いろいろあった2020年も師走を迎え、もうすぐホリデーシーズン。例年以上に、自分にとって大切なモノやかけがえのない人のことを考えた1年だったのではないでしょうか。
そんな大切な人や支えてくれた人に、そろそろクリスマスプレゼントを考えている人も多いはず。そこで今回、ファッションアドバイザーのMBさんに「喜ばれるプレゼント」についてインタビュー。ギフト探しにおけるメルカリの活用法についても、前のめり気味に聞いてみました。(構成/メルカリマガジン編集部、撮影/塚本弦汰)
MB
メンズファッションブロガー。アパレル店舗のスタッフから、店長、マネージメント、バイヤー、コンサルティング、EC運営など多岐にわたる経験を持つ。ブログ「最も早くオシャレになる方法KnowerMag」や登録者23万人のYouTubeチャンネル「MBチャンネル」でファッションHOWTOをわかりやすく発信。著書に『最速でおしゃれに見せる方法』(扶桑社)『服を着るならこんなふうに』(KADOKAWA)など。
プレゼントの正解を求める時点で、相手のこと考えてないなって思っちゃう(笑)
メルカリマガジン編集部
いきなりですが、MBさんはメルカリでクリスマスプレゼントを買うのってどう思われますか?
MBさん
さっそく本題に入るんですね(笑)。うーん、メルカリでプレゼント買うの、ナシじゃないんじゃないですか? 抵抗を持つ人に押し付けることはないと思うけど。僕自身は全然抵抗ないですね。
メルカリマガジン編集部
よかった...「ナシですね」って言われたらどうしようかと思いました(笑)。
メルカリって新品からユーズドまで本当に色々なモノがあるので、ユニークなプレゼントを見つける場所としても面白いと思うんです。ただ、世間的にはまだ違和感あるのかなと...「これメルカリで見つけたんだ!」ってプレゼントをもらっても気にならないですか?
MBさん
僕はヴィンテージとかデッドストックが好きで、古着のバイイングもやっていますし、逆になかなか手に入らないものを「見つけたよ」ってプレゼントされるとすごく嬉しいですね。
メルカリマガジン編集部
確かに、手間がかかってますもんね。これまでMBさんの記憶に残っているプレゼントって何かありますか。
MBさん
それこそ、デザイナーズのヴィンテージをくれた人はいましたね。
いまバーバリーを手掛けているリカルド・ティッシというデザイナーがいるんですけど、リカルド時代のジバンシィってめちゃめちゃ人気があるんですよ。マニアの間でも取引価格が上がってたりするんですけど。僕もリカルド時代のジバンシィがすごい好きで、どこかで「もう手に入らないんだよねえ」と言ったのを覚えていて、プレゼントしてくれた人がいたんです。
メルカリマガジン編集部
粋ですね...!
MBさん
それは嬉しかったですね。あとは、もうお店では売っていないパネライ(腕時計)のヴィンテージをいただいたこともありました。
メルカリマガジン編集部
やっぱりヴィンテージが多いんですね。
MBさん
いま店舗で売っているものって、好きなデザインがあると自分で買っちゃうから(笑)。普通には買えないモノをいただくと、それ自体も有り難いし、時間をかけて探してくれたことがすごく嬉しいですよね。
メルカリマガジン編集部
この時期、プレゼント選びで迷う方が多いと思うのですが、喜ばれるモノを見つけるコツってありますか?
MBさん
僕がよく言っているのが、「プレゼントに正解はない」ってことなんです。プレゼントの正解を求める時点で、相手のことを考えてないなって思っちゃうんですよね(笑)。
メルカリマガジン編集部
おっしゃるとおりです...。
MBさん
「いま何が欲しいんだろう」とか「あの時なんて言ってたかな」とか、相手を思い出しながら考えることが、何より大切なんじゃないですかね。結局そのこと自体が、プレゼントにもなると思うんです。「これをあげれば間違いない」ってすごくインスタントで分かりやすいんだけど、いろいろ考えてくれたんだなーって伝わるのが一番だと思うから。
まあそうは言っても、考えるヒントが欲しいという気持ちは分かります(笑)。
個性や好みが出る「小物」を見れば、その人が考えていることが分かる
メルカリマガジン編集部
MBさんが誰かにプレゼントする時に、心がけていることがあれば教えて下さい!
MBさん
相手が使ってくれたり、喜んでくれなきゃ意味がないと思うので、僕はその人が普段着ている洋服とかめっちゃ見ますね。仕事柄、だいたいどこのブランドか何となく分かるし、マフラー巻いてたらタグが付いているから、ちらっと見た時に覚えておくとか。
メルカリマガジン編集部
すごい。普段からギフト・アンテナを張ってるんですね。
MBさん
知らないブランドだったら検索すると出てくるじゃないですか、今の時代。そうすると取り扱い店舗も分かるので、「ああ、この辺のテイスト好きなんだろうな」って見当をつけるとか、結構癖でやっちゃいますね。
メルカリマガジン編集部
プロだ。
MBさん
だからさっき部屋に入ってこられた時、持っていらしたバッグかわいいなと思って、どこのだろうって見てました(笑)。あとスタッズのついた名刺入れを使ってらっしゃるから、割とデザインのある小物好きなんだな、とか。
メルカリマガジン編集部
図星です(笑)。
MBさん
小物は結構好みとか個性が出ると思うので、プレゼントの参考になりますよね。小物を見れば、なんとなくその人が考えていることが分かる。シンプル、ガーリー、メンズライクとか、嗜好性が表れるじゃないですか。
メルカリマガジン編集部
その人のテイストとかライフスタイルを理解しないと、「使ってもらえるもの」は選べないですもんね。
MBさん
だから「何を選ぶか」より「その人の生き方を知る」のほうが大事じゃないかなと思っていて。
相手に興味持ってなかったら、本当に嬉しいプレゼントって出来ない。「これいま流行ってるんだよね」ってプレゼントするよりも、「この間持っていたバッグがこんな感じだったから、似合うと思うんだよね」ってあげたほうが喜ぶと思うんですよ。テンプレートなものより、パーソナルなモノのほうが響くじゃないですか。
メルカリマガジン編集部
テンプレートよりパーソナル...金言ですね。
MBさん
それはビジネスも愛情も、何にでも当てはまると思うんですけど。プレゼントはまずパーソナルなアプローチがどこにあるのかを考えるのがいいと思います。
それこそメルカリって、結構アバウトな検索でも引っかかったりするじゃないですか。例えば「スタッズ、バッグ」とか。そこに、テンプレートじゃないギフトのヒントがある気もするんですよね。
好みが分かりづらい人には、スペックやストーリーのあるものを
メルカリマガジン編集部
洋服とか持ち物にこだわりのない人の場合は、どうされてます?
MBさん
それ難しいですよね(笑)。特に男性は、そもそもファッションに興味がない人も多いですからね。そういう時は、やっぱり機能性とかスペックなんです。個人的な感覚なんですけど、女性の方が子どもの頃から、身につけるものに対するリテラシーを育ててもらえる機会が多いと思うんです。
メルカリマガジン編集部
リテラシー?
MBさん
お母さんが教えてくれたり、友だちと話している中で、「あれが可愛い」っていう自分の価値観が形成されていく。でも男性の多くは、そういう機会が乏しいまま育つから、「あれがカッコいい」に自信がない。そこを担保できるのが、機能とかスペックなんです。1か100だったら100のほうがいいに決まってる。客観的な事実があるから、そこに頼れるんです。
メルカリマガジン編集部
「語れる何か」がセットになったモノをプレゼントするのがいいと。
MBさん
そうですね、データとかストーリーのあるものをプレゼントするといいと思います。僕のYoutubeでプロダクトをロジカルに解説するコンテンツも、視聴者は男性が多いです。逆にそこからブランドやファッションに興味を持つこともあると思うんです。僕がヴィンテージが好きなのも文化とか歴史的背景があるからだし。
メルカリマガジン編集部
最近だと、ヴィンテージでどんなものを買われたんですか?
MBさん
いっぱいありますよ。ヴィンテージは週1ペースで買っているかも。この間、50年代のプリズナージャケットを見つけたんですけど、それがめちゃくちゃ格好良くて。刑務所に収監される人が着てたやつで、15万くらいしたかな。
メルカリマガジン編集部
囚人服...売ってるんですね。
MBさん
あ、デッドストックなので実際に袖を通されたものじゃないですけど(笑)。あとはL.L.Beanの80年代の古着のジャケットが可愛いくて、5000円で買いました。
よく言われますけど、トレンドは繰り返しなんですよね。いまは60年代くらいのトレンドがまた戻ってきている感じ。だから60年代、70年代のファッションって、いまモノづくりする上でヒントが詰まっていて面白いんです。
日本でトップクラスに服を買っている自負はある、でも服は捨てない
メルカリマガジン編集部
プレゼントの話から、MBさんの消費やプロダクトへの眼差しが伺えて興味深いです。
トレンドが繰り返す中でも、近年はファッションにおけるサステナブルな取り組みが重要になってきていますよね。先日メルカリが主催したグリーンフライデーのファッションショーにもご登壇いただきましたが、ご自身ではサステナビリティとどう向き合われてますか?
MBさん
服は基本捨てないですね。
僕、日本でトップクラスに、いや多分ですけど、ベスト10に入るくらいには服を買ってると思うんです(笑)。それどうしてんのってよく言われるんですけど、ほぼ捨てない。運営しているメルマガの会員さんに安く提供したり、寄付したりしていますね。規模は小さいですけれど、なるべく廃棄を出さないという意識は常に持っています。
メルカリマガジン編集部
ファッションの仕事をしていると、どうしても服が増えてしまう...という悩みはよく聞きますが、廃棄ほぼゼロってすごいですね。
MBさん
ファッションって、生きる上で絶対に必要なものじゃない。飢えを凌げるわけでも、命に関わることでもない。じゃあなんでお洒落してるのって考えると、人生が豊かになったり、生活が彩られるからですよね。「なければ死ぬ」ものではないからこそ、大量廃棄とか、動物殺生とか、ネガティブな要素が膨れ上がっていくと「え、オシャレなんてしなくていいじゃん」って急に醒めると思うんですよ。夢みたいなもんで。
メルカリマガジン編集部
ファッションは夢、ですか。
MBさん
そうですね、現実とは違うものを見させてくれる夢。だからファッションは極力ポジティブじゃないといけないと思うんです。ステラ・マッカトニーが動物殺すのやめますとか、バーバリーが廃棄やめますとか、そういった今の流れはファッションが夢であり続けるためにも必要ですよね。
サステナブルであることがファッショナブルな時代になっている
メルカリマガジン編集部
ハイブランドほどサステナブルであることを表明しはじめていますね。
MBさん
サステナブルな取り組みが、「やらないといけない」という観念的なものじゃなくて、「そっちのほうがカッコいい」という感性的なものに変わっていますよね。
実際いま海外の生地屋さんって、サステナな素材じゃないとあまり売れないらしいんです。善とか悪とかじゃなくて、カッコいい/カッコわるいの価値観にすり替わっているのが、いかにもファッション業界っぽくていいなと思いますね。
メルカリマガジン編集部
もはやサステナブルであることがファッショナブルであると。
MBさん
1960年代のヒッピーのムーブメントもそうですけど、ベトナム戦争があって、反戦運動が起こって、自然に帰ろうっていう思想が生まれて、“そういう”着こなしがかっこいいじゃんと。それでジョン・レノンが古着のデニムを履いて、ミリタリージャケットにピースマークを書いて、それが文化にもスタイルにもなっていった。
サステナビリティも、結局はファッションをもっとカッコよくしようっていうカルチャーの流れだと思うんです。それには僕も強く賛同していますね。
メルカリマガジン編集部
MBさんのYoutubeなんかを見ていると、素材や機能だけでなく、ファッションやプロダクトの文化的背景を知ることができて、モノへの愛着や価値が増す気がするんです。そう考えると、自分にとって「いいモノ」を買って長く使うというのも、シンプルですがサステナブルな消費ですよね。
MBさん
おっしゃるとおりだと思います。いいモノを長く使うこともそうだし、自分が必要なくなった時に「次に渡す」価値のあるモノを買うのもサステナビリティを考える上で重要だと思います。インスタントなモノづくりは早くダメになることも多い。逆にエルメスとかフェンディのバッグってすごい高いけど、すごい高く売れるじゃないですか(笑)。意外と損してないと思うんですよね。むしろ賢い消費の仕方だなと思います。
いまMBさんが欲しいモノは?
メルカリマガジン編集部
いいモノを買うことが、サステナブルであるってなんかいいですね。
MBさん
今日僕がつけているブレスレットもヴィンテージなんですけど、古臭くは見えないじゃないですか? 時計は世界最古のメンズ時計と言われるカルティエの「サントス」なんですけど、ほとんどデザイン変わってないから、昔買った人でも違和感なく使い続けられますよね。
メルカリマガジン編集部
確かに「定番は廃れない」とよく言われますよね。
MBさん
文化的背景のあるモノ、時間の洗礼を受けたモノほど、新鮮であり続けたりする。そういうモノを大事に、形見みたいに受け継いでいくって素敵ですよね。
ヨーロッパの人たちは、お祖父ちゃんからもらったバッグや時計を普通に使ってたりします。日本って戦後は大量生産、大量消費に進んだから、「古いものを着ているとみっともない」という感覚がどこかある気がするんです。でもこれからは受け継いでいく文化を、取り戻してもいいんじゃないかな。
メルカリマガジン編集部
最後に、今年MBさんがもらったら嬉しいクリスマスプレゼントってなんですか?
MBさん
えー何だろう...それが一番難しい(笑)。
でも、ヴィンテージのシルバーアクセサリーかな。それこそシルバーって過去のアーカイブにカッコいいモノがたくさんあって、トレンドの大元になってたりするんですよね。昔のカルティエ、ブシュロン、ショーメとか、見れば見るほどそこから今のデザインが生まれている。でもいわゆるロスト・テクノロジーで、当時出来ていたことが今の職人さんは出来ない、ということも結構あったりする。そういう幻となっているようなモノづくりを見るのが好きなので、プレゼントされたらぐっときちゃいますね。