舞台2020.10.15

小沢あや

「ファンの方に苦労している姿は見せたくない」宝塚オタクのアンジュルム伊勢鈴蘭、目指す“スター“の風格

好きなものと生きていく #32

小学校の頃から、熱狂的な宝塚ファンだったという、アンジュルムの伊勢鈴蘭さん。元花組トップスター・明日海りおさんに憧れ、小学生の頃から地元・北海道で宝塚音楽学校の受験準備をしていたそうです。

家族がオーディションに応募したことで、予想外にハロー!プロジェクトからアイドルデビューした伊勢さんですが、宝塚を通して学んだことを、パフォーマンスに活かしているそう。彼女の人生を支える宝塚愛や、ハロプロとの共通項を伺いました。(編集/メルカリマガジン編集部、撮影/いわなびとん)

画面越しでも圧倒された、宝塚のステージ

――伊勢さん、11歳の頃から大の宝塚ファンなのだそうですね。最初に観たプログラムは?

初めて宝塚の世界に触れたのは、いとこに連れて行ってもらった「宝塚歌劇100周年フィナーレイベント『タカラヅカスペシャル2014 –Thank you for 100 years-』」のライブビューイング。今までまったく知らない世界だったので、圧倒されましたね。すべての組の方が出演されるプログラムで、一気にハマっちゃって。それまでは、クラシックバレエが一番好きだったんですけど、宝塚が超えてきちゃったんです。

――強い衝撃を受けたポイントはどこでしたか?

最初は「ヅカメイクって凄いな」という印象だったんですが、遠くから見てもくっきりしていて華やかで、自分と同じ人間だとは思えなくて。公演のラストにはフィナーレ(宝塚用語。全出演者が大階段を降りながら、主題歌を歌う)があるんですけど、みなさんが音にきちんとノッているんです。それまで、自分は「歌は歌うもの」くらいの認識だったんですが、オーケストラの方々と繋がっているように見えて……。
――華やかさに衝撃を受けますよね。それにしても、北海道で暮らしながらのオタ活は、大変だったのでは?

やっぱり、なかなか劇場に行けないので、宝塚の公演を直接見る機会は貴重でしたね。基本的にはDVDを眺めて過ごしていました。会(ファンクラブ)に入って、年に1回くらいのペースで開催される、全国ツアー 北海道公演に毎回足を運んで。宝塚大劇場にも、1度だけ家族に連れて行ってもらいましたね。

――ファンとしてではなく、「宝塚に入りたい!」という気持ちも芽生えたんですよね。

クラシックバレエは小学校4年から習っていたんですが、宝塚を知った小学5年生の頃に宝塚音楽学校の受験を決めて、声楽も習いました。レッスンがない日は、学校が終わったら即帰宅。『エリザベート -愛と死の輪舞-』のDVDを流して、ひとりでずっと真似していました。娘役として、明日海りおさんの隣で踊る自分をイメージして。
――ご贔屓の存在が毎日の支えになっていたんですね。地方で宝塚音楽学校の受験に備えるのは、大変だったのでは。

北海道は、宝塚音楽学校の受験対策ができるレッスンスタジオは多くないんです。私の通える範囲にはなかったので、声楽やバレエなどの欠かせない受験科目は、それぞれ別の教室に行っていました。声楽は、合格生を輩出したことがあるスクールの先生に教わっていたんですが、とくに厳しかったです。

――毎年、朝の情報番組などで宝塚音楽学校お受験特集が流れますが、受験対策塾のレッスンもかなり凄いですよね。

私も、精神的にかなり鍛えられました。諦めそうになっても、「負けずに頑張ろう!」と立て直せる気持ちが身につきましたね。

ハロプロに入ってから真のヅカヲタに覚醒

――いざ宝塚受験! と思いきや、ハロプロファンのお姉さんがこっそりオーディションに応募……そこから予想外のハロプロ入りとなったわけですが、戸惑いはありませんでしたか?

そうなんです。何もわからないまま姉に写真を撮られて、いつのまにかオーディションに進んでいました。正直、最初はアイドルにあまり興味がなくて、ハロプロのことも詳しく知らなかったんです。でも、ライブの映像を観てみると、ハロプロは私が抱いていたアイドル像とまったく違って。

――どんな部分が違ったんでしょうか?

「アイドル=キラキラして可愛い」っていう、漠然としたイメージしか持っていなかったんです。ハロプロは、パフォーマンスを通して、ひとりひとりの個性が堂々と輝いていたので、魅力的でした。宝塚と通じる部分もありましたし、「この中に入れるなら、精一杯やってみよう!」と。
――ずっと宝塚を目指していた中で、気持ちの切り替えはすぐにできましたか?

できました。最終決断するまでは、半ば勢いで「えいっ!」って行っちゃった部分もあるし、「私、宝塚に入りたかったんじゃないの?」って、心残りもあって。でも、ハロプロに入ってから気が付いたんです。「私は宝塚に入りたいというより、ヅカを観ていたい、応援していたい人間だったんだ!」って。

――ハロプロに合格したことで、真のヅカヲタにアップデートしたんですね。タカラジェンヌも「未来の先輩」ではなく「ご贔屓」に。

そうなんです(笑)。アンジュルムへの加入後は東京での生活になったから、東京宝塚劇場にも行きやすくなって、観劇回数も増えました。急なオフの日は、まず公演情報をチェック。朝から並んで当日券を買って観劇します。
――アイドルになってから忙しいと思いきや、むしろヒートアップしてるんですね!

ハロプロには、小田さん(モーニング娘。’20の小田さくら)や平井さん(BEYOOOOONDSの平井美葉)など、宝塚ファン仲間もいます。とくに小田さんは、私が加入したばかりの頃からたくさん話しかけてくださり、宝塚情報をマメにくださるので、オタ活が充実しています(笑)。観劇もご一緒しました。

――ヅカヲタ仲間がいるのは、心強いですね。今はなかなか公演に行けない状況ですが、DVDなどでオススメはありますか?

宝塚初心者の方なら、それこそ私も幼少期から繰り返し観ている『エリザベート -愛と死の輪舞-』が入りやすいです。ミュージカル劇が好きな方は是非見て欲しいです。『1789 -バスティーユの恋人たち-』もオススメ。月組さんの『PUCK(パック)』は、とってもコミカル。ファンタジーベースの物語なので、ディズニーファンの方もハマるんじゃないかな。歌とダンスがメインの、『TAKARAZUKA REVUE』シリーズも!

伊勢さんが集めてきた宝塚のDVDやチラシなど(下段左から)(DVD)「エリザベート ―愛と死の輪舞―」(宝塚クリエイティブアーツ)、「ミュージカル・プレイ『黒豹の如く』/ダイナミック・ドリーム『Dear DIAMOND!!』―101カラットの永遠の輝き―」(同)(下段右)アクリルキーホルダー02/明日海りお(同)(上段右、公演プログラム)左:宝塚大劇場 月組 2015 スペクタクル・ミュージカル「1789 ―バスティーユの恋人たち―」、右:東京宝塚劇場 花組 2019 「CASANOVA」

ハロプロと宝塚の共通点

――宝塚とハロプロはともに女性集団ですが、他にどんな共通項があると思いますか?

宝塚も、ハロー!プロジェクトも、大人数です。どうしても、立ち位置が後ろになってしまう人がいますが、みんな絶対にステージ上では気を抜かない。ダンスも歌も、常に全力です。自分がハロプロのライブを観ても、宝塚を観ているときの気持ちになります。

宝塚はいつも完璧だけど、みなさん宝塚音楽学校に合格してから頑張った結果ですよね。アイドルも、オーディションに受かってからプロになります。最初は初々しかったり、慣れていない部分もあるけど、成長過程も含めてファンの方に楽しんでいただけるのかなと。

宝塚から、ファンとして学んだこと

――宝塚を観てきて、所作で影響を受けていることは?

ステージに立つときも、気を抜かないで美しくいたいと思っています。宝塚の方々の動きって、見とれちゃうんですよ。素敵だし、私もそうなりたいなと思って、姿勢を正しています。
――パフォーマンスの中にも、活かされていますか?

はい。宝塚のみなさまは、動きだけでなく、目線の使い方がとても素敵。私も、ダンスのフリーの部分でかなり意識していますね。ハマった公演のDVDは500回以上観ているので、宝塚の手先の動きや、スターの方々の目線の使い方などが、頭にしっかり入っているんです。

――さらに近づきたいな、という部分は?

宝塚の方々は落ち着いていて、宝塚歌劇のモットーである「清く 正しく 美しく」がもっとも似合う女性たちなんです。自分自身もそうなりたいですね。タカラジェンヌは、何か想いを言葉にするときも、周りとのバランスを見て慎重に発言されている。私は意見をズバズバ言ってしまうんですが、もっと冷静になれたらな……と思います(笑)。

「努力を見せない人がかっこいい」ハロプロの若手が考える、スターの共通点

――仕事に取り組む際の、メンタル面で宝塚を意識していることはありますか?

「努力を見せない人がかっこいい」かなあ。宝塚もそうですし、アンジュルムも、練習風景を見せない先輩が多いんです。「ほんとに努力してるの?」って思われるんじゃないかってくらい(笑)。私も「頑張ってます!」ってもっと言いたくなるんだけど、抑えています。

――とてもストイックですね。

メンバーなら、努力を見せていいとは思うんですけど、ファンの方には苦労している姿は見せたくなくて。結果が出てからご報告したい気持ちが強いです。まあ、こうやってインタビューで話したくなっちゃうんですけど(笑)。

――(笑)。伊勢さんが、真っ直ぐに努力を続けられる理由は?

ハロプロは、ひとりひとりのレベルが高いし、特技に秀でたメンバーばかりなんです。「私の個性ってなんだろう」と、考え込んでしまうこともあるけれど、その分努力しなければ! と、意識は高まりますね。毎回、オーディションを受けている気分です。
――次世代のハロプロを担う若手のひとりである、伊勢さんが考える、トップの共通点は?

みなさん全員キラキラしているんですが、トップの方はスター性が凄いんです。堂々とした自信に溢れていて、初めて宝塚を観る人も「この人がトップなのかな?」って、一瞬でわかるはず。視線の配り方が素晴らしくて、会場にいる、ひとりひとりに目を合わせてくれるんです。

――アイドル界のスターも、そうかもしれませんね! 最後に、伊勢さんの目標は?

昔から「私は絶対に娘役トップスターになる!」って思っていたくらい大胆不敵な性格なので(笑)、今も、夢は大きく持っています。いつかアンジュルムの真ん中に私が立った時に、ダンスや歌がしまって一瞬でみなさんの視線を釘付けにするような、スターの風格がある人になりたいです。

伊勢鈴蘭(いせ・れいら)
2004年1月19日生まれ。北海道出身。2018年11月アンジュルムに加入。最新シングル「限りあるMoment/ミラー・ミラー」発売中。Hello! Project 2020 〜The Ballad〜開催中。

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WRITTEN BY

小沢あや

(おざわ・あや) 1987年生まれのコンテンツプランナー。好きなものは女性アイドル。20年以上、ハロプロを中心に追いかけ続けている。豊島区公認の池袋愛好家としても活動中。尊敬する人物はつんく♂さん。

好きなものと生きていく

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