メルカリ2020.12.07

タンスで眠っているアイテムはコーデで生まれ変わる。新作ゼロの「サステナブルファッションショー」

フランスをはじめとし、欧州を中心に広がりつつある運動「グリーンフライデー」。アメリカ発祥の大型セール「ブラックフライデー」のタイミングで、手持ちのアイテムを再利用したり、アップサイクル(もとの素材を活かしながらアイデアを加え、別の製品に変えること)のワークショップをしたりする試みに対し、サステナブルな社会を実現したいと考える企業を中心に賛同の声が増えている。

メルカリでは2020年11月26日、セールの衝動買いで購入したがその後タンスの肥やしになっているなど、活用されていない服をコーディネートによってアップデートするオンラインイベント、メルカリ グリーンフライデープロジェクト新作ゼロの「サステナブルファッションショー」を実施。

第1部は不要になった服や「メルカリ」で購入した服を活用したファッションスタイリスト小山田早織さん、ファッションアドバイザーMBさんがスタイリング。第2部では、それらのコーディネートを披露するファッションショーが開催され、参加者がグリーンカーペットのランウェイを歩いた。第2部ではファッションデザイナー 丸山敬太さん・小山田早織さん・MBさん・株式会社メルカリBranding team manager / ESG lead田原純香による「これからのサステナブルな消費のあり方」についてのトークセッションが行われた。
(撮影/塚本弦汰、編集/メルカリマガジン編集部)

新品ゼロのファッションショー

「買ったときにはすごく気に入っていたのに、手持ちの服と合わせにくく着なくなってしまった服がある」「決まったコーディネートばかり繰り返してしまうので飽きた。着こなしに変化がほしい」。こうしたファッションについての悩みを持ったメルカリのお客さまの中から10名がショーの出演者に選ばれた。参加者それぞれの話を聞きながら、小山田さん・MBさんが手持ちの服に新鮮さや今年らしさを加えたコーディネートを提案。

ファッションスタイリスト小山田早織さん。参加者の洋服の好みや、こだわりを丁寧に聞く

ファッションアドバイザーMBさん(左)

お客さまの手持ちの服とメルカリで買った服を組み合わせてコーディネート

ライフスタイルや、いまの気分など一人ひとりと会話をしながらショーの衣装を決めていく。フィッティング中、参加者からは笑顔がこぼれた。

「母からもらった」というバイカラーのミニスカートを基調としたコーディネート。ボリュームのあるファーのコートでシルエットを今年らしく

「挑戦したことがないコーディネートがしたい」というリクエストに応え、大人な印象になりがちなムートンコートに、パープルのカラーパンツを合わせることでトレンドを意識

もう着なくなった細身のトレンチコートを活用。ビジネス感が出にくいようGジャンと組み合わせ、カジュアルに仕上げた

カラーやデザインがやや個性的すぎると感じ、着なくなってしまったカットソーやデニムを活用。カジュアルなアイテムにはツヤがあり、ボリュームのあるコートで高級感を演出。ライトブルーのデニムに、明るい色のスニーカーでトーンを合わせ、脚長に見えるスタイリングに

トレンドは着こなしでプラス

全員がランウェイを歩いたあとは、参加者と小山田さん、MBさんが本日のスタイリングについてトーク。コーディネートのビフォー・アフターについて、ポイントを話した。

参加者の太田さん

太田:母からもらったスカートを生かしたいと思い、参加しました。いいものなので、大切に長く着たいと思っていたんですが、何十年も前に作られたもの。コーディネートのためにファッション誌を見ても、参考にできる情報がなくて…。でも、小山田さんのアドバイスのおかげで、トレンド感のある着こなしに仕上がって、とても嬉しいです。
小山田:お母さんからもらったものを、長く使っていきたい、とおっしゃっていたので、過度にトレンドを盛り込みすぎないようにしました。また、太田さんのとても女性らしく品のよい雰囲気を打ち出せるようなベーシックカラーでまとめています。2020年のトレンドキーワードのひとつに「オールブラック」があるのですが、挑戦しやすそうに思えて、実はおしゃれに見せるのが難しい。そこで、ツイードのミニスカートのバイカラーを生かして、ほかのアイテムをブラックでまとめ、少し軽さを出しています。ニットとボリュームのあるカルガンラムのコートはメルカリで買いました。毛皮のコートはサステナブルの観点から最近ではあまり作られなくなっていますが、「すでに製品化されているものならば、受け継いでいきながら大切に着た方がよい」という思いも込めて取り入れています。
柳原:普段の服装は比較的きれいめで、細身だったり、色がおさえめだったりするので、今回持ってきたデニムとカットソーは着なくなってしまっていました。でも、MBさんが会話をしながらコーディネートを決めてくれ、コートを合わせてくれたことで「かっこいい」感じの印象になっていて、とても嬉しいです。
MB:柳原さんとお話をしたとき「デニムを着られるようにリメイクをしても手持ちのアイテムに合わせられなかった」と伺いました。なので、どうにか普段のきれいめなスタイルになじむスタイリングができないかな、ということでコートでドレスライクにバランスをとりました。インナーとボトムがカジュアルでも、見える面積を少なくすることで、なんとなく大人っぽく見えるんです。コートとスニーカーはメルカリで購入。「トレンド感が満載」になると街中で浮いてしまうので(笑)普通っぽいんだけどオシャレ、というニュアンスに仕立てています。あとは、首元にトレンドアイテムのタイダイのダウンマフラーを取り入れ、アクセントにしました。

消費に対する新しい価値観

第2部ではファッションデザイナーの丸山敬太さんと株式会社メルカリの田原純香が加わり、ファッションと消費についてのトークセッションを行った。

株式会社メルカリBranding team manager / ESG lead 田原 純香

田原:小山田さん、MBさん、本日のためにスタイリングのご準備ありがとうございました。ファッションショーを終えてみて、いかがでしたか?

小山田:着なくなってしまったアイテムを生かしたスタイリングは実践したことがなかったので、初めての経験でした。でも、何ていうか「リアルさ」と「新しさ」を感じ、とても面白かったです。

MB:僕は普段から「価格」や「手に入れやすさ」などの制限のあるスタイリングを実践することが多いんですよね。で、今回はメルカリしばり、というテーマが面白いな、と。今回はひたすらメルカリを調べていて、さまざまなアイテムを見たので、自分の幅が広がった感じがします。

田原:メルカリで売られている洋服についてはどう思いますか?

ファッションデザイナー・丸山敬太さん

丸山:服を作る側としての意見になるのですが、いま、自分が過去に作った服を集めてリメイクし、未来につなげていくというプロジェクトを実践しているんです。なので、僕はよくメルカリをウォッチしていますね。そして、自分が作った服が売られているのを見たとき「20年以上前に作った作品がこんな風に人に引き継がれていくんだ」と、とても嬉しかったです。

田原:メルカリを見てくださり、ありがとうございます! 丸山さん、今回のショーについてはいかがでしたか?

丸山:みなさんの堂々たるモデルぶりがとても素敵でしたね! あと、洋服はスタイリングひとつで全く違う表情を見せるんだな、ということをお二方が実践してくださっていましたよね。少し袖をまくったり、少し裾をインするだけだったり、コーディネートだけじゃなくて細やかな「気分」みたいなものを着こなしとして盛り込む、ということを見て勉強になったし、参加者のみなさんにも伝わったんじゃないかな、と思いました。

田原:ありがとうございます。では、続いて自宅で眠っている「活用できていないモノ」についてお話を伺いたいと思います。まず、洋服が約6割を占めている、ということについてみなさんどうお考えでしょうか?
MB:オシャレの価値はモノだけで決まるものだけじゃなく、モノと着こなしの掛け算で構成されていると思っているんです。今回、参加者さんの着なくなった服に対し、僕がメルカリで誰かの不要品を買ってコーディネートしている。つまり、いらないモノといらないモノをかけ合わせているので、着こなしでいらないモノが蘇る、という証明になりますよね。なのでモノだけで判断しちゃってるともったいない。もう少し「着こなし」という考え方や捉え方が広がっていくと、モノが捨てられずに活用できてくるんじゃないかな。今回のような取り組みをどんどん伝えていくことが、僕の仕事なのかな、と思いました。
小山田:とくにレディースファッションでは、トレンドに意識がいきがちなんです。ショーウィンドウのマネキンが着ている服を見て、かわいい! って思う方がとっても多くて、この感覚はファッションを楽しむ、ワクワクする体験としては大切にしてもいいのかな、と思っています。なのでショップで試着して買った、という高揚感が、なぜか自宅に帰るとなくなる、ということは「あるある」ですよね…。「すごく気に入ってるのに一度も着ていないんです」とアイテムを持って来られる方は多い。なので、着なくなった服がないかこまめに見直し、あれば誰かに着てもらってまた買う、というサイクルにしていくのがいいのではないでしょうか。

丸山:僕は逆に、お買い物のときに体験した「高揚感」を財産にして、とっておくのもいいんじゃないかな、と思っています。僕はファッションのチカラを信じているので、次に袖を通したときに「そこ(=買ったときの高揚感)に連れてってくれる」んですよね。仮に、1年に1回しか着なかった服があったとしても、強烈な思い出として残っているのであれば、それは大切にすべき。その洋服が誰かの手に渡るときには「買ったときのワクワクした体験」を一緒にシェアし、循環させていってほしいですね。そういうのがこれからのファッションではすごく大事になってくるんじゃないかな。

サステナブルとファッショントレンド

丸山:これからのファッション、という話を先程しましたが、作り手が「どう作るか」もとても重要ですよね。

田原:まさにこれから洋服をつくる、ということについて話をしていきたいなと思っていました。「サステナブル」と一言でいってもリサイクル、アップサイクル、などさまざまな形がありますよね。今のファッション業界についての課題について、どんな点が挙げられますか?

丸山:これは…本当に難しい問題ですよね。僕は「ファッションビジネス」を生業にしているわけではないので、言っちゃいます。一番よくないのは、過剰供給。あとは、広告で実物以上によく見せたモノを売る戦略。価格帯にかかわらず、必要なものを必要なだけ、丁寧に作る、という精神が必要だと思います。

小山田:スタイリングする側として感じていることとして、数年前から「サステナブル」がトレンドとして注目されてきてはいますが、デザインが伴ってこなかった、という課題があったように思います。やっと、今年あたりにペットボトルをリサイクルして作られたシューズとか、エコバッグとか、「オシャレでかわいい」と思える商品が増えてきた。なので、これからのトレンドキーワードとしても「サステナブル」が続くといいですよね。
MB:僕も丸山さんと同じ考えで、供給過多については問題だと思っています。なので、僕のオリジナルブランドについては受注生産にして、在庫を持たないようにしています。ファッションは人の人生に彩りを与える文化。文化って、誰かにネガティブな影響を与えるようになってしまうと、一気に腐ってしまうんじゃないかな。なので、どうやったら供給過多、捨てられている洋服を減らせるのかを考えたいですね。

田原:メルカリもリユースされる洋服を増やすために、サービスとしてできることを増やしていきたいと考えているのですが、何かアドバイスをいただけないでしょうか?

MB:メルカリさんに「着こなし」のイメージがわく提案をしてほしいですね。わかりやすく…! モノだけ売るんじゃなくて、トレンドや文化の発信もしてほしいです。ここに、僕のような人間もいることですし(笑) 

小山田:営業上手!

(一同笑)

丸山:メルカリは一方的な「これは不要なもの、これは必要なもの」という目線で作られているサービスではないですよね。なので、多角的な目線とバランスが重要だと思っています。それを、もっと多くの方にワクワクする形で伝えてもらえるといいですよね。

田原:みなさん、本日はありがとうございました。
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メルカリマガジン編集部

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