趣味2019.12.09

「女性にもいろんな例外があっていい」千秋の強さをつくった80年代の少女漫画

好きなものと生きていく#16

タレントとして様々なバラエティ番組で活躍すると同時に、ハンドメイド集団「ハローサーカス」の活動を行ったりと、常にそのときに気になる出来事を発信してきた千秋さん。「カワイイ」という言葉がポピュラーになる前から、絶えず自分なりの感性を余すことなく表現してきた千秋さんの家には、少女漫画雑誌「なかよし」や「りぼん」の80年から90年代の付録がたくさんあるという。

なぜ千秋さんは今あえて、少女漫画誌の昔の付録を集めているのか。数々の付録たちはこれまでの芸能活動にも活きている大切な思い出たちだった。(執筆/西森路代、編集/メルカリマガジン編集部、撮影/伊藤圭)

ポケビの衣装も漫画の付録から生まれた

千秋さんと言えば、1990年代にはウッチャンナンチャンの内村光良さん、キャイ~ンのウド鈴木さんとともにポケットビスケッツ(通称・ポケビ)として、シングルを大ヒットさせ、紅白歌合戦にも出場した。その頃から千秋さんの表現の裏には、少女漫画の付録から得たインスピレーションがあったという。

「ポケビのときは、自分で衣装をプロデュースしてたんですが、マリンルックをベースにした衣装をピンクをテーマカラーに表現したり、戦争と平和をテーマにしたり、貴婦人パンクをやってみたり。いろいろなカワイイのエッセンスを盛り込むことができたのも付録のおかげ」

千秋さんの原点となっているのは1980年代以降の少女漫画だ。「りぼん」や「なかよし」を愛読し、本田恵子さんやいがらしゆみこさんの世界観にのめり込んだ。中でも季節ごとにテーマが変わる付録は千秋さんのクリエイティビティの源になっている。

「当時はなんでも『カワイイ』っていってると、バカのひとつ覚えみたいに思われてたのかもしれないですね(笑)。当たり前だけど『カワイイ』って一種類じゃなくて、いろんなジャンルがあるから、そういうイメージのない偉いオジサンたちにも、明確に伝えるのに少女漫画はうってつけだったんです」

今でこそ世間で当たり前のように認知されている「カワイイ」という言葉だが、90年代当初は今ほど浸透していなかった。自分のイメージを伝えるために「カワイイ」を連呼していたところ、“オジサンたち”には奇異の目で見られることもあった。

「自分の中の“カワイイ”を伝えるのに役立ったのが幼少期の漫画や付録でした。例えば夏の付録は『マリン』がテーマになっていて。そういう付録を眺めていると、マリンって赤と青と白で配色してるんだなとか、モップを持ってるのは、船に乗ってて掃除してるからなんだなとか、そういう世界観が子供ながらにイメージできるようになるんです」

『ドラえもん』以外の漫画禁止だった幼少期

足掛け40年弱かけて付録を収集してきた千秋さん。だが、幼少期は『ドラえもん』以外の漫画は禁止という環境で育っていた。

「ある日、友達から『なかよし』や『りぼん』を借りて読んでいたら、借りた漫画を自分が買ってきたものと勘違いされて親に捨てられて、弁償して返したこともあったりしました。でも、小学6年生のときに『自分のお金で買うならいい』と解禁になったんです」

少女漫画の出会いは、幼い千秋さんの生活までも変えた。きっかけは『キャンディ・キャンディ』を執筆したいがらしゆみこさんの『ころんでポックル』(なかよし)だ。同作は、北海道を舞台に両親を亡くしたアイヌの三姉妹の夢と恋を描いたヒューマンドラマだ。たくましく生きる少女の姿や淡い恋愛模様が描かれた作品を貪るように読むうちに「耳年増」になり、クラスメイトの恋愛相談に乗るようになったのだ。

「ヒロインのオンコちゃんって、三姉妹だけになった一家を支えるために、友達の相談に100円でのってるんですね。自分は恋愛をしたことがないのに、耳年増で。私もぜんぜん恋愛経験とかなかったけど、そんなオンコちゃんのことがいいなと思って真似してました。もちろん、お金は取ってないんだけど(笑)」

当時の話になると千秋さんの目が途端に輝きだし、次々と懐かしい作品名が飛び出す。王道ラブストーリーに出会ったのは、りぼんの『月の夜、星の朝』が最初だ。4歳で出会った幼馴染のふたりが、中学で再会したことから始まる同作は千秋さんの乙女心を刺激した。

「当時のクラスの友達もみんな読んでいて。ヒロイン・りおと、遼太郎のカップルに相当な思い入れがあったので、坂上忍さんが主演で映画化されると知ったときは、ちょっとショックだったくらい(笑)。でも、それくらいみんな、りおと遼のことを特別な理想のカップルとして見てたんです。初めてちゃんと読んだラブストーリーでしたね」

自分で買うようになった付録も大切な宝物だ。付録の収集はメルカリを利用することもあれば、高円寺に通うことも。また、ヘアメイクの友人が、実家にあった付録をくれることもあるという。

「興味のない人からすると、なんでゴミみたいなのを集めてるの?って感じかもしれない。でも、使いかけのシールとか、一枚だけになったメモ帳、友達と交換したのかなって思う感じのレターセットには誰かの思い出がそのまま詰まってるみたい。それにこういう付録って今から20年とか30年前のものだし、買わないと無くなってしまう。今だったらまだ残ってるし、ちゃんと保存してあげないと。私にとっては付録は骨董品みたいなものなんですよ」

今では集めた付録は無印良品の大型ボックス8箱にものぼる。普段は丁寧に収納されたボックスから付録を出して、手で触れると、当時の思い出や空気がふと蘇る。それが再び千秋さんのクリエイティビティを刺激する。

以前手掛けていた子供服のデザインでは少女漫画がモチーフになることもあった。現在は、カワイイにこだわったハンドメイド作品を扱う、店舗を持たない期間限定のコンセプトショップ「ハローサーカス」というプロジェクトを主催している。同年代のお母さんたちが、仕事をしようにもできない現状などを見て、この企画を思いついたのだという。

「『ころんでポックル』を読んで相談を受けてたときと同じように、今もたくさんママ友の相談を受けてるんです。そしたら、40代になって復職したくても条件でふるい落とされて、面接もできないことがあると知って。でも、みんなそれぞれ才能もあるのになんでだろうって。そうやって考えるうちに、お母さんたちが作ったものを売って収入になればいいのにって思い立って」

これまで、友人たちや家族との暮らしの中で疑問に思ったことは発言し、積極的にトライしてきた千秋さん。これからは、どんなことに挑戦していきたいのだろうか。

「なにかを形にするというよりは、世の中の女の人がもっとラクちんになればいいのにって思ってます。今の女の人って、子育てもしてて、家のこともやって、しかも外でも働かないといけないようになっている気がして。でも、家事をしっかりやってる人も偉いし、シングルマザーでも、再婚しても、いろんなパターンがあってもいいと思うし、そこからはみでたら苦しいということにならないでいいのかなって」

千秋さんは、離婚も経験しているが、そのことも、離婚をしたいけれど思いとどまっていたママ友たちから、「こんなスタイルの離婚があると知って決意できた」と、感謝の気持ちを伝えられたこともあったという。

「私みたいに、離婚しても前の旦那さんとは連絡をとりあう夫婦もいる。こんなパターンもあるんだよ、例外のパターンもあるんだよってことを、言えるところは言っていきたいです。とにかく女の人がずっと悩んで一生が終わるのは嫌だって思うので」

そう語りながらテーブルの前に積み重なった付録を愛おしそうに眺める。

「付録を集めるのは忘れてた記憶をかき集めてる感じ。私の人生の基礎を作ったものだし、もっと言うと私の人生の一部なんですよ」

千秋さんは人生の一部を集める旅路はまだ続く。

千秋さんがコレクションした「りぼん」や「なかよし」の付録たちはこちら

千秋(ちあき)
タレント・歌手。10月26日生まれ、千葉県出身。O型。1991年、フジテレビオーディション番組『ゴールドラッシュ』で初代チャンピオンに選ばれ、芸能界デビュー。96年、音楽ユニット・ポケットビスケッツのボーカルとして歌手デビューを果たす。自身のブランド『チロル社』や『Ribbon Casket』のデザイナーとしても活躍。2013年からは、可愛いにこだわったハンドメイド作品を扱う、店舗を持たない期間限定のコンセプトショップ『ハローサーカス』の活動も行う。

衣装協力:クロネコマリン、grog grog

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メルカリマガジン編集部

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