマが公道を走るのを見るのが夢で自動車メーカーに就職したんですが、新車発売後10年経てばほとんどのクルマは路上で見かけなくなるし、せっかくデビューして出せたCDアルバムだって、いつかはみんな聴かなくなっちゃうわけじゃないですか(笑)。

(※)ミュージシャンになる前は富士重工業(スバル)のカーデザイナーだった山元さん。初代レガシィ ツーリングワゴン、2ドアスポーツクーペアルシオーネSVXなどの名車を手がけている

前菜からメイン、デザートに至るまで、すべてが餃子という餃子フルコースが、荻窪餃子 蔓餃苑の自慢です

蔓餃苑の場合は、自分がつくった餃子を目の前で食べてもらって、ダイレクトに感情を共有できて、その人の栄養、生きる糧になり、血肉になるわけで、これって尊いことだなぁって。餃子会員の中には、世界的にご活躍されているアスリートも何人かいらして、自分の餃子がその方たちのパワーの一部になってくれて、その後に行われた試合で好成績を納めたりすると、それはそれですごいことやってるなぁ、と感動してしまいます。

インパクト満点! 赤海老の直立餃子

というわけで、蔓餃苑の数あるメニューの中でも、お客様から絶大な人気を誇るリピートメニューといえばこれ。ビジュアル的にもインパクトがあって、テーブルに出すだけで抜群にウケる「赤海老の直立餃子」のレシピを紹介しましょう。

使うのは、最近スーパーでもよく見かけるようになったアルゼンチン産の赤海老。お刺身で頂いても美味しいのですが、餃子にするともっと美味しくなりますよ。赤海老の本来の美味しさを引き出すために、あえてお肉を使わないのがポイントです。
材料(2人前)
  • モッツァレラチーズ 100g 
  • しめじ茸 30g
  • セロリ (葉っぱと茎の両方) 50g
  • アボカド 1/2個
  • 餃子の皮 20枚
  • 赤海老は背開きにして、ワタを取り除きます。
    しめじ茸、セロリ、アボカドを粗めにみじん切りして、餃子の餡にします。モッツァレラチーズは、手でほぐして餡に馴染ませます。
    餃子の皮の上に赤海老を開いた状態で置き、上に餡をのせて包みます。
    中火で熱したフライパンにオリーブオイルをひいて、直立するように並べていきます。
    並べ終えたら、上からさらにオリーブオイルをかけます。底面に焦げ目がつき始めたところで熱湯70ccを注いで蓋を閉め、水分が完全に飛ぶまで蒸し焼きしたら完成。
    メルカリで入手した超お気に入り、デンマーク王室御用達、ロイヤルコペンハーゲンの傑作〝蟹皿〟に盛りつけてみました。
    なかなかインパクトあるでしょ。みなさん観光地に来たような感覚で写真を撮っていらっしゃいますよ。
    餃子はそのまま召し上がってももちろん美味しいですし、あるいは蔓餃苑特製の〝蔓餃塩〟をひと振りすると、いっそう旨みが引き立ちます。ちなみに荻窪餃子 蔓餃苑のロゴが入っている小皿は、佐賀県の有田焼の特注品。現在、東京無線 レクサスタクシーで生餃子のデリバリーをやっているのですが、その際は蔓餃塩と有田焼の小皿、どちらもおつけしております。

    お気に入りの北欧ヴィンテージ食器は欠かさず検索条件に

    私は日本代表サンタクロースとしてほぼ毎年、デンマークで行われる世界サンタクロース会議に出席していて、会議が終わったらいつも1週間ほど放浪したあと帰国するんです。

    毎年真夏にデンマークの首都、コペンハーゲンで開催される「世界サンタクロース会議」。世界中から公認サンタクロースが120名以上集まります

    目的は、ロッペマーケットという蚤の市めぐり。そこで北欧の70、80年代のお皿をよく買って帰るんですが、お皿ってどうしても割れたり欠けたりしちゃうじゃないですか。蔓餃苑で使おうにもやはりスペアが必要だし。だから、常にメルカリの検索条件に保存しておいて、該当するものが出品されたら、問答無用で購入しちゃいますね。

    餃子にまつわるグッズにも目がありません。漫画『ドロヘドロ』((C)2020林田球 小学館)に登場するギョーザ男のプライズ限定フィギュアはお気に入り

    蔓餃苑特製の蔓餃塩をメルカリで購入したロイヤルコペンハーゲンの現行品の小皿に入れてみました。岩塩に、ナツメグ、シナモン、トウガラシ、フライドガーリック、ケシの実などをブレンドしています。蔓餃苑では、あえて醤油を置いておりません。餃子には醤油、ラー油、お酢以外での食べ方にも可能性がありますし、それをもっと普及させたいと思っているんです。

    パラダイス山元

    マンボミュージシャン、マン盆栽家元、グリーンランド国際サンタクロース協会公認サンタクロース。会員制高級餃子レストラン「蔓餃苑」苑主・餃子研究家。近著『読む餃子』(新潮社)、『餃子の創り方』(光文社)、『うまい餃子』(宝島社)。

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    メルカリマガジン編集部

    誰かの「好き」が、ほかの誰かの「好き」を応援するようなメディアになりたいです。

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