(執筆・撮影/安藤昌教、編集/デイリーポータルZ編集部、メルカリマガジン編集部)
ヴィンテージに対する憧れはない(でも欲しいのもある)
安藤
これまで2回にわたって初心者向けのベースと機材についていろいろ伺ったんですが、宮城さんくらいの上級者になってくると、いつか弾いてみたい!みたいな憧れのベースがあったりするんですか。ほら、初心者ではおこがましいですが、宮城さんならそういう高い機材を欲しがっても許されるのかなと思って。
宮城
ベースで高い楽器というとビンテージもの(古いもの)を想像するかと思うんですが、じつは僕はあまりビンテージに対する憧れがないんですよね。
安藤
楽器やってる人が全員ビンテージを欲しがるわけではない、と。
宮城
ええ。もちろんやりたい曲によっては、それに合った音が出る楽器を弾いてみたいなと思わないこともないんですけど、いつか買って所有してやる!みたいな強い憧れというか、こだわりみたいなものはないんです。
安藤
宮城さん、それにしてはすでに楽器をたくさん持ってるじゃないですか。あれはどういうことですか。
宮城
はい。いまギターは30本くらい、ベースは5本かな、持ってますね。楽器はどうしても増えていくものなんです。
安藤
開き直ればいいってものじゃない。
宮城
たまに反省して使わない楽器をメルカリで売ったりもしていますよ。でもベースに関していえば、いま使ってる機材がすごく気に入っているので、いまのところ特に欲しいものがあるわけじゃないんです。いや、でも欲しいのもあるな。
たとえば日本のギター・ベース工房、アトランシアのベースなんかいいですね。独創的で美しいデザインが大好きで、いつか欲しいなと思っています。あとはヤマハのフレットの打ってある5弦ベースが欲しくて、これを狙っていますね。
安藤
まだまだ増やす気まんまんじゃないですか。今持っているという5本のベースは全部用途が違うんですか?
宮城
そうですね、それぞれに特徴があって、使い分けていますね。アリアプロⅡのジャズベースタイプ、ヤマハのアクティブピックアップ(電池を使用することで出力を上げているタイプのベース)のもの、グレコのVB-360、それからフレットレスの5弦ベースと6弦ベースです。
楽器は演奏するのも集めるのも楽しい
宮城
ギターとかベースが趣味の人って、純粋に音楽を奏でたいっていう人と、楽器自体が好きで集めちゃってる人がいまして。
安藤
なるほど、それで行くと宮城さんはどっちなんです?
宮城
両方ですね。僕は楽器を演奏するのが好きだし、楽器自体も好きです。特に中古楽器との出会いは運命みたいなものがありますから、こればかりはもう仕方がないんです。
安藤
なんだか言い訳にしか聞こえないですが、僕も家にカメラがどんどん増殖していて人のこと言えないし、宮城さんの言っていることはわからなくもないんです。好きなものってなんだかんだ言い訳を見つけて増えていっちゃいますよね。
宮城
はい。これは自分に対しての言い訳なので、そんなのいらないといえばいらないんですけど、その言い訳を考えるのもまた楽しいので。
安藤
完全に沼ですよそれは。僕のカメラと同じです。宮城さんは、今とくに憧れの楽器がわる訳ではないけど、いい楽器と出会ってしまったらそれは買わざるを得ない、と。そういうことですね。
宮城
はい、いつでも楽器を迎え入れられる体制ではあります。前に新潟の中古屋さんで80年代のアリアプロⅡを見つけてしまったんですよ。これがいまのメインベースなんですが、その時はまったく楽器を買おうとか思っていなかったんですね。でも見つけてしまったらこれは仕方がないですよね。状態もすごく良かったしハードケースもついてて、もちろん買って帰りました。本当に買ってよかったと思っています。
宮城
実はいまこのアリアプロⅡみたいに、80年代くらいの日本の楽器が人気なんです。80年代あたりに海外メーカーをコピーしたような製品が日本で大量に作られてまして。コピーにも関わらず、品質があまりにも良いのでファンも多いんです。
安藤
なんで品質がよかったんですか?
宮城
当時の海外製の楽器って、作りがおおざっぱだったりしたものがあったんです。日本は昔から職人の木工技術が高いということもあってか、きっちりと作られていて音もいいものが多いんです。当時の日本製の楽器はいま「ジャパンビンテージ」なんて言われて海外で大人気だったりします。
安藤
そもそも楽器と言うのは古ければ古いほど価値が上がるものなんですか。
宮城
楽器の種類にもよりますが、単純に古ければいいというわけではありません。古いベース、いわゆるビンテージと呼ばれるもので、価値の高いのは圧倒的にフェンダーでしょうね。
安藤
それは音がいいんですか?それとも希少価値が高い?
宮城
両方あります。何十年も前のものなので、木材が経年変化してよくなっている場合もありますし、たとえば60年代の音楽をカバーしたい時には、やっぱりその時代の楽器を使うのが手っ取り早いんです。
安藤
なるほど、それはわかりやすい。その時代の音はその時代に作られた楽器で出すのがいいのか。
宮城
そうですね、そういうところにこだわる人はいます。あと希少性も値段に関係するでしょうね。古くなればなるほどいい状態で現存している楽器の数が減っていきますから。
安藤
新品の楽器における価格差というのはどこから生じるんですか?
宮城
それはもうブランド力と、あとは作りの良さだと思います。いい材料が使われていたり、工程に手間暇かけられていたりとか。工場で大量生産するよりも、職人さんがハンドメイドするとなるとコストがかかりますからね。
安藤
ギターやベースでも職人の技っていうのがあるんですね。今だとどのあたりのベースがそれにあたるんでしょう。
宮城
ATELIER Zなんかはハンドメイドで評判いいです。KenKen(ロックバンドRIZEのベーシスト)が弾いてるやつですよね。
安藤
好きなアーティストと同じ楽器が使いたいっていう気持ちはわかります。それで同じ音が出せるとは思わないけど、やっぱり気分は上がりますからね。
宮城
前にも話しましたが、音楽はまずは楽しくやるのが一番だと思うんです。好きなアーティストがいたらその人を真似したらいいし、弾いていて楽しい楽器を見つけたらそれは買うべきです。
安藤
宮城さんの家に楽器が溢れてる理由がわかってきた気がします。今回はありがとうございました!僕もギターを買ったので今度一緒に演奏しましょう。
宮城
はい!ぜひ。
安藤昌教(あんどうまさのり)
デイリーポータルZ編集部勤務。ものをむかずに食べる「むかない安藤」としても活躍中。好きなものはカメラと恐竜。あとサメが出てくる映画。
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宮城剛(みやぎつよし)
本業は映像制作をしているバンドマンでエアギタリスト。趣味はバンド活動で、数種の楽器演奏ができることもあり、バンドができるなら担当楽器はなんでも良いがポリシー。マンガを読むのも大好きで、休日の過ごし方はバンド活動とマンガを読むかのどちらかです。
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