「心が折れなかったのは、すべてに意味があると思えたから」飯豊まりえの“ご縁”を引き寄せる愛され力

好きなものと生きていく #36

11月3日(火)から始まるドラマ『そのご縁、お届けしますーメルカリであったほんとの話ー』(MBS/TBSドラマイズム)。ドラマの主人公であり、誰かの想いが詰まった“モノ”を新たな持ち主に届ける、不思議な配達員・陸を演じるのは飯豊まりえさん。

10歳で芸能界入りし、現在はファッション雑誌『Oggi』『MORE』でモデルとして活躍しながら、数々のドラマや映画に出演している。22歳の今、俳優の仕事が楽しくて仕方がないというが、過去には思い悩んだことも。そんなとき、飯豊さんに手を差し伸べたり、忘れがたい言葉をかけてくれた人たちがいた。着実にキャリアを重ねる飯豊さんの「愛され力」の秘密を探った。(編集/メルカリマガジン編集部、撮影/飯本貴子)

小さな幸せに気づけるようになった

『そのご縁、お届けします〜メルカリであったほんとの話』は、メルカリのお客さまにあった実話をもとにしたオリジナルドラマ。メルカリに届いた2万を超える体験談の中から原案となるエピソードを厳選し、オムニバス形式に仕立てられている。

「普段は自分が手放したモノが、その後どこで、誰の人生で、どう生かされるのかって分からないじゃないですか。今回はメルカリで本当にあった話をもとにしたオリジナル脚本なのですが、モノとモノがつなぐ縁を、まるで空から眺めるように感じられるストーリー。すごく温かい気持ちになります。ドラマの撮影を通じて、自分も小さな幸せに気づけるようになったり、身の回りのモノをもっと大切にしたいと感じるようになりしました」

飯豊さん自身も、日頃からモノは捨てずになるべく誰かにつないでいきたいと考えてきた。

「誰かからもらったり受け継いだモノには、特別な思い入れがあります。亡くなった祖母が使っていたバッグを形見として使ったり、母が若い頃買ったティファニーの指輪を二十歳の時にもらったり。自分が使っていたモノも、なるべく捨てたくないなと思っているんです。モデルのお仕事をしていると、どうしても服が増えてしまうんですね。でもサイズが合わなくなった服は、後輩にあげたり、発展途上国へ寄付したりしています。モノがつないでくれる縁って、絶対にみんなありますよね」

ドラマで飯豊さんが演じるのは、配達員の陸。物語の鍵となるモノを、前の持ち主から新たな買い手へと運ぶのだが、少し変わった感性の持ち主だという。

「すごく不思議な女の子です。箱を開けていないけれど、中身がなんとなく想像できてしまうんですよ。荷物を届けるときに『これが何かのご縁につながりましたね』なんて言うんです。最初はちょっと怖いような気がして、『こんな人います?』って監督に聞いたら、『いや、飯豊さんもそんな感じだよ』って言われて(笑)。確かに、私もちょっと勘の良いところがあるといいますか、たとえばバッグの中身を漁っている人が何を探してるのかとか、『あ、いまこの人、私にこう言うだろうな』みたいなことが、ふっと分かる瞬間があるんですね。それに気づいてからは腑に落ちたというか、陸の感覚を受け入れることができました」

「ずっと辞めたいと思っていた」日々を乗り越えて

飯豊さんのここ最近の出演作を振り返っても、『サイン-法医学者 柚木貴志の事件-』(テレビ朝日系)での新人解剖医、『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)での見習い家政婦、舞台『流れ星』(脚本・演出:宅間孝行)では魔法使い、そして今回の配達員と、かなり役幅が広い印象がある。

「日常では遭遇できない人生経験を、役を通していろいろと経験させてもらっている気分です。毎回、楽しいです。ご一緒したい役者さんや監督さんもいらっしゃいますし、やりたい役もいっぱいあるんです。でもそれは口にするというよりも、いつも心のどこかにある、という感じで。今はいただく役から、自分に足りないものを与えてもらっている気がしています。

なんでこういう役がきたのか、その時は分からなくても、時間が経ってすべてがつながっているなと感じるんです。あの経験があったから、こういうことが大丈夫になったな、とか。だから、いつもどんな役に対しても、前向きな気持ちでいますね」

しかしこんな風に俳優という仕事を楽めるようになったのは、最近のことだ。過去には「辞めたい」と思うほど追い込まれた経験もあった。

特に忘れられないのが、映画『暗黒女子』(2017)に出演したときのこと。

「毎日たくさんのダメ出しを受けて、心が折れかけてしまって。ずっと辞めたいと思っていました。17歳の夏は修行のような夏でしたね。監督としては、そこからはい上がって来てほしかったと思うんですけど、私はそういうタイプではなかったみたいで(笑)。自信をなくして、本当に落ち込んじゃったんですよね。声もちゃんと出せてなくて、あとから62シーン分、アフレコして録り直したほどでした。

でも『暗黒女子』の撮影が終わって、次の作品『不便な便利屋』(テレビ東京)のプロデューサーの方が『飯豊さんに挽回してもらいます』と言ってくださって。北海道でのオールロケで、アドリブばかりのコメディだったんですけど、自分が持っている引き出しを全部開けて、出し切って。あ、お芝居ってこんなに楽しいんだって感じました」

演技という仕事で折れかけていた心が、また別の演技によって生き返っていくのが分かった。

「今振り返れば、『暗黒女子』にも必要な試練を与えてもらっていたのだと思います。その後に、ちゃんと“復活”して、お仕事を続けていけるご縁もいただきました。すべてに意味があって、いまにつながっているなぁと思います、ほんと」

寺尾聰さんと高橋一生さんからもらった言葉

作品だけでなく、人との縁にも「与えられてきた」と感じている。飯豊さんにとって忘れられない出来事のひとつが、寺尾聰さんとの出会いだ。ドラマスペシャル『白い巨塔』(テレビ朝日)で共演し、飯豊さんは寺尾さんの娘を演じた。

「撮影が終わった後、寺尾さんがメールをくださったんです。いまでも時折見返すんですけど、『向き合い方一つで、深みが変わるお仕事ですし、努力も勉強もせずに、通り過ぎることもできる職業でもあるので、変わらずに素敵な女優さんになってください』って書いてくださって。その言葉が本当に刺さったんです。

極端な話ですけど、俳優という仕事はセリフと最低限の動きさえ覚えれば、ときに成立してしまうこともあると思うんです。けれど同時に、共演者やスタッフの方々とコミュニケーションをとったり、自分なりに役作りのために勉強したり、役のモデルとなる人を見つけてみたり、繰り返し練習したりすることで、役そのものが全然変わってくるすごく繊細なお仕事でもあると思っていて。寺尾さんは、そういう繊細な部分を楽しんでくださいって言ってくださったのかな、と感じました。この言葉は、毎回新しい台本をいただくたびに思い出しています」

また、年末に放送される特集ドラマ『岸辺露伴は動かない』(NHK)で共演した高橋一生さんからも大きな影響を受けたという。

「一生さんは作品に入る1か月前からセリフを覚えていらっしゃるんです。本当にすごいと思って。役のセリフを暗記するというより、セリフ一つひとつの意味や構造を理解すれば、自然と出てくるようになるとさらりとおっしゃっていて。私も自分なりに役作りや準備はやってきたつもりなんですけど、ある日、一生さんが読み合わせに付き合ってくださったことがあったんです。その時、自分はまだ少し暗記っぽいセリフの覚え方をしているな、と気付かされました」

ドラマがクランクアップした際、飯豊さんがその時のお礼を伝えると、高橋さんから「今出会うべきして出会えた」と思える、ある言葉をかけてもらったという。

「先輩方と共演させていただくときに、やっぱりまだ緊張してしまったり、自信のなさが上回ってしまうことがあって。『大丈夫だったかな?』と思っていたことがにじみ出ていたんでしょうね。一生さんが『演じる人は役になりきるのが仕事ではあるけど、その役の根っこには、演じる人の人柄があって、その上で誰かになっていく。その過程こそが素晴らしいと思うので、そこを通り過ぎないで、そのままの自分でちゃんと向き合ってほしいです。作業にならないでほしいなって思います』っておっしゃってくださったんです。このままの私で役と向き合えばいいんだと思えて。すごく有り難かった。本当に忘れられないです」

また、同ドラマで共演した女優の瀧内公美さんからは「まりえちゃんのおうちに遊びに行っていい?」と言われ、何気なくセリフの覚え方をレクチャーしてもらったのだとか。

「一緒に台本を覚えてあげると言ってくださったんです。その時の私の台本はほとんど真っ白な状態だったんですけど、瀧内さんにブロックごとに台本を分けたり、書き込みをしながら覚えたりしたらいいよと聞いて。勉強させていただきました。

先輩方からは『まりえちゃんは、愛され力がある』とは言っていただけますけど、単に心配になっちゃうんでしょうね(笑)」

フィクションの世界で生きているからこそ、嘘をつきたくない

趣味はウクレレや陶芸。散歩に出かけたり、料理をしたりもする。最近は、週6日で加圧トレーニングを続けているというストイックな一面も。

「陸を演じている時、トラックの後ろのドアが重くて開けられなかったんですよ(笑)。力ないなと思って。それから大きな荷物を持つシーンでも、全然握力がなくて。あ、鍛えないとだめだなと思って、そこから真剣に通っています。なぜか儚い役とか、泣く役が多いんですけど、意外とアクティブだし、強いんですよ(笑)」

さまざまな作品の中で成長し、人との出会いに助けられ、今日まで続けてこられたいう飯豊さん。これからどんな俳優を目指しているのか聞くと、少し考えてから、こう言った。

「嘘をつきたくないと思います。フィクションの世界で私たちは生きているんですけど、でも一つひとつ、なるべく体感して、演じていきたいと思います。いま私に抱いていただいているイメージがあったとしたら、さまざまな役を通してどんどん壊していきたいですね。常に心を解放して、その時の思いをそのまま出せる俳優になりたいです」

飯豊まりえ(いいとよ・まりえ)
1998年1月5日生まれ、千葉県出身。2012年の女優デビュー後、数多くのドラマ・映画に出演。2018年に放送された連続ドラマ『花のち晴れ~花男Next Season~』では主人公の恋敵“メグリン”を好演し一躍話題に。2020年1月には主演映画『シライサン』が公開され、AbemaTV「僕だけが17歳の世界で」では3日間で総視聴数100万視聴を突破し第3話の初日視聴者数が番組最高を更新して話題に。4月には連続ドラマ『家政夫のミタゾノ』第4シリーズに出演。年末放送予定のNHK三夜連続ドラマ「岸辺露伴は動かない」では泉京香役を演じて解禁されたビジュアルが原作にそっくりだと期待されている。『Oggi』専属モデル『MORE』レギュラーモデル。

ジャケット¥190,000、ニット¥75,000、パンツ¥150,000/ミッソーニ(三喜商事)、イヤカフ(4点セット)¥22,000、リング¥20,000/ともに ブランイリス(ブランイリス/エストネーション六本木ヒルズ)

・お問い合わせ先
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ドラマイズム「そのご縁、お届けします」30秒番宣 エンディング主題歌ver

出典: YouTube

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WRITTEN BY

五月女菜穂

(そうとめ・なほ)1988年、東京都生まれ、横浜市在住。朝日新聞記者からフリーライターになりました。好きなものは、旅と演劇。世界一周を含め、渡航国は45カ国超え!

好きなものと生きていく

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