懐かしのオモチャを集めて20年、「オモチャおじさん」はメルカリで自分探しをする

「全部でいくつのオモチャが手元にあるのか、自分でもいまいちよくわかっていません」
 
そう話すのは、自己流でオモチャを集めて20年という元模型誌編集者でライターのしげるさん。自分がなんとなくいいと思った懐かしいオモチャを集めるのが趣味で、メルカリ検索で好きなオモチャたちを眺めているだけで、気づいたら数時間経過してしまうことも多々あるそう。
 
大人になった今でも「本当に欲しいオモチャ」と真剣に向き合う時間について、「まあ、いい感じに言えば自分探しです」と語る“自称・オモチャおじさん”。
 
そんなしげるさんが、オモチャを買うなかで悟った「好きなモノを集める極意」について考察します。
(執筆・撮影/しげる、編集/メルカリマガジン編集部)

おじさんになっても、オモチャが欲しい

世の中にはオモチャを買う大人がいます。完全に子どもと同じテンションで買っているというわけではないですが、自分の好きなキャラクターのフィギュアを買い集める快感にハマったり、小さいころには分からなかった設計の妙味を味わったり、はたまた玩具業界や玩具史に対する研究の一環として、大人になってもオモチャを買い集めたりしているのです。
 
オモチャ収集はふた昔くらい前は「好き者の遊び」と思われていて、それもプラモデルやミニカーのコレクターとか特撮マニアとの境界線が曖昧な趣味でした(もちろん今でも全部一緒に楽しんでいる人もいます)。
 
しかし、25年ほど前にマクファーレントイズの「スポーン」シリーズなどアメリカ製のアクションフィギュアが投機的な要素も含んだブームになったり、その後に食玩のバブルがあったりして、今では「大人がオモチャを買い集める」という趣味も世間的に認められるようになったと思います。

大量に溜め込んだ、galoob(※)などから発売されていた小さな人形(の一部)。ものが小さいので、大量に集めても場所を取らないのだ

(※ガルーブ。かつて存在した米国のトイメーカー。マイクロマシンと呼ばれる飛行機や艦船、キャラクターメカなどの小さく精巧なトイで知られており、おもちゃマニアたちから高い評価を得ている)

かくいう自分も、趣味でオモチャを買いまくるようになって早20年近く。『スター・ウォーズ』や『G.I.ジョー(もちろん地上最強のエキスパートチームの方)』の3.75インチフィギュアや、アメコミを題材にしたトイビズなどのフィギュア、はたまた国産のトレーディングフィギュアやらロボット玩具やらを買い集める、無節操なオモチャライフを送っております。
 
ちゃんとリストを見てイチから全部そろえて、買った後は分類して並べて…みたいな、いわゆるしっかりしたコレクター的な買い方とは全然違いますすが、それでも中学生のころからオモチャを集め、気がついたら軽い気持ちで引っ越しできないような状態になってしまいました。いま全部でいくつのオモチャが手元にあるのか、自分でもいまいちよくわかっていません。
 
こうして長期間オモチャを買っていると、自分の好みがよくわからない「こじらせ方」をしちゃったな〜と感じることがあります。コレクター向けオモチャやアクションフィギュアの世界にも流行り廃りがあり、それと長年の積み重ねで固まった自分の趣味嗜好との間にズレを感じることがままあるのです。

80~00年代くらいのオモチャが刺さる、その理由

自分が特に惹かれるのは80〜00年代の、ちょっとクレイジーで自由な遊び心のあるオモチャたちです。例えば、原作にはまったく登場しない武器を持っていたり、水やミサイルを飛ばす仕掛けがあったり、脚を握るとパンチしたりするオモチャたち。大きすぎてどこに置くのかさっぱりわからない基地のプレイセットもほしいし、イカしたデザインのビークルだって欲しい。
 
そういう趣味の自分から見ると、最近のアクションフィギュアの流行りには、もの足りなさを感じることが多いです。例えばいまは原作のキャラクターに忠実な1/12スケールくらいのフィギュアに、とても出来が良いものがたくさん売られています。それはそれでもちろんいいことだと思います。
 
しかしオモチャとしてはなんだか品行方正で、個人的にはちょっと面白くない。

スターウォーズのシリーズでは、大型基地のオモチャも発売された。普段は畳んでしまえるところがありがたいぞ

「キャラに似ていて出来がいい」というだけでは、どうにも自分はワクワクしないのです。
 
というわけで前置きが長くなりましたが、そういう人間にとってありがたいのがメルカリみたいなフリマアプリを利用したオモチャ漁り。80~00年代くらいのちょっと昔の製品には、上に書いたような条件を満たす、いま見ると「ツボ」なネタがゴロゴロ……。当時のオモチャに心ときめかせてしまう自分のような人間にとっては、ジャンルや年代を問わず一発でオモチャが検索できるフリマアプリという存在は、まことにありがたいもの。さらにフリマアプリでこれらのオモチャを眺めることで、「自分は一体何がほしいのか」を冷静に見つめなおすこともできるのです。

「やるじゃん」

例えば「galoob(ガルーブ)」という、いまはもうなくなってしまったアメリカのオモチャメーカーの製品が昔からすごく好きなんですが、これもメルカリで検索すればズラッと出てきます。あっZ-BOTS(※90年代にガルーブ社が展開していたマイクロマシンシリーズのオリジナルキャラクター)がまとまって出品されてる…『特攻野郎Aチーム』のバンが6,000円か…いいなあ…と、この検索画面だけを眺めているだけで2時間くらいは余裕で過ごせます。
この「galoob(ガルーブ)」のオモチャも、日本国内に入ってきた数や時期によって流通量に差がありまして、当然ながら出品されている数が多いものとそうでもないものがあります。

galoob名物だった、生首開閉タイプのオモチャ。大抵は頭を開くと中身がジオラマのようになっており、そこにフィギュアを組み合わせて遊ぶ

で、困ったことに「あっ! これがこの値段なら安い! 買う!!」というモノに限って、まあだいたい綺麗に売り切れてるんですね。悔しいことに。

Z-BOTSが未開封でまとめて出品されてて1,200円! あ〜でも、このバラ売りのセットもほしかったな……

個人的にメルカリのちょっと面白いと思うところは、この「売り切れちゃったものも検索結果に表示される」という仕様です。自分が欲しいものが売れてると正直めっちゃ悔しいんですけど、同時にこの仕様によって「ま~わかるな~これがこの値段だったら売れるよな~おれも買うもんな~そりゃ~」という、自分のオタクとしての目利きのセンスの確認と、買った人に対する「お前もやるじゃん」という上から目線の褒め感情とがないまぜになった、複雑な気持ちになれるのです。
 
それにしても、「スターシップトゥルーパーズ」のウォリアーバグのルーズが1,999円…おれ、デカい方のウォリアーバグだけ持ってないんだよな…買いたかったなこれ…どうせ開けて遊ぶし…。

「物欲の達人」になる 

また、フリマアプリのオモチャ漁りで楽しいのは、同じ出品者が出している商品を芋づる式にたくさん見ることができる点でしょう。リアルな店舗では「店が何を仕入れたか」という形で現れるポイントですが、検索するだけでいろんな人の出品を並べて見ることができるのは、フリマアプリ ならでは。
 
25年以上昔のアメリカのオモチャを出品している人というのは、他にもそういった商品を出品していることが多いような気がします。自分が欲しいものを検索し、そこから出品者が他に出している商品も見てみれば、「あ~この人、『マテル』のホラーペットも出品してる~~~! 不気味でバカなオモチャだな~~~最高~~~~~!!」みたいな気持ちになれるのです。
 
こういうことを繰り返していると、だんだんと欲しいオモチャを見かけてもグッと堪えるスキルがついてきます。いや、もちろん欲しいんです。しかし、自由になるお金も、オモチャを置いておく場所も有限。というわけで、「めちゃくちゃバカで面白そうで最高のオモチャだけど、ここは見送ろう」と平静な心持ちで検索結果を眺めていられるような境地へと達することができるのです。それは裏返せば、「どういうものがいくらで出品されていたら買うか」という判断基準を強化していくことにもつながります。

特別篇公開以降galoobの看板シリーズとなった、アクションフリートのスターウォーズシリーズ。大雑把ながら大体スケールが揃っているうえに、小さいフィギュアを乗り物に乗せて遊べるのが嬉しい

もちろん無限に予算があればなにをするのも可能になりますが、現状はそうではありません。
お金と時間と場所に制約があるなかで、さまざまなオモチャを検索し、大量に現れる魅力的なオモチャを見比べ、これまでに買ったもので特に面白かったもののデータベースを蓄積する。そんな反復こそが、自分のなかのオモチャ購入の判定基準を定め、何が自分にとって一番大事なのかを見極めることになるのです。
 
こうしてインターネットで「オモチャ購入の素振り」を繰り返すことで、誰のものでもない、オリジナルなオモチャ評価基準を作り出せるのです。その基準を自在に操ることができれば、それはもう「物欲の達人」に他なりません。これはもはや、自分探しの一形態なんだと言いたい! おじさんだって自分探しするんだぞ!!

おもちゃ蒐集は、「自分探し」

家にはこれまでにいろんな方法で買い集めたオモチャがゴロゴロ……。こんなに買ってどうすんでしょうね、ほんと

いい年こいて、たかがオモチャを買い集めて……と、家族には疎まれがちなオモチャ趣味。

しかし、オモチャにうつつを抜かすおじさんたちが、いまだ終わらない自分探しをしているのだとしたら……。それはそれで問題かもしれませんが、しかし自分の基準に従って欲しいものを全力で探すことの面白さ、そしてそれを見つけて買うかどうか悩んで、やっと手に入れた時の高揚感は他に代えられるものがありません。

食べて祈って恋をしたりはしない代わりに、オモチャを買う。そういう人間にとって、今やインターネットでの「オモチャ素振り」はなくてはならない、自分との対話そのものなのです。
しげる
ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊『ホビージャパン』にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、『ホビージャパンエクストラ』にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

Twitter:@gerusea
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メルカリマガジン編集部

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