家事にかける時間を減らしたい
会社から帰宅したら、もう遅い時間。
ご飯を作って、シャワーを浴びて、ひと一息ついたら24時を超えており、汚れたお皿や洗濯物がいつの間にか溜まっている……とにかく、「家事に割く時間」がない。
多忙な現代人は、なんとかして家事に割く時間を減らしてくれるソリューションを探すしかないのです。
というワケで、毎日の家事をもっと効率的にできる「時短家電」製品に精通している、家電評論家・藤山哲人さんにお話を伺うことにいたしました。
(執筆/ちみを、編集/メルカリマガジン編集部、撮影/沼田学)
筋金入りの「家電マニア」なんです
藤山哲人
ふじやま・てつと。1967年生まれ。『家電Watch』『DIME』など多数の媒体で執筆。あらゆる家電を自分で実際に使い込み、分解して機能を調査・比較する技術系家電ライター。最近は「家電おじさん」「体当たり家電ライター」の異名でテレビなどでの解説も大人気。
「ほったらかしグルメ家電」など、登場した回で「体当たり家電ライター」として好評を博し、すでに番組最多7回もの出演経験を重ねている話題の家電評論家/家電ライターさんなのです。
藤山さんは、子供のころから大のメカ好きで、気になった家電製品はご自身で分解してスペックを調べたり、ハードそのものの開発も手がけたりするなど、筋金入りの「家電マニア」だそうですね。
40数年前から秋葉原に通ってたんです。小学生のころ、ラジオを作るために電子部品を買いに行ったことにはじまり中学生ではパソコンの通信ソフトなんかを自作したりしていました。そのうちにアニメにハマる年頃になって、同時に秋葉原もアニメの街になっていき……ますますアキバに入り浸るようになりました(笑)。
秋葉原の成長とともに歩んだ、いわゆる「オタク第1世代」ですね。
社会人になってからはゲームメーカーや出版社で仕事をしていました。もともとハードウェアにもソフトウェアにも知識があったことから、あるメーカーさんの製品マニュアルを作るようになったんですね。それがすごく楽しくて。
表面的な製品情報だけではない、「これはどうしてそうなるのか?」を伝えるマニュアルづくりが自分に向いていたんだと思います。
そんなこんなで、メーカーにもらった試作品を自分で分解してみたり、エンジニアに「こういうことであってる?」なんて確認を取りながらいろいろなマニュアルを書いたりしていました。ドリームキャスト(※セガの家庭用ゲーム機)の開発者用マニュアルなんかも作ってましたね。
そのお仕事が現在の「家電評論家」という肩書きにつながってくるんですね。
家電評論は『家電Watch』という媒体に「書ける人がいないので手伝ってほしい」と言われて始めたんです。それがきっかけで冷蔵庫に温度センサーを設置して、本当に均等に冷えているかを検証してみたり、お米の歯ごたえがオシログラフでわかる「お米歯ごたえ測定器」を自作して炊飯器の記事を書いてみたり。その仕事を1〜2年くらい続けていたたら、でマツコさんの番組に呼ばれて……。今に至ります。
そんな藤山さんに、本日はご自宅で実際に愛用されている「時短家電」をご紹介していただきたいと思います。
よろしくお願いします。今日はいつも本当に使っているモノを自宅からクルマでここまで運んできましたよ。
掃除しきれない場所まで教えてくれるお掃除ロボット
まずは時短家電の代名詞といえばロボット掃除機です。このロボット掃除機「 RULO」は日本の家庭のフローリングを意識して作られていて、ブラシ素材が複数使われているのが特徴です。ほら、ここをちょっと見てください。
「RULO」には日本のご家庭向けに開発された3種類のブラシがついているんです。
①硬いブラシでカーペットの奥のゴミを掻き出す、②それを中間のブラシで集めて吸い込む、③さらに細かいホコリなどは柔らかいブラシで拭き取るように掃除する……この「ブラシ3銃士たち」が地道に頑張ってくれるんですね。
さらに花粉や細かいホコリが気になる日本のご家庭では、アメリカ生まれのものよりも国産のロボット掃除機がいいのではないでしょうか。
私も花粉症気味なので助かります。
あと、この機種はレーダーで部屋の間取りを自動で記憶・作図して、どこが汚れていたか、掃除できなかったところはどこかなどを間取りマップ上にマーキングして、スマホ経由で知らせてくれるんですね。
うわ、賢い。まさにロボットですね。
なので、ロボット掃除機が届かない場所はマーキングされた箇所を参考に自分で拭いたりすればいい。部屋の中には、どうしてもロボット掃除機では綺麗にしきれない部分が出てきてしまいますが、これならその場所を教えてくれる。自分で掃除しなくちゃいけないところが「ここだけでいいよ」とわかるのも、時短効果につながりますよね。
うーむ、ロボット掃除機はそこまで進化を遂げているのか……。
花粉が気になる人は床拭き型のロボット掃除機を
次もお掃除ロボットです。今度は吸引型のロボット掃除機じゃなくて、床拭きタイプのお掃除ロボット。この季節、花粉が気になる方にはやはり床拭き型じゃないでしょうか。……ほら、ここから水がシャっと出て、水拭きしてくれるんです。
あ、ホントだ! 水が吹き出てきた! なんかカワイイですね。
床を拭くクリーニングパッドに洗剤がしみ込んでおり、さらにこの部分がバイブレーターで細かく振動しながら拭き掃除してくれるので、人間が手で掃除するよりもキレイになるんです。
未来だー。
それと、クリーニングパッドが3種類あって、装着するパッドによって自動でモードが変わるんです。この青いパッドは「同じ場所を念入りに3回拭くモード」、オレンジのパッドは「同じ場所を2度拭きするモード」。あと白いパッドもあるんですが、それに交換するとお掃除ワイパーみたいな感じでホコリや毛をザっと拭き取ってくれる「乾拭きモード」になります。
ルンバみたいな吸引型掃除機には掃除できない油跳ねや食べこぼしなんかもキレイに拭いてくれますし、20帖くらいは余裕で掃除してくれます。値段も比較的安いですし、男性のひとり暮らしでしたら吸引型のロボット掃除機を買わずにブラーバだけで十分だと思います。
コンパクトで部屋中どこでも拭き取ってくれそうな筐体(きょうたい)も、よく考えられた設計ですね。
メンテナンスも水を入れてパッドを取り換えるだけ、と簡単なので、時短になると思います。また進入禁止エリアをスマホから制御できるので「キッチンだけを集中的に拭き掃除させる」といった使い方もできます。ちなみに「部屋のどこを掃除するか」を探索するアルゴリズムは、ルンバの最上位機種と遜色ありません。
たしかに水拭きってスッキリするんですけど、すごく面倒なんですよね……ウチ、よく揚げものをするからキッチンの床掃除をしてくれるこの子はすごく欲しくなりました。
はい。コイツも非常にスグレモノだと思います。まさに時短家電そのものです。
キューティクルに水分をバンバン打ち込んでくれる時短ドライヤー
お次は、特に朝シャン派にオススメの時短家電です。私も日常使いしていますが、主にウチの3人の娘たちが愛用してますね。実は私の仕事柄、ウチには商品解説のためにメーカーさんが提供してくれたドライヤーが山ほど……それこそ何十本もあるんです。でも結局、娘たちは3人ともこれしか使ってません。
それはまたどうして……?
これ、「ナノイーデバイス」ってのを搭載しているドライヤーなんです。空気中の水分から生み出される、帯電微粒子水っていう細かい水の粒子をキューティクルにバンバン打ち込んで、髪にしっとりとしたうるおいを与えてくれる、というシロモノ。
だから、とてもよく髪がまとまります。打ち込む微粒子水は空気中の水分を結露させて集めたもので、ドライヤーへの給水も不要です。つまり、ドライヤーでありながら、使うとトリートメントしたような仕上がりになるという。
最近のドライヤーって、そんな進化を遂げているんですか。
ナノイーデバイスを商品化するためには極小のチタン合金をうまく加工する技術が必要で、その部品はメガネの生産で有名な福井県鯖江市の工場で作られているんです。日本の技術力が存分に活かされているドライヤーですね。
それと、時短という観点からもいい。風量が多いドライヤーなので、乾くのがとても速いんです。
髪が速く乾くのは、確実に時短になりますね。
ドライヤーだけで、しっとりまとまりのある髪に仕上がります(キッパリ)。洗髪時にトリートメントやらコンディショナーやらを使うと大変だと思いますが、これならシリコン系のトリートメントなどを使わなくても、シャンプーの後にこのドライヤーで乾かしていただくだけで十分ではないでしょうか。櫛を通さなくても手櫛でヘアセットできますし。洗髪の手間も減って時短なうえ節約にもなりますね。
藤山さんの話を聞いていると本当に欲しくなってしまいますが、藤山さん、パナソニックのまわし者じゃないですよね?
まったく違いますよ!(笑)。私も含めて、いまウチの家族は本当にこれしか使っていません。
毎朝の洗髪とかドライヤーって、地味に時間を取られるんですよね。これはありがたいかも。
「女の子の気持ち」がよくわかっている家電
うーんと、これは……どこが時短ポイントなのでしょう?
特に女性にオススメの時短家電ですね。これもウチの娘たちが愛用しています。ひとことでいうと、「ブラシ型のヘアアイロン」ですね。
ヘアアイロンって、コテみたいになっているものが一般的ですよね。
いわゆるヘアアイロンと違って、髪にあたるブラシ部分から熱が発生するタイプなんですよ。乾かしながらカールを作れるので、ドライヤーよりも断然速く乾いて、スタイリングも一発でキマりやすいとネットの口コミでもかなり評判です。
ウチの娘たちも寝グセをさっとストレートにしてくれるからと毎朝使ってますね。あと、温度が調整できるからカール具合の調整をナチュラルにできるのもいい。
藤山さんの寝グセも、ものの数分で直してくれそうですね。
それと、ブラシの温度が一瞬で上昇してくれるんです。「忙しい朝、すぐに使える」という点は時短ポイントが高いですね。ちなみにコードと本体の接続部分が回転するので、グルグルとコードが絡まないところも良くできています。ほら、この部分が回るでしょ?
メーカーさんの細かい気遣いを感じますね。
実はサロニアは家電メーカーというよりもシャンプーやヘアケア製品などを作っている美容雑貨のブランド。まさに「女の子の気持ちがよくわかっている家電」なのではないでしょうか。
女性にプレゼントしたら喜ばれそうな家電ですね。
メモ書きはキーボードよりも手書きの方が時短になる
続いては、お仕事を効率化して時短するための家電製品。これ、文字データにはならないんですが、直接ペンでガンガン書けるタイプの電子ノートなんです。私は仕事柄、よく回路や図面をメモするんですが、他の製品だとちょっと画面が小さくて。
これがサイズ的にメモ帳としてちょうどいいんですよね。もちろんノートパソコンやタブレッド型パソコンより手軽なのもいい。本当に愛用しています。
紙のメモだと間違ったら消しゴムかけなきゃならないでしょ。でもこれならアンドゥ(※)で書いたことをすぐに修正できるので断然時短になります。データも簡単にパソコンへ送れますしね。
手帳感覚で使いつつ、デジタル画像としてパソコンにすぐ送れるのはいいですね。
あとこれ、kindleでも使われている「Eink」っていうディスプレイだから、目も疲れないしすごく見やすいんですよね。それと、バッテリーも1ヵ月くらい持つ。取材の時や移動中のメモなんかにもピッタリ。普通にガンガン使ってますね。
たしかに、キーボードよりも手書きでガシガシ書いたほうが早いときってありますよね。家事の時短というよりお仕事の時短・効率化に良さそう。
弁当箱タイプのポータブル炊飯器
あと、これも面白いですよ。ありそうでなかった商品です。お水とご飯をお家で入れて、そのまま学校や会社に持っていける「弁当箱タイプのポータブル炊飯器」ですね。100Vのケーブルがついていて、会社の机で1合分のご飯が炊けてしまうという。蒸らしを入れても炊飯時間が20分くらいと、非常に高速で炊きあがります。
藤山さん、お弁当を食べる姿がナチュラルすぎますね。
最近はコンビニのオカズが充実しているので、焼き魚とかを買ってきてこの弁当箱にのせたら、炊き立てご飯ランチの即完成ですよ。これでもう、最高のランチタイムは間違いないです!!!!
うん、たしかにこれはいいですね! 弁当箱として使わなくても、ちょっとだけご飯を炊きたいときにも重宝しそう。
ひとり暮らしなら自宅用としても使えますよね。コンパクトで場所は取らないし、20分ですぐに炊き上がるのも忙しい現代人には便利でしょう。それと気が利いているのが、丸洗いが可能という点。「あと片づけがラク」というのも、とうぜん時短効果につながりますしね。
毎日自炊するのが面倒だったんですが、これならだけそういうハードルもぐっと下がりますね。
時短効果だけじゃない!「高速トースター」の凄さとは
お次はご飯でなくパン派の皆さんにオススメな逸品です。アラジンはもともと石油ストーブや石油ファンヒーターなどを作ってきたメーカー。だから、熱を扱う製品づくりには定評のある会社なんです。で、このトースターは食パンがいちどに4枚も、しかもたったの2分で焼きあがります。
デザインもカッコイイ調理家電ですね。
通常のトースターは使用している電熱線がニクロム線なので、熱がオーブン内の360度全てに回ってしまいます。でも、アラジンのこのトースターは宇宙船の断熱材にも使われている「ポリイミド」という素材を使ったシート状の独自の電熱線を使用しているんです。これにより熱エネルギーが上と下だけに集中して届くので、効率よく食材に熱が伝わります。
びっくりするくらいあっと言う間にトーストが焼きあがりました。
なんと0.2秒で1300度以上になるんです。高温で一気に焼きあがるので、絶妙な「外カリ、中モチ」触感に仕上がるんですよ。分厚い食パンだとさらに美味しいですね。焼きが浅いのがお好みなら、1分程度のトーストでも美味しく食べられます。
たしかに「外カリ、中モチ」です。あんなに高速で焼けるのに、すごく美味しい。
パンのカリモチ食感が好きならこのトースターがいいでしょうね。グリルパンがついているので、ウチではハンバーグやグラタンなんかを焼くのにもよく使っています。
焼き時間がたったの2分というのは文字どおりの時短家電です。バタバタと忙しく、つい省略しがちな朝食もこれなら毎日作れるかも。
「今夜のメニューを考える時間」すら削減してくれる
最後は超ハイテク調理機です。いわゆる自動調理鍋なんですが、これはなんと鍋の内側に「かき混ぜモジュール」がついていて、勝手に具材を混ぜ混ぜしてくれるんです。
この製品名、たぶん「放っておく」と「ホットク」をかけてますよね。
まさに、料理の手間と時間そのものを大幅に省ける時短家電です。おでんやカレー、煮ものはもちろん、温泉卵や炒めもの、チャーハンなんかも材料をざざっと入れてスイッチオン。あとは全自動で放っておくだけなので、調理中に別の作業ができますね。
これがすごいのが、「材料を入れるだけ」どころか、なんと今夜のメニュー自体を提案してくれてるところ。インターネットにこの調理鍋をつなぐと、クラウドに集積されたデータからどんどん新しいメニューを提案してくれるんです。
さらに、カットされた野菜やお肉のセットをネット経由でお取り寄せできる宅配サービスとも連携していて、食材まで注文可能。あとは鍋に材料を入れてスイッチオンするだけという、まさに未来のIoT調理機です!(ドヤ顔)
あ、調理鍋がしゃべった。「もうすぐできますよ〜」だって。
いわゆるスマートスピーカー的な「会話できる家電」の調理器具版ですね。人工知能によってオーナーの好みを学習して、「今夜はビーフシチューはいかがですか?」みたいに季節に合わせて料理メニューを提案してくれます。つまり、買いものに行く時間どころか「今夜のメニューを考える時間」すら省けてしまうという。
う〜ん、すごい。ここまでくると、本当に「未来は今」なんだなと感じます。自動調理ならスロークッカーという選択肢もありそうですが、この鍋はその2歩も3歩も先を行く未来のIoT家電ですね。AIがメニューまで提案してくれるとは。
さあさあ、味見してみましょうか。
藤山さん、メガネ、メガネ!
生活家電はエンジニアの血と汗と努力とデータの結晶
ちょっと言いづらいかもしれませんが、藤山さんの好きな家電メーカーはどちらですか。
…………うーん(本気で悩む様子)。最近好きなメーカーってことで言うと、パナソニックさんかな。パナさんのカラーをひと言でいうと「一点突破」。必ず商品ごとに何かわかりやすい特徴を入れてくるから、選びやすいんですよ。つまり、私のようなライターにとっては「書きやすい商品」を出してくれる。だから好きですね(笑)。
藤山さんにとって、生活家電の魅力とは?
生活家電って、エンジニアの血と汗と努力とデータの結晶なんです。正直、デジタル家電は部品を買ってきて組み立てたら、どこの国で誰が作っても同じようなものが出来上がると言ってもおかしくないんですよ。でも、例えば洗濯機みたいな生活家電を、各メーカーで比較すると、「汚れの落ち方」が全然違う。
泥汚れに強いのもあれば、油汚れに強いものもあって、それぞれさまざまな特色があって……。家電の先に、エンジニアの顔が見えるんです。研究開発への力の入れ方だったり、利益中心なのか、お客さん本位なのか。そういったところまで伺えるのが面白いですね。
・・・
そして、その深い「家電愛」に満ちたレビューの数々に、スタッフ全員も物欲を刺激されっぱなしの取材時間となりました。
さてさて、私も個人的にどの家電を導入しようか迷っていましたが、まずは今にも壊れそうなドライヤーの買い替えから検討してみようかと思います。