電化製品2022.08.20

お米のプロが選び方を伝授。食卓がレベルアップする炊飯器10選

家電ライフスタイルプロデューサーとして国内外の家電に精通している神原サリーさん。特に炊飯器にはこだわりがあり、お米の基本的な知識やおいしい調理法などの知識を有する、米飯管理技能士という資格もお持ちとのこと。今回は最近のトレンドも踏まえつつ、自分に合う炊飯器の選び方とおすすめを教えてもらいました。

(編集・取材・構成/大久保亜季乃、編集/メルカリマガジン編集部)

プロが教える、ポイントを押さえた炊飯器の選び方とは?

選び方に困る家電ベスト5に入ると言っても過言ではないぐらい、種類が豊富な炊飯器。加熱方式が違う?何合炊き?内釜の素材で変わる?などなど、チェックするポイントがありすぎて、だんだん何を選べばいいかわからなくなってきてしまう人も多いのではないでしょうか。まずはじめに、難しい部分は抜きにして、とりあえずここだけ気にして選べば大丈夫!というポイントを教えてもらいました。

まず何より大事なのは、予算を決めること

「これを言ってしまうと元も子もないかもしれませんが、炊飯器は基本的に価格とおいしさがほぼ比例します。他の家電は価格と性能が比例しないこともありますが、炊飯器はシンプルに、高いものはおいしい。わかりやすいですよね。

なので、どこまで予算を出せるか?というところから決めないと、自分に合った炊飯器選びはできません。炊飯器の価格帯は、1万円台までのロークラス、3万円台程度までのミドルクラス、6〜7万円以上のハイクラスでざっくり分けられますが、ハイクラスの炊飯器であれば、正直どれを選んでもおいしいんですよ。

もちろんメーカー別に炊き上がりの食感は少し違うので、自分の好みに合ったものを選んだほうがより満足感は上がりますが、最近のハイクラス炊飯器のトレンドは、食感の好みやお米の銘柄に合わせて、炊き分け機能を充実させていることなので、うまく使いこなせればどの炊飯器でも遜色はないんです」
価格帯6〜7万円以上のハイクラス炊飯器なら、どれを選んでもおいしいとのこと。ある意味非常にわかりやすく、納得感がある選び方です。

でも、そこまでの予算はないけどできる限りおいしいご飯が炊ける炊飯器を選びたいと思う人も多いはず。ロークラスやミドルクラスでもおいしい炊飯器を選ぶポイントについても教えてください。
「ミドルクラスまでの炊飯器なら、3つのポイントに絞って選ぶのがおすすめです。

まずは、内釜の厚み。内釜の素材は色々ありますが、結局は厚い方が蓄熱性も高くなり、甘みのあるご飯が炊きやすくなります。なので、なるべく厚いものを選んでください。

次に、蒸気口の大きさ。炊飯器の蓋などについている蒸気口は、炊飯中に蒸気や水分を受ける役目のものです。それが大きいということは、それだけ多くの蒸気や水分が出てくるということ。高温で大沸騰して炊飯していることの証でもありますし、粒立ちの良さを引き出してくれます。なので、蒸気口は大きめのものがおすすめです。

最後は、メーカー選びです。実は、それぞれの炊飯器が目指す炊き上がりのご飯のおいしさは、東西のメーカーでざっくり違いがあるんです。タイガー魔法瓶や象印、パナソニックなど西側メーカーの炊飯器はやわらかめでもっちり傾向。日立、三菱、東芝などの東側メーカーの炊飯器は粒立ちシャッキリ傾向。どんなご飯をおいしく感じるかは個人の好みで変わるので、自分が好きな食感に近い方を選ぶといいですね。おすすめは、自分の出身エリア側のメーカーを選ぶか、実家で使っていた炊飯器メーカーを選ぶことです。

この3つのポイントを押さえて選べば、ハイクラスの炊飯器じゃなくても、十分おいしさに満足できると思いますよ」
内釜の厚さ、蒸気口の大きさ、メーカー。この3点を抑えるだけでおいしい炊飯器を選べるなんて、わかりやすくてありがたいですね。でも、そうはいっても選択肢が多すぎるという人のために、神原サリーさんおすすめの炊飯器についても伺いました。

とにかくおいしく食べたい人に「グルメ炊飯器」4選

タイガー魔法瓶 土鍋圧力IHジャー炊飯器<炊き立て>土鍋ご泡火炊き

画像提供:神原サリー

「土鍋ご泡火炊きシリーズは、内鍋に本物の土鍋を使っていることが特徴で、蓄熱性がとても高いです。土鍋でお米を炊くと、お米を細かな泡で包みながら丁寧に沸騰させるので、お米の表面に傷をつけにくく崩れすぎない。甘みと粒立ちのバランスが素晴らしいですね。タイガーさんならではのポイントとして、約250度という超高温で旨みと甘みを閉じ込めて炊くので、非常に香り高く仕上がり、口に入れた時に鼻に抜ける感じがなんとも言えない、“香りのいいご飯”です。

特におすすめの品番は、JPL-S100。どっしりとしたフォルムで、やや嵩張る大きさですが、それが気にならないぐらいの満足感。粒立ちの良さも際立っていて、本当においしいです…。70種類以上の炊き分け機能や、少量のご飯でもおいしく炊けるモードなどもあり、機能面でも文句なし。数々の家電賞も受賞しており、まさに名器と言える炊飯器です」

象印マホービン 圧力IH炊飯ジャー 炎舞炊き

画像提供:神原サリー

「炎舞炊きシリーズは、本体の炊飯方法にこだわった作り。かまどでご飯を炊く場合、火力は常に一定ではなく炎にゆらぎが発生するものですが、その“かまどの炎”を再現した独特の炊き方を実現。全体を一気に強く加熱するのではなく、部分的な集中加熱を繰り返すことで、むらなく一粒一粒までふっくら炊き上げ、甘みと粒立ちを感じるおいしいご飯に仕上がるのです。また、最近のトレンドであるお米の銘柄炊き分けをあえてやっていないところも象印さんならでは。その代わりと言えるのが“我が家炊き”という機能で、毎回の炊飯の感想を入力することで、最大121通りの炊き方から次回の炊き方を自動でチョイス。使えば使うほど、より好みに合うご飯の味に近づいていきます。

特におすすめの品番は、NW-FA10。シリーズで初めて液晶タッチパネルを導入しています。これまでのモデルでは、多機能を使いこなすには何度もボタンを押す必要があり、ちょっと億劫になってしまっていたのですが、このモデルではそこが解消されているので操作性が上がってより炊飯を楽しめるようになりました」

パナソニック スチーム&可変圧力IHジャー炊飯器(おどり炊き)

画像提供:神原サリー

「おどり炊きシリーズは、かまど炊きのおいしさを超えること目指し、釜の中で加圧してから一気に減圧をすることで爆発的な沸騰力を起こす可変圧力と、集中加熱で激しい泡の対流を生み出す大火力が特徴です。一気に沸騰させることで、一粒一粒をむらなくふっくら炊き上げ、粒立ちのいいご飯に仕上がります。また、内釜の素材にもこだわりがあり、ダイヤモンド竈という自社生産品。薄く軽くて扱いやすく、でもしっかりおいしく炊けるという便利さも魅力です。

特におすすめの品番は、SR-VSX101。アプリと連動させることで、その年のお米の出来栄えに合わせて最適な炊き方にアップデートできる出来栄え炊き分け機能がついているんです。お米の銘柄別炊き分け機能は多くのハイクラス炊飯器に付属していますが、お米の出来栄えは、毎年の気象条件によって変わるもの。同じ銘柄でも年が変われば同じ炊き方がベストとは限りません。そういった細かい味の違いにも対応できるので、ご飯の味にこだわりたい人にはおすすめです」

三菱電機 本炭釜 紬

「これまでに紹介した3ブランドと比べると少し知名度は劣るものの、実はこれは、私が一番力を入れておすすめしたいくらい気に入っている炊飯器です。

ハイクラス炊飯器の多くが圧力炊きを謳っているのに対して、こちらはあえて圧力をかけていないことが特徴。一粒一粒シャッキリとして、噛み締めるほどにうまみを感じるご飯本来の味わいを追求。必要以上に加圧はせず、でもしっかりと炊き上げる大火力の急速連続沸騰を実現しました。『ご飯は固めが好き』という人には一押しの炊飯器です。

実は、最近のトレンドになっている炊き分けを最初に始めたのは三菱なんです。それだけに炊き分けにはこだわりがあり、全国のお米50銘柄の炊き分け機能に加え、料理や好みに合わせた15通りの食感炊き分け機能も搭載。お米の個性を楽しみながら、それぞれにあったおいしさを楽しめます」

見た目にもこだわる人に「おしゃれ炊飯器」2選

象印マホービン STAN. IH炊飯ジャー NW-SA10

「象印のSTAN.シリーズは、外部からデザイナーを招き、主に30代などの若干若めの世代をターゲットとして作られているもので、炊飯器だけでなく他の調理家電もこのシリーズから出ています。丸みが少なく、スタイリッシュでシンプルなデザインは、キッチンにも自然と馴染みます。いわゆるミドルクラスの炊飯器ですが、内釜の厚さ、蒸気口の大きさという前述のポイントをしっかり押さえており、お値段以上のおいしさもしっかり担保。ターゲット世代の子育てを応援する離乳食モードなどもあり、ハマる人にはバッチリハマる炊飯器だと思います」

エーステージ 電気圧力鍋 リデポット

画像提供:神原サリー

「こちらは厳密には炊飯器ではなく電気圧力鍋なので別の商品ジャンルではあるのですが、個人的にご飯専用として使いたいぐらいおすすめなので、ご紹介させてください。
いわゆるロークラスの価格帯にも関わらず、びっくりするぐらいおいしいつやつやご飯が炊けるんです。しかも、なんと洗米してから炊き上がりまで、たったの25分!

普通の炊飯器でも早炊きは平均30分かかり、さらにおいしさも落ちることを考えると、これは本当に驚きです。その秘密は、電気圧力鍋だからこその高温調理と高圧力。高温で一気に炊き上げることで、粒立ちご飯がムラなく仕上がり、高圧での吸水・蒸らしにより、短時間でもふっくらおいしくなるんです。

スッキリとしたビジュアルでカラーバリエーションも5種類と豊富。炊飯器とは思えないデザイン性の高さは、他の炊飯器では手に入らない価値があります」

ひと味違うご飯を食べたい人に「技アリ炊飯器」2選

シロカ かまどさん電気

画像提供:神原サリー

「見た目からして従来のものとは違うこの炊飯器は、累計80万台以上も売れている炊飯土鍋の最高峰、伊賀焼窯元・長谷園の『かまどさん』を、そのまま電気で炊けるようにした画期的な商品です。自然なかまど炊きを再現するために圧力はかけず、はじめちょろちょろ中ぱっぱという理想的な温度推移を実現。土鍋を炊飯器にセットしてボタンを押すだけで、一粒一粒が口の中でほろっと溶ける土鍋炊きご飯が味わえるのはとっても贅沢。シンプルな作りながら、玄米や雑穀米の炊き分けがあったり、おこげやおかゆモードがあったりと、炊飯器としての基本的な機能はしっかりついています。ご飯が炊き上がったら、土鍋をおひつとしてそのまま食卓に出すこともできるのも魅力的ですね」

レコルト ヘルシーライスクッカー

画像提供:神原サリー

「ヘルシー思考の人におすすめしたいのは、糖質を抑えたご飯が炊けるメニューを搭載しているこちらの炊飯器。糖質を含んだ水分を上部の受け皿と下部のザル釜でキャッチする糖質洗い炊きという独自の構造で、いつも食べているお米で糖質最大約1/3カットを実現。糖質を抑えたご飯はあまりおいしくないイメージがありますが、これは普通のご飯と遜色ないほどおいしく炊けるので、毎日食べることが全く苦にならないはず。糖質カットモードで炊くときは、1.5合炊きになるので、サブ炊飯器として持つのがおすすめ。子どものご飯はいつもの炊飯器で栄養たっぷり、大人はこの炊飯器で糖質カットしてヘルシーに、なんて食べ方ができますね」

お手頃価格で買いたい人に「コスパ抜群炊飯器」2選

アイリスオーヤマ IHジャー炊飯 RC-ILシリーズ

1万円台というロークラスながら評価できる実力を持っているのがこちらの炊飯器。さすがコスパ優秀なアイリスオーヤマといった感じで、内釜の厚さ、蒸気口の大きさという前述のポイントをしっかり押さえています。また、低糖質、麦飯、雑穀米、玄米などが炊けるヘルシーメニュー機能や、50銘柄の炊き分け機能なども搭載されており、この価格安すぎるんじゃない!?と心配になる程です。

世界3大デザイン賞の一つであるreddot design awardを受賞しており、スタイリッシュなデザインは見た目にもこだわりたい人にもおすすめ。カラーバリエーションには、炊飯器には珍しいグレーがあり、マットで落ち着いたくすみカラーも人気です」

日立 ふっくら御膳

「ふっくら御膳シリーズは、外はシャッキリ、中はふっくらの外硬内軟の炊き上がりを実現する極上ひとつ粒炊きが最大の特徴。圧力とスチームで一粒一粒を丁寧に炊き上げることで、しっかり噛める粒の輪郭と甘みが際立つおいしさを実現しています。

特におすすめの品番は、RZ-V100FM。こちらはふっくら御膳シリーズの最上位モデルではなくミドルクラスの価格帯。値段がとても安いというわけではないのですが、他社のハイクラス炊飯器に並ぶくらいのご飯を炊き上げることができるので、おいしさに比較してのコスパは非常に良いと言えます。他メーカーの同価格帯では実現できない味わいですね」

【まとめ】炊飯器にこだわるだけで、毎日の食卓がぐっと格上げされる

日本の食卓には欠かせない家電である炊飯器。少しこだわって選ぶだけでぐっとおいしくなり、毎日のご飯がもっと楽しみになりそうです。神原サリーさん直伝の炊飯器の選び方やおすすめ炊飯器を参考にして、ぜひ自分に合ったものを選んでみてくださいね。

神原サリー(かみはら・さりー)家電ライフスタイルプロデューサー

米飯管理技能士。出版社、新聞社勤務を経て、フリーランスライターとして独立。家電業界専門誌「IT&家電ビジネス」に『女性視点の売り場づくり』を2年間 にわたり連載後、日経トレンディネットの立ち上げ時から、家電コンシェルジュとして生活家電分野の記事を執筆開始。その後、「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」べく、家電分野を中心に執筆や商品企画、コンサルティングなどで幅広く活躍している。広尾に事務所兼「家電アトリエ」をスタジオとしても運用。家電を「感動ベース」で語れる担い手として、その独自の視点にメーカーの開発者やマーケティング担当者のファンも多い。- YouTube【https://www.youtube.com/channel/UCq2Fs-f5-40MM6Zpe4C5oOg

55 件

WRITTEN BY

メルカリマガジン編集部

誰かの「好き」が、ほかの誰かの「好き」を応援するようなメディアになりたいです。

RELATED TAGS

好きなものと生きていく

メルカリマガジンは、「好きなものと生きていく」をテーマにしたライフスタイルマガジンです。いろいろな方の愛用品や好きなものを通して、人生の楽しみ方や生き方の多様性を紹介できればと思います。