温泉旅行に想いを馳せながら、入浴剤を嗜む夜

はじめまして、ながちと申します。これまで浸かった温泉は、国内外あわせて400超。会社員をしながら温泉旅行に課金し続けている“温泉オタク”です。そんな推し活が功を奏して、こうやって寄稿をしたり、旅行プランを監修したり、賞ものの選考をしたりと、温泉にまつわるさまざまな仕事をするようになりました。

とはいえ、このご時世。温泉地に出向いてお金を落としたいのですが、なかなかかないません。
 
だから、温泉に行きたい気持ちをおさえながら、自宅の風呂を湯で満たしています。少し窓を開けて、「露天風呂みたいだなあ」なんて思いながら。いつまで続くかわからないこの日々の、ささやかな楽しみです。
 
不安を少しでもまぎらわせたいバスタイムに、入浴剤は欠かせません。ご存じの方も多いと思いますが、入浴剤の中には、温泉地をイメージした商品がたくさんあります。正直に書いてしまうと、入浴剤はあくまでイメージなので、温泉自体の浴感を再現できているわけではありません。でも、なんとなーく、入浴剤を振るった風呂が、この一変してしまった日々を、和らげてくれている感じがします。

“温泉地の入浴剤”が、ちょっとだけ気分を晴らしてくれる

温泉成分を含めた入浴剤をおみやげにしている温泉地があります。現地の温泉の“効果”がそのまま得られるわけではありませんが、温泉旅行に想いを馳せるにはぴったりのアイテム。素朴なパッケージもなんだか愛しく感じます。調べればたくさん出てくるので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
例えば、大分県にある別府温泉郷の入浴剤。別府は湧出量と源泉数が日本一多いエリアで、石を投げれば温泉に当たるような湯の街です。地方都市としての側面も大きく、繁華街はにぎやか。温泉地ならではの情緒とも相まって、何度訪れても飽きないエリアです。私も住みたいぐらい大好きです。

湯けむりがそこここから上がる別府

先に挙げた入浴剤は、別府の明礬(みょうばん)温泉のもの。硫黄のにおいが一帯を包み、白く濁った温泉に浸かれるエリアです。江戸時代から伝わる製法で“湯の花”を作っていて、入浴剤として販売しています。

湯の花を製造する小屋は見学可能

湯の花は、一般的な入浴剤より断然“温泉感”があります。前述した明礬温泉の湯の花を入れると、湯は茶褐色に濁り、土のような、鉄のようなにおいでいっぱいになります。浴感もにおいもかなり温泉なので、自宅にいながら旅行気分を味わいたくなるいまにはぴったり。明礬温泉に限らず、湯の花の入浴剤は湯船を傷つけやすいので、入念な掃除と片付けが必要です。
天下の名湯・有馬温泉も入浴剤を作っています。兵庫県にある温泉地で、“日本三名泉”や“日本三古湯”に数えられ、古くから親しまれてきました。多くの歴史上の人物が訪れた有馬ですが、中でも足繁く通ったと伝えられているのは豊臣秀吉。地震で被災した有馬の改修工事にも携わったといわれています。
 
有馬には「金泉」「銀泉」の二種が湧いています。金泉は日本一“濃い”温泉とされていて、鉄分と塩分がめちゃくちゃ含まれており、浸かってすぐ汗が吹き出てくるようなパワー系温泉。かわって銀泉は無色透明、さっぱりとした浴感で、金泉のあがり湯として親しまれています。銀泉の中には炭酸やラドンが多く含まれているものもあり、見た目ではあまり特徴がわからないのですが、血流をよくしたり自然治癒力を高めたりするなどの効果が期待されています。
 
有馬の入浴剤は、金と銀の特徴を元にそれぞれで製造されているのが良いポイントです。

有馬はコンパクトながら、散策が楽しい上品な温泉地

ドラッグストアでも手に入る、温泉地をイメージした入浴剤も

各メーカーが販売している入浴剤を使うだけでも、日々の風呂は充実します。あまり入浴剤に馴染みのない方は、ドラッグストアなどで比較的安価に買えるものから試してみてはいかがでしょうか。

やっぱりバスクリン!

私のお気に入りは、バスクリンが販売している「日本の名湯」シリーズ。パッケージに大きく「温泉地公認」とある通り、各地の自治体や組合などと協力して商品開発されたものです。
 
においや浴感は、温泉そのものを模倣しているわけではありません。でも、温泉地自体の特徴や雰囲気をとらえていて、ひとつひとつに愛を感じます。
 
例えば、石川県の山代温泉の説明文にはこう書いてあります。
 
“加賀の爽やかな風が運ぶ、甘く上品な菖蒲の花の香り。”
 
山代温泉は、金沢から特急電車で30分ほどで着く温泉地。山代を含めて一帯の温泉地をまとめた“加賀温泉郷”では、年に一度「菖蒲湯祭り」が行われます。加賀市の市の花は「ハナショウブ」で、お祭りの時期は各温泉旅館でも菖蒲湯に浸かれるのだとか。だから、山代を“菖蒲の花の香り”にしたそうです。

北陸の名湯、山代温泉の中心地にある共同浴場「古総湯」

また、北海道の登別温泉や秋田県の乳頭温泉からは、パッケージのわずかな色の違いにとてもこだわりを感じます。

登別は灰色っぽくて、乳頭は青白い

にごり湯は全国に数あれど、登別あたりの温泉は特にグレーがかっていて、色味に特徴があります。
 
かわって乳頭はもう少し青みがかっていて、まさにこのパッケージの色味そのもの。現地に行った人でないとわからない違いを表現してくれているのは、温泉オタクとしては嬉しい限りです。

登別温泉の自然あふれる足湯スポット

登別は北海道屈指の温泉地で、「温泉のデパート」と呼ばれるほど、さまざまな泉質の温泉が湧いています。グレーがかったにごり湯は、肌に吸いつくしっとり湯でサイコー。札幌から高速バスで2時間ほどの距離に位置しています。少し車を走らせれば支笏湖・洞爺湖・ニセコ・定山渓などの温泉地もあるので、訪れる際は数日かけて周りたいエリアです。

乳頭の美しいにごり湯は、温泉ファンのあこがれ

乳頭は「日本一有名な秘湯」という、やや矛盾を抱えた、秋田県の山奥にある温泉郷です。一軒宿が点在している温泉地で、こと「鶴の湯」はすばらしい景観と温泉が評価されています。おそらく、温泉ファンにとっては「一生に一度は浸かりたい」あこがれ湯ではないでしょうか。

入れるのと入れないのとじゃ、大違い

お酒を飲みすぎた日以外は、ほとんど毎日、自宅で湯船に浸かっています。これまで書いたような温泉地をイメージした入浴剤を使うときもあれば、花王の「バブ」やドイツシェアNo.1の「クナイプ」なども多用します。あまりこだわらず、なるべく個包装のものを集めて、変化や違いを楽しむのが飽きないコツです。
夫はよく、「入れるのと入れないのとじゃ、大違いだよなあ」と湯上がりに言います。私のような温泉好きでない夫も、毎日湯船に浸かりたくなるのは、入浴剤がバスタイムを楽しくしてくれるから。何も入れていない無色透明の湯は、なんだか硬くて、ほぐれた感じがしないと言うのです。
 
(湯の花などを除いた)入浴剤は基本的に、香りをつけて、温泉成分にもよく含まれる炭酸水素ナトリウムや硫酸ナトリウムなどを配合し、つるさらな浴感を演出してくれています。
 
「効果って本当にあるの?」と少し疑ってしまうかもしれませんが、そもそも風呂に浸かること自体、とっても体によいのです。体が温まり、血流がよくなり、疲れが取れて、心身リラックスが期待できます。シャワーで済ましてしまいがちな方はぜひ、今夜は(入浴剤で気分を高めつつ)湯を張ってみては。
ながち
温泉オタクな会社員。訪れた温泉は400超。Twitter:@onsen_nagachi

※現地の写真は筆者が訪れた当時に撮影したものです。現在と景観等が変わっている場合がありますので、ご了承ください
※入浴剤は温泉と同一成分ではありません
※肌に合わない場合は無理せず、シャワーなどで洗い流してください
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メルカリマガジン編集部

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