アウトドア2023.03.02

キャンプは道具に沼る。外遊び人たちの偏愛品。vol.4 texnh プロダクトデザイナー 松村力弥

この連載では、アウトドア道具を見て、買って、使っている外遊び人たちが、個人的に推せるものについて自由に語ります。

4回目となる今回のゲストは、バッグや革小物と逸品揃いの〈texnh(テクネ)〉のプロダクトデザイナーを務める松村力弥さん。バッグメーカーで長年ものづくりをしてきた松村さんは、キャンプでの道具選びでもその目を光らせます。

そんな松村さんにお気に入りのアウトドアギアを持参いただき、キャンプにハマった経緯や道具の見方、選び方について話を伺いました。
(撮影/山田裕之、取材・執筆・編集/古賀結花、メルカリマガジン編集部)

フェスでキャンプを知り、師匠に道具を学ぶ。

ー松村さんは、普段どんな人とキャンプに行ってますか?

松村 うちは子供が3人いるので、基本的に子供たちを連れてファミリーキャンプがメインです。子供たちの友達家族と一緒に行ったりとか。

ーキャンプデビューもご家族で?

松村 いちばん最初のテント泊は野外フェスですね。毎年、秋に静岡で開催される「朝霧JAM」っていうフェスにずっと参加してます。と言ってもコロナに台風にと中止続きで、2022年は外せない予定があり、ここ4、5年は行けていないんですけど…。

「FUJI ROCK」ほど忙しないわけでもなく、ゆるやかな雰囲気で。場所も富士山のふもとですごく気持ちがいいんですよ。

友達と繰り出して、音楽聴いて、野外泊してました。道具も全然持ってなかったんですけど、何度もフェスに参加するうちに少しずつ集めるようになったという感じです。
ーキャンプとして始めたというよりは、必要に応じて道具が揃っていったというイメージなんですね。

松村 それともうひとつ、前の仕事場の上司が圧倒的なキャンプギアマニアだったっていうことも大きいですね。とにかくいろいろなことを教えてくれた師匠のような人で、キャンプ道具に関する知識もたっぷり仕込まれました。師匠は一世代前のキャンプブームのど真ん中にいて、ひと通り道具を使っているので目利きなんです。“これはいいもんなんだぞ”と僕もイロハを教わりました。

道具を譲ってもらったりしながら知識を増やしていって、師匠とよくキャンプ道具談義をしてました。ただ師匠はもうキャンプに行くこと自体は半ば引退していて、一緒にキャンプに行ったことはないんですけど(笑)。
ー(笑)。キャンプにそれほど行っていなくても、道具や機能に惹かれる気持ちは分かります。

松村 プロダクトをつくるという職業柄もあるかもしれません。そもそも道具好きですし。特にキャンプ道具はただのモノじゃなくて、機能が載っているので面白いです。

キャンプ道具は適材適所。

ー松村さんが道具を選ぶときって何が基準になるんですか?

松村 やっぱり機能と、あとは素材に結構好みがあります。適材適所な使い方、定番じゃない組み合わせになっている素材がすごく好きですね。たとえば寝袋なんかも、天然のダウンがいいとされているけど、シーンによっては化繊素材の方が良かったりしますし。
ー適切に使われているかどうかというところがポイントなんですね。

松村 すごく高機能、とかよりも、使う自分のレベルに合っているかどうかが大事です。特に今は子供が小さいこともありますし、寒い時期は基本的にキャンプにいかないのが我が家のスタイルになっています。なので、防寒性などは機能としてそれほど必要じゃないんですよね。

ーたとえば、今は冬でも石油ストーブを持って行ってキャンプする、なんてスタイルもありますけど…。

松村 そう、そういう暖房器具をそもそも持っていないので。春ごろから月1回くらいキャンプに行って、10月の「朝霧JAM」でシメるイメージです。
ー今日はヴィンテージものもいくつか持ってきてもらってますが、メルカリで買うこともあるんですか?

松村 ですね、お店で買えないものを探すときに結構利用してます。家族用に使ってるテントが、〈ノルディスク〉の「ピル」ってモデルなんですけど、後継モデルの「レイサ」が出てるので廃盤になってるんですよ。個人的に「ピル」の方が好きで、探して買いました。気に入ってて、直しながら長く使ってます。

ーキャンプ道具って案外長持ちですよね。使うのも月1回〜年数回くらいの頻度ですし。

松村 そうなんですよね。だからよっぽどボロボロじゃなきゃ中古でも全然気になりません。
ー買い物は結構されるんですか?

松村 します、しちゃいます!キャンプ道具って何かと理由をつけて買いやすいんですよね。“前にキャンプに行ったときに困ったから、アレ買おう”とか。究極、“仕事の参考になるし”って言い訳してます(笑)。

ただ無尽蔵に増やすわけにも行かないし、それこそメルカリで定期的に放出してます。これもまた買い物のハードルを下げる要因になっちゃってるんですけどね。“もし思ったものと違ったら、売ればいいし”って。

プロダクトデザイナーが見る、ギアの奥深さ

ーものづくりをしている松村さんの視点から、アウトドアギアの面白さってどんなところにありますか?

松村 アウトドアの道具って、“コレ専用”みたいなものが多いじゃないですか。ケースなんかも、これはカトラリー用、これはランタン用って。はっきり用途分けされているところが分かりやすいし、道具に応じた仕様の変化とかが魅力的だなと思います。

ー道具自体も多岐に渡りますしね。

松村 寝袋ひとつとっても、季節によって厚い薄いとか使い方が違うとか、ありますよね。同じ寝袋でもスペックが全然違ったりするのが面白いなと思います。

松村さんこだわりのキャンプギア8選

ものづくりを生業にする松村さん。自身のブランド〈テクネ〉と同じ雰囲気を漂わせた、上品かつちょうどいい機能を備えたセレクトが光ります。

プリムスのトゥピケ

これは2022年に買った結構新しめのアイテムです。このツーバーナーはこれまで海外のみでの販売だったのですが、ついに日本に上陸したということで購入しました。素材にウッドが組み合わさっていて、上品な雰囲気に仕上がっているところが好みです。また、同じくプリムスのツーバーナーである「キンジャ」「オンジャ」と違って、ガス缶ひとつで二口のコンロどちらも使えるのがすごく使い勝手がいいんですよ。

ゴーライトのシャングリラ8

タープとして活用してます。8人用と大きいので、中にテントを入れて、寝室プラスリビングをつくるイメージです。元々、「シャングリラ5」が使いやすいなと思っていて、家族や大人数での宴会利用を考えてより大きい「シャングリラ8」を探しました。廃盤になっててなかなか見つからず…。メルカリにもたまに出現しますよ。

カーミットチェア

アウトドアで使うチェアの中では一番良くできているなと思います。分解できる携行性はもちろん、質感も。品がいいですよね。座面が低いので、ゆったり過ごすのにちょうどいいなと感じます。

NANGAのレギュラーSTD350

春・夏・秋の3シーズン用の寝袋で、保温力が高いものではないです。自分は冬キャンプにいかないので、これくらいの暖かさがベストなんですよね。中は国産の最高級ダウンが封入されていてふかふか。寝心地抜群です。横のファスナーが生地を噛まないよう設計されているのが細やかでいいんですよね。

カスケードデザインのインフレータブルマット

「カスケードデザイン」という、多くのアウトドアブランドを手がける会社がつくった一品です。ただこれは一般販売されているものではなくて、軍の払い下げ品。上野にあるミリタリーショップ「中田商店」で見つけた掘り出し物です。

自然愛護団体シェラクラブのシェラカップ/ロッキーカップ

シェラカップの元祖と言われるものですね。元々は自然愛護団体の「シェラクラブ」が販売していたものが有名になり、シェラカップとして定着したんです。今はどの道具も軽量化が進んでいますが、これは重厚感があって、そこがいいんですよ。

ザ・ノース・フェイス スタンダードの飯盒

キャンプギアにロゴステッカーを貼っている人が最近多いですが、これは元々プリントされている純正品。原宿にある「ザ・ノース・フェイス スタンダード」で販売されているオリジナルです。〈ザ・ノース・フェイス〉のようなブランドが飯盒という昔ながらのものにロゴを入れるという意外性に惹かれてつい買ってしまいました。

テクネ サコッシュ

これはアウトドア向けに用途を限定しているわけではないのですが、薄いのでジャケットを上から着てもゴワゴワしないようになっています。実はテントのディテールを取り入れていて、ガイロープと同じく紐が簡単に調整できるんです。

松村力弥

texnh プロダクトデザイナー / 大手バッグメーカーでプロダクトデザイナーとして勤務したのち、2020年にバッグブランド〈texnh〉を立ち上げる。アウトドアギアを含め、自身が見てきた多くのプロダクトからディテールを取り入れている。その他、アウトドアブランドのプロダクトデザインを手がけるなど活動は多岐に渡る。Instagram:@texnh

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メルカリマガジン編集部

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