現代の日本では、1世帯に約70万円相当の隠れ資産(自宅内の不要品の価値総額 ※2018年みんなのかくれ資産調査委員会調べ)が眠っているといい、あまり使ってもらえないモノたちの不満や悲しみが、日々國光さんの耳に届いているという。実は國光さん、生まれつきモノの気持ちが分かったわけではない。どんなきっかけで、なぜこの仕事をはじめたのか? その摩訶不思議な人生の軌跡と、番組にかける想いを聞いた。(撮影/伊澤絵里奈、編集/メルカリマガジン編集部)
※『コレッテイルカナ?』は「ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル」とメルカリ公式youtubeチャンネルのコラボレーションによる、ファンタジーお片付け番組です。
コレッテイルカナ? 〜モノ・コミュニケーター國光悠人〜【メルカリ×ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル特別編 トレイラー】
出典: YouTube
きっかけは「ノリで買ったギター」
メルカリマガジン
國光さんは「お片付け」のプロということですが、必要なモノとそうでないモノを見極めるコツは何ですか?
國光さん
コツ? そんなものないですよ。僕がしているのは化学の力を使って、モノとコミュニケーションを取ること。僕はモノコミュニケーターですから。
メルカリマガジン
モノコミュニケーターって、あまり聞き慣れない職業ですね。そもそもどんなお仕事なんでしょうか?
國光さん
いわゆるモノのエージェントですよね。彼らの気持ちを察知して、人間と交渉するチャンスを提供してあげるというのかな。言いたいことがあるモノたちの代理人として、いま活動させてもらってます。世界でもこの仕事に就いたのは、僕が初めてだと思いますよ。
メルカリマガジン
もともとモノの声が聞こえていたのですか?
國光さん
いやいや、全然。そもそもモノコミュニケーターになったのは、これまで自分自身がモノに悲しい思いをさせて生きてきたからなんです。若いころは買い物をしてもすぐに飽きて、使わないまま捨ててしまうことがしょっちゅうありました。部屋も散らかり放題で......大学を卒業して薬剤師として働きはじめたんですが、ある夜、夢に「昔ノリで買ったギター」が出てきたんですよ。
メルカリマガジン
ギター、ノリで買いがちですよね。
國光さん
若気の至りで買いがちなものBEST1といってもいいでしょう。高校のときにバンドをやりもしないくせに、モテたい一心で買ってしまったんですね。でも、ギターの練習ってきついですよね。最初の1週間で指の腹が痛くなるじゃないですか。「今日は指が痛いから、また明日」なんて思っているうちに、一度もケースから出さないまま7、8年経ってしまったんですね。だけどある日、夢の中にそのギターが出てきたんですよ。いわゆる、夢枕に立つってやつですね。それで、「君の家にもらわれて最悪の人生だったよ」って泣かれてしまったんです。「ギターは弾かれてナンボなんだ。もっと幸せなギターライフが送れたかもしれないのに、君に選ばれたことが僕の“終わりの始まり”だったんだ」って。その晩から次々と、自分が昔粗末にしたモノたちが夢枕に立つようになったんです。
メルカリマガジン
壮絶な体験ですね。
國光さん
うなされました。スケボー、ラジカセ、ニット帽...使わずにタンスの肥やしにしていたモノたちが、一堂に会して僕を責めるんです。おまえはいま幸せかもしれないけど、ぼくらは見捨てられたんだ、部屋の中で使われないまま寿命を終えてしまう気持ちがわかるかい...と。怖いし悲しいし僕も号泣したんですけど、同時に本当に申し訳ないなと夢の中で必死に謝りました。後悔しました。長い間放置されたモノたちの時間を、もう取り戻すことはできないから。でもそのときハッとして、夢にまで出てきたのにはなにか意味があると思ったんです。今からでも間に合う、彼らのためにも何かしなきゃ!という気持ちになった。そこで取り掛かったのが、「モノリンガル」の開発です。
言いたいことも言えないこんな世の中に、メディスン
メルカリマガジン
「モノリンガル」は世界で初めて、人がモノと話せる薬として大ニュースになりました。
國光さん
不幸なモノをなくすにはどうすればいいか必死で考えたとき、「モノの気持が分かる人間を増やすしかない」っていう結論にたどりついたんです。それには会話することが一番の近道。僕は薬剤師だったので、モノと話せる薬を死にものぐるいで研究しました。言いたいことも言えないこんな世の中に、メディスン、という想いでした。でも大変な道のりでしたよ...「モノリンガル」開発には16年かかりましたから。
メルカリマガジン
モノと話せる成分の発見は、どんな風にして起こったんでしょうか?
國光さん
16年やっているうちに、たまたまグルコサミンと青汁を混ぜたらそれに近いものが出来上がったんですね。あともう2種類混ぜないといけないんだけど、それは言えません。「モノリンガル」開発後に自分でも服用して、使わずに捨てようとしていたモノたち全員と語り明かしました。もう一度謝罪をして、夜通しお互いの気持をぶつけ合い、和解できたんです。そうしたら最初に夢に現れた「ノリで買ったギター」に、「こういう機会を全国のくすぶったモノたちにも与えてあげられないか?」って相談されたんです。それがきっかけで、日本全国の「これっているかな?」っていうモノがあるところに伺って、持ちモノと対話をしたほうがいい持ち主にモノリンガルを処方するようになりました。いまはメルカリさんにご協力いただいて、モノと人をつなぐモノコミュニケーターとして活動させてもらってます。
住民票こそないけど、モノも家族
メルカリマガジン
モノと話すことで気づいたことはありますか。
メルカリマガジン
モノにも性格がある。同じ工場で生まれたとしても、やっぱりそれぞれ個性は違うんです。いまでは僕自身、モノリンガルを服用しなくても、このモノたちはこういうことを言いたいんじゃないのかなとか、もしかしたら自分のこの行動を見ているんじゃないかなとか、彼らの感情を感じられるようになりました。新しいモノを買おうかと迷っているときに、部屋の中のモノが嫉妬してくる感じ、そういうのも意識するようになりましたね。最近は定期的にモノと向き合う「お片付け」も実践しています。
メルカリマガジン
國光さんにとってお片付けとは?
國光さん
お片付けは単純にモノを減らすことじゃない。処分とお片付けは違うと思います。住民票こそないですけど、モノも家族ですからね、見えない戸籍で繋がっていますから。買った段階でもう里親なんです。ペットと同じですよね。なので僕にとって片付けるというのは、新しい親探しをしてあげること。モノと対話することでモノの幸せ、リスタートを考えてあげる。家族を捨てるということはない。
誰でも簡単にモノと会話できる裏技
メルカリマガジン
最後にモノコミュニケーターとしてのミッションを教えて下さい。
國光さん
やっぱり、不幸なモノをひとりでもなくすことですよね。新番組「コレッテイルカナ?」を通して、自分の持っているモノへの情や見えない絆に気づいていただけたら嬉しいです。現在「モノリンガル」は僕のカウンセリングがないと処方できないのですが、どうしてもモノと会話がしたい!という方には裏技をご紹介しています。
それは、モノに簡易的な“目と口”をつけてあげるんです。不思議なことに、その瞬間に情が生まれます。人間は目と口があるものだけに「生命」を感じるんですね。なので目と口は非常に重要です。すべてのモノに目と口があったなら、世の中のモノは無駄に捨てられないでしょう。薬は処方がないとお譲りできないんですけど、ユザワヤとかフライングタイガーとかに、おもちゃの目と口が売っているので、自分が対話してみたいと思うモノに貼ってみてください。言葉が聞こえてくると思います。
國光悠人(くにみつ・ゆうと)
モノコミュニケータ―。薬剤師。世界で初めて一時的にモノと会話できる薬「モノリンガル」の開発に成功し、モノと持ち主のコミュニケーションを斡旋する“モノコミュニケーター”として活動。使われていないモノの「内なる声」や「心の叫び」を聞きつけたお宅を訪問し、モノとのコミュニケーションを促しながら、「捨てないお片付け」を応援する活動に取り組んでいる。
秋山竜次(ロバート)
1978年8月15日生まれ。福岡県出身。98年にお笑いトリオ・ロバートを結成し、TV、舞台、ドラマ、CMなどで活躍する。秋山がさまざまなクリエイターに扮して密着取材を受ける「クリエイターズ・ファイル」は『月刊ザテレビジョン』で連載中の人気企画。YouTubeの公式チャンネルで毎月密着映像を公開している。各キャラクターでTV・CMにも出演するほか、展覧会「クリエイターズ・ファイル祭」は20万人を超える動員を記録。公式グッズやコラボウェアはファンだけでなく、リアルなクリエイターたちからも支持を得ている。
國光悠人(モノ・コミュニケータ―)第一話:アメリカに憧れて...【メルカリ×ロバート秋山のクリエイターズ・ファイル 特別編】
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