芸術2020.10.14

小沢あや

「嫌になることもあるよね、って寄り添いたい」アンジュルム2代目リーダー竹内朱莉、書道で整える“先輩”の心得

好きなものと生きていく #31

約10年間グループを牽引した和田彩花さんから、2代目リーダーを引き継いだアンジュルムの竹内朱莉さん。書道を特技とし、今年8月には正師範の資格を取得するほどの腕前を持つことでも知られています。

同期メンバーが全員卒業し、年長者としてのプレッシャーを感じることもあったそうですが、毎日書と向き合うことで、心を整えてきたのだとか。

アイドルが歌やダンスを通してファンと向き合うことだとしたら、書道は自分と向き合う時間だと語る竹内さん。愛する書の世界が生活にもたらしたポジティブな影響について伺いました。(編集/メルカリマガジン編集部、撮影/いわなびとん)

「自由に書いていいんだ!」EXILE TAKAHIROさんの個展で受けた衝撃

――書道四段取得、おめでとうございます。竹内さんはアンジュルムのグッズや日本武道館のイベント題字を書くなど、特技を活かしていますね。

小学生の頃は、習い事として書道教室に通っていました。中学生になって、デビューしてからは、ダンスや歌との両立が大変で辞めちゃったんですけど、字が汚くなって「これはまずい」と(笑)。高校生になってから少し時間に余裕ができたし、書道を再開してみたんです。そしたら、段がとれちゃって。そこから、今までずっと続けています。

――現在も書道を学んでいるそうですが、そこまで真剣にのめりこむようになったきっかけは?

EXILE TAKAHIROさんの個展です。当時は日本の書家の方々とか全然知らなかったんですけど、「身近な歌手の方が書道をやっているなら見てみよう」と軽い気持ちで行ったら、ハマっちゃって。アートのような書だったんです。私はずっと、お手本通りに書くことを練習してきたけど、「自分の好きなようにしていいんだ!」と衝撃を受けました。
――書道の捉え方が、まったく変わったんですね。

そこから自由に好きな字を書くのに夢中になって、「もっといろいろやってみよう!」と、どんどんオリジナルの書体にチャレンジするようになりました。

毎朝、好きな音楽をかけて筆をとるのが習慣に

――アイドル活動で忙しい中、どうやって書と向き合う時間を作っていますか?

今は基本的に、朝に書くようにしています。昔は夜中に書いていて、気がついたら朝になっていたこともあったんですけど、やっぱり朝のほうがいい。起きて、ご飯を食べたら、すぐ書道。文字を書くのって頭も使うし、1日のスタートを切るのには最適なんです。テンションを上げるために、ロックミュージックをガンガン流しながら書いています。
――静かな場所で精神統一、という訳ではないんですね。

むしろ、バラードだと全然書けないんですよ。「曲のノリに合わせて書いたら、いいのができちゃった!」ってことが多いですね。最近はKing Gnuさんがお気に入りです。

――毎日の生活の中に、しっかりと自分の時間を組み込んでいるんですね。

2、3週間書かないと、手がなまっちゃうんですよ。集中力がもたないので、最近は「1日2〜3枚しか書かない」って決めてるんです。その中で今日の1枚を出すぞ! って。だから、気楽に続けられているのかも。作品作りのときは墨を磨りますが、普段は手軽な墨汁を使いますね。

書いた文字は、人生の記録に

――文字の配置や書体など、デザインはどうやって決めるんでしょうか?

基本的には閃き。ポンッて、突然頭に字が現れることが多いですね。考えるより手を動かしちゃうことも多くて、「何にも浮かばないけど書いてみたら良かった」なんてこともあります。文字も書き順などのルールはあるけれど、「こことここを繋げるといいかも」「崩してみよう」とか、自由にやっています。失敗も、いい味になるんです。

――膨大な数の漢字の中から、書く字をどうやって決めているんですか?

昨日の朝は、「最近、よく雷が鳴っているなぁ」と思って「雷」を書きました。アンジュルムのメンバーと過ごしている時間に書きたい文字が浮かぶこともあります。毎年、全員で海や遊園地に遊びに行くんですけど、「この光景を字にしたいな」って。

竹内さんが長年愛用している書道用品

――書道が、ライフログになっているんですね。

書道って、その日の気分がそのまま字に現れちゃうんです。「これだ!」と閃いて、一発で良い作品ができることもあるし、気持ちが荒れていると汚い字になってしまいます。小学校時代のものから保管しているんですけど、振り返ると「この頃は迷いがあったんだな」と、当時の揺らぎがわかる。面白いです。

初代リーダー・和田彩花さんが見出してくれた才能が武器に

――竹内さん、もともとは「特技:書道」とはプロフィールにも書いていなかったですよね。堂々と特技と言えるようになったきっかけは?

書道を再開してから、メンバーによく「今日はこんな字を書いたよ」と、作品を見せていたんです。和田ちょ(初代リーダーの和田彩花さん)が「本当に凄いから、絶対に発表したほうがいいよ」って、めちゃめちゃ褒めてくれたんです。

――和田彩花さんは大学院で美術史を専攻するほどアート感度が高い方ですし、いち早く竹内さんの才能に気が付いてくれたんですね。

背中を押してもらえたので、軽い気持ちでブログに写真を掲載したら、評価してもらえるようになって。本当にありがたいです。

――竹内さんの人生を切り開いてくれた先輩・和田彩花さんを一文字で表すと?

メンバーをひとりひとり漢字一文字で書いてくださいって言われたらかなり悩むけれど、和田ちょは「強」ですね。しなやかさと強さを兼ね備えているんです。芯がしっかりいるし、ひとりの人間として成熟していて、尊敬するところだらけ。アンジュルムに「強い女性」のイメージがついたのも、和田ちょのおかげです。

後輩の反抗期も、愛おしく感じられるように

――竹内さんが2代目リーダーに就任し、1年が経ちました。和田さん体制が長かっただけに戸惑いは大きかったと思いますが、手応えは。

今は気楽にやっています。あれこれ悩まず、自分のペースでやろうと思って。リーダーが変わるのも初めてだし、最初はどうしたらいいかわからず、空回ったこともあるけれど、「和田さんと同じようにやるのは無理だ」と思って。出来ることは全力でやるけど、私は自分のスタイルでリーダーをやろうと。

――続々と新メンバーも入ってきて、アンジュルムの空気も随分変わりましたね。

後輩はみんな、本当に真面目に頑張ってくれています。でもやっぱり、反抗期が一度はあるんですよ(笑)。アンジュルムメンバー、みんな通ってきた道。「うーん、今の態度はあんまり良くないなあ」と思うことがあっても「しょうがないな、反抗期だし!」って、そっとしておくのも大人なのかなって。
――年上として、余裕が出てきたんですね。

叱ってもどうせ聞かないだろうし、言い過ぎてグレちゃったら困るから(笑)。「そうだね、全部嫌になっちゃうときもあるよね」って、広い心で寄り添うのが大事なのかなと思っています。

――ちなみに、竹内さんの反抗期はどんな感じだったんですか?

とにかく、反抗心をむき出しにしていましたね。当時のマネージャーさんには、申し訳ない気持ちでいっぱいです。怒られても無視するとか、超典型的な態度をとっちゃって(笑)。中学2年生でアイドルになったけど、中3くらいの時が一番ひどかったかなあ。

――アイドルというより、超普通の中学生の感覚だったんでしょうね。意味もなく担任がムカつく、みたいな(笑)。

髪型もメイクも指定があるの「なんか嫌だな〜」って思ってたし、ちょっと決まりをやぶりたくなっちゃって。髪型とかはちゃんと守るんだけど、「お! 眉毛は何も言われてないぞ! 好きにしちゃえ!」って、めちゃめちゃ細くしちゃったこともありました(笑)。
――校則破りに近いのかもしれないですね。当時、そんなに眉毛が細かったイメージないですけど。

ヘアメイクさんが、そっと直してくれました(笑)。あの頃迷惑かけてしまったなという気持ちもあるので、年下に優しくできている部分が間違いなくあります。反抗期って、ちゃんと終わりがくるものだし、大人が待ってあげるのがいいのかなって。私も今は素直に人の話を聞くし、喧嘩もしないです。穏やかになりました(笑)。

――竹内さんも、来年でデビュー10周年。改めて、若手時代を振り返って思うことは?

2期メンバーとして加入後、人気が伸び悩んで本当に辛かった時期もあったんです。同期がみんな明るくて、同じ気持ちだったからこそ、ここまで心折れずにやってこれました。しんどいときも「私のペンライト持ってる人、全然いないんだけど! マジやっべえ(笑)!」って、笑い飛ばせる子たちだったから。ずっと仲間です。

今のアンジュルムにしかできない、最高のパフォーマンスができる自信がある

――アンジュルムの力強いパフォーマンスは、圧巻です。リーダーとして、どうやってグループを監督しているんでしょうか。

「この子はもっと伸ばせるな」「基礎ができていないな」とか、全員をひとりひとり細かく意識して見るようにしています。キャリアが長い子でも、ちょっとズレてるときは、はっきり言いますね。

――コミュニケーションをとるうえで、意識していることは。

新メンバー、とくに一般加入の子に対しては、一から教えてあげることを第一に。経験があるけれどちょっと足りない子には、プライドを傷つけてしまわないように、伝え方にはかなり気をつけています。

――キャリアが長い竹内さん側が、きちんと気遣うんですね。

数人だけ名指しで指摘すると、その子たちがショックを受けてしまう場合もあります。傷つけないように、全員参加でレッスンに巻き込んじゃうことも多いですね。リズムの取り方とかは、先輩メンバーもしっかり練習した方がいい。みんなのレベルを上げられるようにしています。
――竹内さんひとりで全員を見るのは大変だと思いますが、中間管理職的に動いてくれるメンバーは?

サブリーダーのかわむー(川村文乃さん)をはじめ、それぞれ協力的。とくに、かみちゃん(上國料萌衣さん)が後輩たちのパフォーマンスをとてもよく見てくれているので心強いんです。しっかりと注意もしてくれるし。コンサートのリハーサルも、後輩たちと1時間も前にスタジオに入って、歌とダンスをみっちり教えてくれて。私も知らないうちにサポートしてくれるので、びっくりしました。

――後輩ひとりひとりが、頼もしくなっているんですね。

そうですね。私も知らない間に、スタジオで練習していることも多くて。面倒見がいい後輩には、助けられています。やっぱり、誰かに指摘するのって、気を遣うし、できればやりたくないじゃないですか。グループのために、進んで動いてくれる人って、宝だなって思います。

――ハロー!プロジェクトは、情勢を見ながら、順次数人編成での公演を再開しています。アンジュルムとしての単独コンサートができる日が待ち遠しいのでは。

もともと特技がなにひとつなかった私だけど、アイドル活動と書道は、ずっと続けてきたもの。無理したことはなくて、好きなことをやっているうちに、気がつけばここまできていました。「今コンサートをやれば、間違いなく最高のパフォーマンスが出来る」という確信があるんです。メンバーもみんなそう思っているし、早く全員でステージに立ちたいですね。

竹内朱莉(たけうち・あかり) 
1997年11月23日生まれ。埼玉県出身。アンジュルム2代目リーダー。最新シングル「限りあるMoment/ミラー・ミラー」発売中。Hello! Project 2020 〜The Ballad〜開催中。

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小沢あや

(おざわ・あや) 1987年生まれのコンテンツプランナー。好きなものは女性アイドル。20年以上、ハロプロを中心に追いかけ続けている。豊島区公認の池袋愛好家としても活動中。尊敬する人物はつんく♂さん。

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