音楽2020.11.10

武田鼎

「中堅のおじさんがキラキラしたものを好きでもいい」塚地武雅がK-POP愛で気づいた、ポジティブな自己肯定感

現在放送中の連続ドラマ「そのご縁、お届けします ―メルカリであったほんとの話―」(MBS/TBSドラマイズム枠)に出演中の塚地武雅さん。お笑い芸人であり、俳優としても活躍する塚地さんだが、実は15年以上にわたるK-POPファンだ。大半が女性客の男性K-POPアイドルのライブにもひとりで出かけ、コールに声を張り上げることもある。2年前にSNSを始めてから、好きなものへの情熱や愛を発信すると「仲間ができて楽しい」と感じるようになったという。

仏壇メーカーのサラリーマンから、お笑いへの夢を諦められず、勘当同然で25年前に上京。「ずっと楽しくて仕方ないですよ。辞めたいなんて思ったことない」と話す塚地さんも、いまやお笑いの世界では中堅。「K-POPは栄養ドリンクみたいなもの」と笑う。「好き」を追い続ける塚地さんの原動力を聞いた。(編集/メルカリマガジン編集部、撮影/いわなびとん)

韓国アイドル界も体系的に把握したい、生粋のオタク気質

きっかけは担当していたメイクさんの何気ない一言だった。

「2日連続で別のメイクさんから“いま東方神起にハマってるんだよね”って聞いたんです。その偶然がなんだか気になって、MVを観てみたのが最初でした。やっぱりK-POPって歌唱力はもちろん、ダンスが圧倒的じゃないですか。格好いいなと思って、他のグループも調べるようになったんです。韓国のアイドルの方って、みなさんアーティストなんですよね。グループごとにコンセプトやパフォーマンスの方向性が違うので魅了されていって。そこからはどっぷりハマって、漁るように動画を見ました」

気づけばCS放送のM-netなど複数のチャンネルを契約。当時は東方神起やKARAや少女時代などの「第二次韓流ブーム」の最中。日々の番組録画スケジュールは、さながらテトリスのようにびっしりと入り組んでいったという。

「K-POPという現象そのものが面白かったんですよね。SMエンターテインメント、JYPエンターテインメント、YGエンタテインメントなどの大手事務所を筆頭に、何組ものグループがひしめき合っていて。音楽祭で違うグループ同士でコラボステージをやったりっていうのが、当時はまだ日本じゃあまりないことだったから新鮮で。韓国アイドル界の全貌を知りたいって思ったんです。こんなグループがいて、そのお姉さんグループがいて、同じ事務所の男性グループがいて...って調べているうちに、どんどん広がっていった。体系的に把握したいって思うのは、オタク気質の特徴かもしれません(笑)。他の事務所の養成所生だったのに、別の事務所からデビューしたとか。なんだか歴史の勢力図を見ているみたいで、紆余曲折の物語すら面白くなってきて。僕なんてそんな詳しい方ではないんです。でも長く追いかけていると、伏線が繋がっていくのも魅力です」

“好き”と思えば突き詰めるのが塚地さんの性分だ。K-POPの魅力を深く知るべく、90年代に韓国を席巻したH.O.Tやgodにまで遡って聴き漁った。さらには高校生のラップ選手権も、将来のアイドル候補としてチェックを欠かさない。音楽番組やオーディション番組だけでなく、バラエティもアイドルの素顔を見られる情報源だ。気づけば時代やジャンルを超えて、縦横無尽にディグっていた。

ひとりでBTSのライブに行って大声でコールする

コロナ禍以前はコンサートにも足繁く通っていた。会場では律儀に物販に並び、タオルやキャップなどグッズを買い集めてきた。男性アイドルのライブでは女性客が大半だが、塚地さんは単独でも気兼ねなく参戦し、大声で歓声を送る。

「BTSのライブではコールがあるんです。でもお客さんはほぼ女性しかいないんですよ。僕が思いっきりコールすると、野太いおじさんの声がするから、振り返ったお客さんが“なんか見覚えある顔だな”みたいになって。“え、塚地、1人で来てんぞ?”ってなるみたいな(笑)」

今年49歳になる塚地さんは、SNSを始めてから好きなものを堂々と楽しむことに迷いがなくなった。K-POP好きも思い切ってSNSで発信したところ、これまでとはまったく違った反応がファンから返ってきたという。

「一昨年くらいからSNSを始めて、そこに好きなことを書きこんだら、同じ趣味を持つ人が寄ってきてくれて、コメント欄に『自分も好きです』って書いてくれるんです。こういう気持ちだったのは俺1人じゃないんだって思えて嬉しかった。どんなニッチな趣味でも、たとえおじさんになってキラキラしたものを好きになっても(笑)、言ったら引かれるかなと心配するよりは、仲間が増えるって思って発信した方が楽しいんだなと感じましたね。熱を帯びていれば帯びているほど伝わると思いますし」

それは塚地さんがK-POPと同じくらい愛してやまない仮面ライダーでも同様だ。

「例えば仮面ライダーはちびっこ向けだけど、自分は昭和・平成・令和とずっと観続けている。でも他にもきっとそういう人はいて、もし知り合うことができたらLINEを交換するに至らないまでも、SNSで繋がって会話ができますよね。1人で部屋の中で引きこもりながら“いまさら恥ずかしい…”って思っているのはもったいないです。同じような人がいたら、おもちゃ買いに行こうとかライブ観に行こうとか、一緒に何かできる。やっぱり好きなものは“好き”って言った方が得ですよって(笑)」

K-POPは中堅の自分も頑張ろうって思える、栄養ドリンク

好きと決めたら突き進む。それは塚地さんのお笑いへの思いと一緒だ。芸歴25年を迎えたが「辛かったことが一度もない」と即答する。

「ずっと楽しくて仕方ないですよ。辞めたいなんて思ったことない。そら食えなかった時代もあります。貧乏時代は手を変え品を変え、なんとか凌ぎましたねぇ。スーパーに行くと、ウィンナーの試食やっているじゃないですか。ほっぺたに4つくらい入れたまま家に帰って、それをおかずに飯を食うとかね(笑)」

そのポジティブさは、塚地さんの芸人としてのキャリアのスタートが遅いこととも関係している。高校卒業後に養成所に入るのが一般的なお笑い業界の中で、塚地さんは大学を卒業した後、仏壇メーカーに就職した。それでも大好きなお笑いへの思いを捨てきれず、缶工場や空港でカート整理のバイトなどを掛け持ちしながら上京への野心を胸に秘め、家族の反対を押し切ってお笑いの道へ進んだ。

「親からは勘当に近いというか、好きにせぇって言われて。援助もしないから帰ってくるなって感じでした。でもお笑いは一生の職業にしたいと思っていました。“これっきゃない”って。だから苦しいと思ったことがないんです」

ドランクドラゴン結成後は『はねるのトびら』や『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』などのユニットコント番組に恵まれ、俳優としても『ハンサムスーツ』や『裸の大将放浪記』などで主演を務めた。最近では俳優業が増えてきたが、スタンスはあくまでも「お笑いの塚地」のままだという。

「お笑いの現場に行くときと、何も変わってないです。テンションもそうだし、リハの感じも本番の感じも。そこに大きな笑い声があるかみたいなところは違うと思うんですけど、臨み方は何も変えていない」

今回の連続ドラマ「そのご縁、お届けします ―メルカリであったほんとの話―」でも同様だ。取材の日も、スタッフと談笑しながら現場を過ごし、スタートがかかれば自然と役に入っていく塚地さんがいた。

「(主演の)飯豊まりえちゃん演じる配達員・陸の育ての親で、青果店で働く三田史郎の役です。ドラマ最終話で陸と史郎、二人の物語が明かされるんですね。『自分はちゃんと愛されていたんだ』って陸が気づくシーンに、メルカリで手に入れる懐かしい“あるもの”が関係していて。昔を思い出すようなものに出会えるというのは、メルカリの魅力でもありますよね。まりえちゃんとがっつり共演するのは今回が初めてでしたけど、人懐っこくて、周りを明るくする太陽みたいな子で。彼女自身がみんなに元気を配達してくれてましたね(笑)。役作りしてますとか、かっこいいこと言いたいんですけど、何もないんです。この衣装を着て、まりえちゃんに合わせているうちに、自然と史郎の人間像が出来てました」

ドラマでもお笑いでもスタンスは何も変わらないと語る塚地さんだが、K-POPを通して仕事に対する心境の変化が生まれたという。

「『Queendom』(現役女性アイドルグループの視聴者投票型バトル番組)や『Road to Kingdom』(『Queendom』の男性グループ版)などの番組では、若手からベテランまでさまざまなアーティストがパフォーマンスで戦うんですが、それを見ていると中堅の僕でも刺激されます。自分も(お笑いの)第7世代とかがやっている番組に参加してネタやるぞ、みたいな気持ちになりますよね。なんかね、ベタかもしれないけど、K-POPって栄養ドリンクみたいなもんで、観てると頑張ろうって思えるんですよ」

奇しくも取材当日は塚地さんのクランクアップの日だ。ひと仕事終えたあとの“栄養ドリンク”は格別だろう。

「ちょうどKCON(音楽を中心に韓国の文化を総合的に体験できるフェス)のシーズン2があるんですよ。その出演者の2回目の発表があったんです。それも『Road to Kingdom』に出ていたTHE BOYZと、ONFっていう2組のグループが、とうとうKCONにも出るんだって知って。ちょうど今ワクワクしているところでした(笑)」

遅くまでの撮影の後にもかかわらず、K-POPの話をしている塚地さんの表情は輝いている。

サラリーマンが芸人になったってええし、
男がひとりでBTSに歓声を送ったってええんとちゃう?

すべての「好き」を肯定するように、塚地武雅はがむしゃらに走り続ける。

塚地武雅(つかじ・むが)
1971 年 11 月 25 日生まれ 大阪府出身
1996 年に鈴木拓とともに、お笑いコンビ『ドランクドラゴン』を結成。2006 年公開の映画
『間宮兄弟』では日本アカデミー賞新人俳優賞などを総なめにするなど、俳優としても活躍。

ドラマイズム「そのご縁、お届けします」30秒番宣 オープニング主題歌ver.

出典: YouTube

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武田鼎

(たけだ・かなえ)経済記者だったはずが、気づけば”なんでも屋”の編集者に。好きなものはアメコミとコーギー犬。

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