#4では、ファッションフリークの四千頭身・都築拓紀さんにインタビュー。ヴィンテージやブランドのアーカイブ品に目がないそうで、instagramで公開されているその個性的な着こなしやアイテム選びにも注目が集まっています。
メルカリのヘビーユーザーでもある都築さんにお気に入りの古着を持参いただき、ヴィンテージを好きになった経緯やこだわりについて伺いました。
(撮影/山本恭平、執筆・取材/高阪正洋[CORNELL]、編集/メルカリマガジン編集部)
※撮影は飛沫防止シートの使用や除菌を徹底した上で行っております。
友達の“真似ごと”から、古着の世界へ
地元の幼馴染の影響ですね。小学生のときに一緒に野球をしたり、遊んだりしていたヤツなんですけど、お互い高校生になってから久々に再会したんです。そしたら、なんだか雰囲気が変わっていて。おしゃれになっていたんですよね。その頃、僕はまだ野球漬けのジャージ小僧だったので、驚きました。よくよく聞くと、洋服に興味を持ちはじめたと。
−−−それで、その友人の背中を追いはじめたわけですね。
そうですね。それから、アルバイトの給料が入るたび茨城から東京に買い物に行くようになって、古着屋にも通い始めました。幼馴染を通して服好きの友達が増えて、彼らにも大きく影響を受けましたね。みんなバカみたいに時間も金もぜんぶ洋服に注ぐんですよ。でも、突き抜けた情熱と知識もあって、それがめちゃくちゃかっこよかった。ヴィンテージものやブランドのアーカイブ品の面白さに目覚めたのも、その頃。彼らの真似ごとをするのが入り口でした。
「かっこつけない」というかっこつけですけど(笑)。友達も誰かから影響を受けて自分のスタイルを完成させていると思うんです。それが有名人だろうと近しい先輩だろうと、街を歩いているおじいさんだろうと、かっこよければいいっていうか。
−−−街ゆくおじいさんですか?
めちゃくちゃ渋くてかっこいい人がいますからね。以前見かけたのは、アディダスのジャージパンツにMA-1を羽織って、ハットをかぶって歩いているおじいさん。街中を歩いてるおしゃれな人はマジで見逃しませんよ。かっこいいな〜! って。そういう人って、着こなしが不自然じゃないんです。自然体で服を着ることのかっこよさを目の当たりにして、服に対する意識が変わりました。
自分自身の“当たり前”がスタイリングの軸になる
“見られることを意識したファッション”よりも、あの街ゆくおじいさんみたいに、自由でありつつも現実的でストーリーがある洋服の着こなしに共感します。リアリティのある着こなしって、その人の経験が詰め込まれていると思っていて、僕は、ファッションのそういうシンプルさにロマンを感じるんです。
僕がかっこいいと思うのは、その人の人となりが表れたような自然な着こなしです。柄に柄を重ねても、男性があえてレディースの服を着ていても、その人にとって当たり前なら、それは自然体であり、シンプルなことだと思うんです。そして、そういう “当たり前”を研ぎ澄ましていく作業こそが、ファッションセンスを磨くということだと思います。
誰にも理解されないファッションの偏愛
僕にとって、洋服って“普段着”なんですよ。新品の洋服ももちろんかっこいいですが、生地やつくりがしっかりしすぎていて、緊張感がありすぎる。極端な話、僕からすると全部スーツに見えるんです。逆に言えば、古着特有のヤレ感やダメージって僕には味わい深く感じられて、体にも無理なく馴染むんです。希少価値が高いものや、高額なものでもそれは変わらないですね。せっかくならいいものをかっこよく着たい。それくらいの気持ちです。
ボロボロになった洋服の何がいいのかって、前に自問自答してみたんです。でも、それはもう“癖”のようなものだと結論づけました。「とにかく好きだから」としか言いようがない。きっと、ほとんど誰からも理解されませんが(笑)。InstagramやYouTubeでそうした発信をしても、共感されている実感はあまりないですね…。でも、僕のような「服バカ」に届いていると嬉しいです。たとえ返事は来なくても、「仲間はいるよ」と呼びかけ続けたいですね。
都築さんこだわりのヘビロテアイテム5選
パッチワークデニムパンツ
「1970年代のヒッピー文化をテーマにして作られたデニムパンツ。正直、ショーケースに入れて飾る人もいるくらい希少で高額なアイテムです。多分この手のヒッピーデニムでもテッペンだと思います。でも、だからこそ僕はむしろ普段穿きしてやろうと。どんなにレアなアイテムでも、洋服である以上は人が身に着けてなんぼだと思うんです。貴重なヴィンテージでも、それを普段着と言えるかっこよさに魅力を感じます」
ハワイアンレーヨンパンツ
「このハワイアンレーヨンを使ったパッチワークパンツは、神戸にある古着屋「楽園」のオーナーである小林さんに作ってもらったもの。これには本当に一点物の魅力があります。選ばれる生地や色味、配置は、そのときに手に入る素材や小林さんの気分次第。細かく見ると、裾の始末をあえて雑に切りっぱなしにしてあったり、一箇所だけ雰囲気の違う生地を当ててあったり。かっこいい洋服のすべてを熟知している人が作る、極上の1着です」
ドクターマーチン
「かなり古い年代のドクターマーチンで、もともと10ホールくらいあった、厚底ロングブーツ。これも、「楽園」の小林さんに加工してもらったアイテムです。上半分を切って、厚底だったソールも剥がしてもらいました。余った上半分の切れ端は、ブレスレットにリメイク。以前メゾン マルジェラも、そんな風にブレスレットを作っていたらしいんですよ」
短丈パーカ
「つい最近購入した、1950年代頃の短丈パーカ。ファッションって映画や音楽の関わりが深いもので、なかでも僕は映画的な洋服が好きなんです。このジップパーカには、映画『トレインスポッティング』と『ベイビー・ドライバー』を足して二で割ったような、究極言うと若い頃のジョニー・デップなんですけど、そういう雰囲気を感じました。襟元の緩いTシャツにデニムと革靴を合わせて、これだけ羽織って出かけられる季節が待ち遠しいです……!」
ラフ・シモンズのスウェット
「ラフ・シモンズの古着でも特に人気の高い、ヴァージニアクリーパー期のアイテム。このスウェットのカラーリングは、マジで見かけない。僕が持っている洋服のなかでも一番高いアイテムで、約60万円しました…。もちろん希少性もありますが、僕が惹かれるのは、あくまでその雰囲気やかっこよさ。なんといっても、随所のヤレ感とダメージの出方が最高ですね」
どんなに高額で希少価値の高い古着でも、 “日常着”として愛着を持って着続ける。傷や汚れといった特有の経年劣化も、味わいとして楽しむ。それが都築さん流の古着のたしなみ方でした。
https://www.instagram.com/tzk4000/
2016年、後藤拓実、石橋遼大とともにお笑いトリオ「四千頭身」を結成。大の服好きで、とくにヴィンテージやブランドのアーカイブ品といった古着に目がない。自身のInstagramや四千頭身の公式YouTubeチャンネルなどでも、そのファッション愛を熱く語っている。