今回は、サウナが好きすぎるあまりサウナ施設で働いたこともある芸人のマグ万平さん(以下、万平さん)に、ビギナー向けのおすすめのアイテムを聞いてみました。年間300回サウナに通い、いまや自宅の押し入れはサウナグッズで埋め尽くされている、万平さんが選ぶアイテムとは?
(取材・執筆:小野洋平、撮影:小野奈那子、編集:メルカリマガジン編集部/ノオト)
撮影協力:サウナセンター
※ととのう:①サウナ、②水風呂、③休憩のルーティンを繰り返すことで心や体が調和される状態のこと。プロサウナー・濡れ頭巾ちゃん氏が言い始め、2012年あたりからサウナ好きの間で使われるようになった。水風呂の入浴直後やあがった後に強い幸福感や恍惚感が訪れる瞬間を指す場合もある。
キンキンに滑ったライブ終わり、はじめて“ととのった”
万平 温泉大国の九州出身で、子どものころから家族で温泉によく行っていたこともあって、上京後も自然と銭湯に足を運ぶようになっていました。お酒が飲めない分、ストレスを発散できる場所が銭湯しかなかったんですよ。
――確かに、子どもからすると異様な光景かも。
万平 でも、サウナってどこにでもあるじゃないですか? だから、一定数のニーズはあるんだろうなって思っていました。
また、高校時代からファンだったマンガ家のタナカカツキさんが2011年に『サ道』(※)を出されて、「これはもしかしたら、なにかあるのかも」って。
※サ道:マンガ家のタナカカツキ氏が、近所のスポーツジムでたまたまサウナの魅力に気づき、どうしたらよりサウナを楽しめるのか追求する日々を、文章とイラスト、マンガで綴った書籍。2011年パルコ出版より発売後、サウナブームの火付け役となり、2015年よりマンガ版が連載開始、2019年にドラマ化された。
――気になってはいたと。
万平 直接的にハマったきっかけは、とあるライブ終わりのサウナでした。
その日、新ネタをライブに持っていったのですが、会場がキンキンになるほどに滑ったんですよね。夜の海くらい静かでした。もう心がボロボロになって銭湯に行ったその晩、誘われるようにサウナの扉を開いていましたよ。
そこで『サ道』に書かれていた「サウナ、水風呂、外気浴を3セット繰り返す」という入り方を思い出したんです。「なるほど、水風呂こそ本番なのかと」。その言葉を信じて試してみたら、2セット目で無事にととのうことができましたね。
――万平さんの「ととのう」は、どんな感覚だったのでしょうか?
万平 いま、思い出しても不思議な体験でした。いつもなら男湯のシャワーの音や会話が聞こえるはずなのに、そのときは、女湯のカランの音まで聞き取れたんです。
「おや?」と思った瞬間に視界がグニャ~と回り始めて。「あの時のおじさんたちは、これをやっていたんか~」と気づきました。
万平 はい。反動から、数え切れないほどの銭湯やサウナ施設を巡るようになりました。施設によってサウナの温度が違ったり、水風呂が天然水だったりと、さまざまな特徴があることもわかってきて、どっぷりとハマっていきましたね。
のぼせず、個性も出せる サウナハットの世界
万平 サウナハットは「のぼせ」を防止してくれます。
サウナ室内は天井に近いほど高温になっているので身体よりも頭のほうが熱くなりやすく、特にサウナに入りはじめのころって、すぐにのぼせる方が多いんですよ。すると、身体の芯が充分に温まっていない状態でサウナ室を出て水風呂に入るため、寒いと感じてしまうんです。だから水風呂を苦手と感じる初心者の方が多いのではないかと。
ですがサウナハットをかぶると頭部が熱から守られてのぼせにくくなり、しっかり身体を温めて水風呂に入ることができます。
万平 サウナハットだけでも20個くらい持っているので、一つひとつ説明していたら夜になっちゃいそうです(笑)。
まず、僕が最初に購入したのは、このフェルト生地のサウナハット。
それからいろんなものを試して、いまメインで被っているのが、友人がつくってくれたこちらです。僕のなかでは三代目のサウナハットですね。ウール素材は肌触りも機能性もよく、見た目も気に入っています。
万平 フェルト生地は縫い目がなく、手でウールを圧縮してつくっているんですよ。目が細かいため断熱性が高く、柄の自由度も高いのが特徴です。
お手入れや洗濯は大変かもしれませんが、ウール自体に抗菌作用があるので臭いはあまり気になりませんよ。
万平 大ヒットした「OVERRIDE(オーバーライド)」さんのサウナハットはおすすめです。帽子屋が本気を出してつくったアイテムで、洗濯機にそのまま入れて洗えます。
ウール地やタオル地はありましたが、こういった素材のサウナハットは初めてでしたね。
万平 サウナイベントに行くとさまざまなサウナハットを被っている方がいるので楽しいですよ。
サウナハットは自分の個性を出せる、数少ないグッズの1つ。いろんなタイプのものを買って、気分や施設によって使い分けるのも面白いと思います。サウナにハマった方にプレゼントするのもオススメですね。
コンパクトに畳めるサウナマット 仏具店によるサウナ座布団も
万平 サウナ施設の場合はサウナマットが置いてあるところも多いですが、銭湯だと基本は持参することになります。衛生面だけでなく、お尻が熱すぎて座れないときにも重宝します。
最近は多くのサウナ施設でオリジナルのサウナマットが販売されているので、ぜひ自身のホームサウナでチェックしてみてください。
万平 あと、サウナ専用の座布団「ZAF(ザフ)」も素晴らしいです。石川県にある仏具専門店の社長さんがサウナにハマってつくった商品です。サウナで座禅が組めるんですよ。
万平 サウナってずっと座っているから腰が痛くなるじゃないですか? 姿勢が悪くなると呼吸が上手にできず、しっかりと体が温まらないんですよ。
ザフを使えば背筋が伸びて気持ちいいんですよね。
――(使ってみて)本当だ、すごく背筋が伸びる感じがします。
万平 長く座っていても疲れを感じにくくて。洗濯機で洗えますし、抗菌素材を使用していてニオイも付きづらい。もはや家で仕事するときなどサウナ以外でも使っています。
北欧で工場見学まで行った 香りの魔術師によるサウナオイル
――サウナでオイル。どう使うのでしょう。
以前、僕はサウナ施設で「熱波師」(※)をやっていたのですが、ロウリュのときに使っていたサウナオイルはケミカル臭がすごく、いちごとか桃の甘い香りばかりで個人的には苦手でした。
しかもサウナ専用のものではなかったため、原液から漂う香りと、熱々の石にかけたときの香りでは全然違ったんです。
※熱波師:ロウリュであがった蒸気を大型タオルやうちわで仰ぎ、入浴者に熱風を浴びせる「アウフグース」を行うスタッフのこと。アロマ水の調合、石へのかけ方、仰ぎ方など奥が深く、熱波師の検定や甲子園まで存在する。
アウフグースを体験したことない方へ。
— マグ万平 (@magmanpei) July 8, 2019
全国のサウナ室でタオル振らせて頂いてます。
未体験の気持ち良さを味わって欲しい〜!
施設やテントサウナイベントなど
心地よ〜い風、お届けします。
お声がけお待ちしております🤤#アウフグース#熱波 #熱波師 #ロウリュ pic.twitter.com/A6GWzcSAnO
万平さんは熱波師としてさまざまなイベントでアウフグースをしてきた
万平 そうですね。特にフィンランドのサウナ・スパブランド「Osmia(オスミア)」のサウナオイルを嗅いだときは衝撃的でした。白樺の素晴らしい香りで、パカーンと新しい扉が開かれたようでした。
――新しい扉……。
万平 より自然な香りがするし、熱々の石にかける前提でつくられているため、熱を加えても香りが変わらないんです。ちなみにオスミアの社長さんは元調香師で、50種類以上の香料を操れる、いわば「香りの魔術師」なんですよ。
数年前は薬事法とかで輸入のハードルが高く、日本での取り扱いがなかったので、フィンランドに行った際に本社まで行って手に入れました。アポもとらずに「工場を見せてくれ!」「これを日本に広めたい!」と押しかけたので、変な日本人が来たと思ったんじゃないですかね(笑)。
――すごい行動力!!
サウナオイルメーカー「OSMIA」のオフィス兼お店に行ってきました!
— マグ万平 (@magmanpei) March 17, 2019
工場見学もさせてもらい、50種類以上の香りを調合して完成をイメージしながら作るそうです。
すごい!まさに調香師。
香りのセンスがほんと良くて、「ケロの香り」とかやばかった🧖♂️
日本にも買えるとこもっと増えたらいいなぁ。 pic.twitter.com/yIcPU8B5jq
万平さんがオスミアの工場見学へ行ったときのツイート
以来、サウナに行けないときはオスミアのオイルをマスクに垂らし、サウナ気分を味わっています。ずっと白樺の香りを嗅げるので“無限サウナ”と名付けました。
万平 テントサウナ(※)を持っている方なら、サウナオイルも愛用しているんじゃないかと。なお、アロマでもあるので、自宅の加湿器に数滴垂らせばロウリュのような体験が味わえます。
※テントサウナ:野外でもサウナを楽しむための耐熱性テント。室内に薪ストーブを設置し、熱したサウナストーンにロウリュし、体を熱した後に川や湖、プールなどに入る。
若枝の香りでよりととのう 北海道から届く新鮮なウィスク
万平 「ヴィヒタ(白樺)」とその若枝を束ねたほうき状の道具です。サウナ室内で身体を叩いたり、扇いだりして使用し、これを「ウィスキング」と呼びます。
イケメン蒸し男こと、磯村勇斗くんにもウィスキング!
— マグ万平 (@magmanpei) September 22, 2019
ヴィヒタに包まれたイケメン蒸し男がさらにイケメンに🧖🏻♂️
フォロワーのみなさんには、蒸し男くんのととのい顔の代わりに僕のととのい顔をプレゼント🎁#SAUNAFESJAPAN #サ道 pic.twitter.com/GSXOJNCYLZ
イベントでウィスキングをする万平さん
――どんな効果があるんですか?
万平 ヴィヒタの良い香りがバーッと広がって、サウナ体験がより気持ちよくなるんです。葉っぱが持つ抗菌作用で肌の調子が整うとも言われています。白樺が国樹のフィンランドでは4、5月の新鮮な若枝を収穫して使うのが一般的とされていますね。
日本ではこれまで海外から輸入した乾燥したウィスク(ドライウィスク)しか出回っていなかったんです。それが、サウナブームを受けて国内でも生のヴィヒタを使ったウィスクが作られるようになっています。ヴィヒタが自生する北海道で農園を運営しているサウナ好きの方が、縛り方から勉強し、「Moi vihta(モイヴィヒタ)」という会社まで立ち上げて生産を始めました。
――おかげで、日本でも本場のウィスキングが楽しめるようになったと。
万平 そうなんです。今まではドライウィスクを水で戻し、柔らかくしてから使っていました。
でもモイヴィヒタさんのおかげで、毎年5月~6月には生のウィスクが手元に届くようになったんです。新鮮なウィスクは本当に柔らかく、香りの立ち方が全然違いますよ。
ただ、施設には持ち込み厳禁なので、ウィスキングを認めている施設か、テントサウナで試してください。
壁に飾っていたのですが、サウナ好きじゃない人からしたら、ただの枯葉なんですよね。大切な思い出だったのに。
――それは残念……。壁に飾るだけでも香りはするんですか?
万平 すごく香ります。時間が経つにつれて薄れていきますが、時々スプレーをしてあげれば香りが戻ってきますよ。あとは、梅雨の時期や湿度の高い日になると、香りがものすごくたつので、部屋のフレグランスとしてもオススメです。
サウナーの心くすぐる 名サウナ施設の館内着
――完全に上級者向けですがめちゃくちゃ面白い。
万平 そもそも、館内着って肌触りが気持ちいいじゃないですか? 何とも言えない安心感とか心地よさがあるんですよ。
濡れ頭巾ちゃん(※)という友人がいるんですが、サウナ施設に行って館内着に着替えた時点でととのって、そのまま帰ったことがあるそうです。「わかる!」って思っちゃった。
※濡れ頭巾ちゃん:サウナ愛好家。独自の目線で全国のサウナ施設を検証するブログ「湯守日記」の運営者であり、「ととのう」の言葉の生みの親でもある。
――僕には全くわからない境地です(笑)。お気に入りの館内着を教えてください。
万平 長崎県の佐世保市にある「サウナサン」の館内着ですね。非売品なんですが、支配人に頼みこんで売ってもらいました。貴重な館内着なので普段は大切に保管しておき、お正月などの特別なときだけ着ています(笑)。
万平 そうですね、眺めているだけで思い出が蘇りますし、さまざまなサウナ施設の館内着をコレクションをするのも楽しいです。
他にも、横須賀にあったサウナ「トーホー」の館内着。閉店の際に支配人からいただきました。めちゃくちゃ可愛くて、僕はサウナ界のティファニーブルーと呼んでいます。本当は全部、額縁に飾りたいくらいですよ。
万平 そう多くはありませんが、限定でオリジナルの館内着を販売する施設はあります。
サウナ施設のグッズって、サウナ好きにはたまらないんですよね。個人的には施設を応援したいという思いも込めてグッズを積極的に買うようにしています。サウナに足を運び、グッズを買うことで、好きな施設が存続する力になりたいです。
館内着のほか、サウナイベントでは外気浴中にバスローブもよく着るとのこと。こちらはフィンランドのメーカー「LAPUAN KANKRIT(ラプアンカンクリ)」の「TERVA bathrobe」。リネン、コットン、テンセルの混合素材で着心地とデザインがお気に入り
僕にとってサウナは歯磨きと同じ
万平 うーーーーん…………。シンプルに「気持ち良い!」こと。それ以上でも以下でもないですね。
サウナに毎日入っている僕にとっては歯磨きと同じようなもので、もはや魅力がどうという感じじゃないんですよ。毎日入らなくても死にはしないんだけど、入らないと気持ち悪いんです。
自分らしく生きていくためにも、サウナは不可欠な存在ですね。
マグ万平さん(芸人)
趣味:サウナ https://twitter.com/magmanpei 1984年8 月7日生まれ、福岡県出身。プロダクション人力舎所属のお笑い芸人。サウナが好きすぎてサウナ施設で働いちゃったり、フィンランドサウナ旅に出かけたり、ロシア人からウィスキングを習得しちゃったり。フィンランドサウナアンバサダー、サウナ・スパ健康アドバイザー。