(執筆・撮影/安藤昌教、編集/デイリーポータルZ編集部、メルカリマガジン編集部)
ベースってどんな楽器なの?たのしいの?
安藤
ギターだけでなく楽器全般に詳しい宮城さんに、今回はバンドの屋台骨である「ベース」について話を聞きました。ベースとはそもそもどんな楽器なのか、初心者はどの楽器を買えばいいのか、上手くなるにはどうしたらいいのか。全3回にわたってあなたをベーシストへと成長させます。僕にとってはまた楽器を買ってしまうんじゃないかという不安もある連載です。
それでは宮城さん、今回もよろしくお願いします。
安藤
これまでいくつかのバンドでベースを弾いてきた宮城さんにこんな基本的なことを聞くのは恐縮なんですが、ベースってどんな楽器なんでしょう。
宮城
バンドで低音パートを担当している大切な大切な楽器、それがベースです。
安藤
それにしては存在が目立たないというか、華がないように見えてしまうんですが(安藤は高校の頃にバンドでベースを弾いていた経験から話しています)。
宮城
ギターみたいに前に出てソロを弾いたりすることが少ないですからね。そういう意味では目立たない存在なのかもしれないですが、でも大切なパートです。
安藤
テレビの歌番組なんかでバンドが演奏しているのを見ていても、ベースの音って聞こえてこなくないですか。カメラが追うのはボーカルばかりだし。
宮城
わかります、楽器をやってると「もっとギターとかベースの手元映してー」って思いますよね。でもバンドはバンドで見せたい角度があるし、そういうものなんでしょう。確かにテレビの音楽番組などで意識せずに聞いてる分にはベースは聞こえにくいとは思うんです。でも実はベースがなくなると、一気に安っぽいというか、しょぼい音になってしまうんです。ベースがあってこその安心感、安定感であって、音楽はその上に乗っかってるんですね。
安藤
なるほど。それでもやっぱり意識しないと聞こえてこないような気がするんだよな~。
宮城
それは安藤さん家の機材にも問題があるんですよ。オーディオ機材に凝っている人の環境で聞くと、テレビから流れる音でもちゃんと低音から高音まで再現されていて、これはもう全く別物ですからね。
安藤
(うちのテレビがしょぼいんだろうと暗に言ったな)まあそれはそうなんでしょうけど。わかりました、ベースが大切な楽器だということは理解しました。その上で今回は、僕みたいにベースにちょっとだけ興味があるけど、何から始めたらいいのかわからない人に向けて、ベースの魅力を語ってください!
宮城
わかりました!バンドなんかだとベースとドラムでリズム隊と呼ばれたりしますよね。その名の通り、ベースは曲の土台であるリズムの部分を担当しているわけですよ。弾いていて面白いし、全員ベースをやるべきです。
ベースには2種類ある
安藤
バンドなんかでベースというと、だいたいエレキベースだと思うんですが、他にも種類があるんですか?
宮城
ベースというとざっくり2種類あって、一つはいわゆるウッドベースですね。アップライトベース(楽器を直立に構えて演奏するベース)とかコントラバス(オーケストラで目にするバイオリン属のなかで一番大型で低い音のもの)とも呼ばれています。
安藤
でかくてかっこいいですね。
宮城
存在感ありますよね。これは主にクラシックやジャズ、ロカビリーなんかで使われています。
安藤
ウッドベースって楽器としてはコントラバスと同じものなんですね。ジャズとかロカビリーでよくウッドベースが使われるのは、これは求められる音の問題ですか?それとも演奏スタイル?
宮城
どちらもでしょうね。ウッドベースだと基本生音ですから、ロックバンドなんかに混ざるとやっぱり埋もれちゃいます。そこで進化したのがエレキベースです。これはエレキギターから派生したものなんですが、ギターってもともとボディが空洞で、そこで響かせて聞かせる楽器だったんです。
安藤
アコースティックギターとかクラシックギターと呼ばれるものですね。
宮城
そうです。それをフェンダーと言う会社(1940年代にアメリカで設立された楽器メーカー)が、空洞のないただの板にピックアップ(マイク)と弦を付けたエレキギターという楽器を作った。これはアンプに繋げばでっかい音が出るし、たいへん成功して人気になって広まっていったんです。
安藤
同じ流れでウッドベースもエレキベースにしちゃえ、と。
宮城
そうです。エレキギターができるんだったら、ウッドベースも同じようにできないの?ってことでウッドベースから進化したのが、いまではよく見るエレキベースです。
安藤
フェンダーが元祖だったんですね。ウッドベースもエレキベースも、やってることは同じなんですか。
宮城
基本的には同じですね。ベースにはギターでいうところの太い方の4弦が張ってあります。ウッドベースの場合も、エレキベースより長くて太い弦を使いますが、チューニングなんかは同じですね。
安藤
そもそもベースの弦が太いのって、あれはどうしてなんですか。
宮城
太くて低い音を鳴らすためです。あの弦にもつるつるなのとザラザラなのと2種類あって、つるつるの弦(フラットワウンド。芯線に巻線をぐるぐると巻き、それを平らにした弦)の方がどちらかというと通好みかもしれません。フレットレスベースやバイオリンベースなんかによく使われています。
安藤
つるつるの弦は触ったことがないな。
宮城
よく見るエレキベースの弦はザラザラの弦(ラウンドワウンド。芯線に巻線をぐるぐると巻いた弦)ですよね。エレキベースを買ったときに付いてくる弦の9割方がこれでしょう。高いのから安いのまで、どんな楽器屋さんにも売られていると思います。音の違いもありますが、弾き心地がぜんぜん違うので、こだわる人はいろいろ試してみるといいかもしれないですね。
プレべかジャズべか、それが問題だ
安藤
エレキベースにもいろいろな種類がありますが、種類がありすぎて何を買えばいいのかわかんないんです。
宮城
お、これは買う気まんまんですね。まずさっき話したように、成功したエレキギターを参考にしてフェンダーが作ったエレキベースの元祖がプレシジョン(正確な)ベースってやつです。略してプレべって呼ばれたりします。
安藤
聞いたことありますぞ!プレべ。最初のエレキベースがプレべだったんですね。
宮城
といっても今のプレべとはちょっと形が違っていて、もっとテレキャスター(フェンダー社より発売されているエレキギター)に近い形をしていたみたいですけどね。
宮城
エレキベースとしてはフェンダーのプレべが元祖で、そこからミュージシャンの要望を聞きながら改良を加えていって、最終的にプレシジョンベースとジャズベースという2種類に落ち着くわけです。
安藤
有名な「プレべ」と「ジャズべ」ですね。いまでもどちらの名前も残ってるってすごいですね。二つはどう違うんですか?
宮城
ジャズべの方がネックが細いとか、見た目からして違うんですが、演奏性と音色が全く違うので、やりたい音楽によって使い分けられていますね。フェンダーのこの2種類が世の中のエレキベースの基本となっています。
安藤
他のメーカーのベースもだいたいこの2種類を元にしているんですか。
宮城
そういうメーカーも多いです。はっきりと「プレべ」「ジャズべ」って言うとフェンダーから叱られてしまうので、プレべタイプとかジャズべタイプとか言ってぼやかしたりしていますが。ボディの形はだいたい同じでも、ヘッドの形だけは各社違います。ここだけはオリジナリティがないとダメっていうのが慣例らしくて。おかげでいろいろと選択肢が増えて面白いんですけどね。
ベース初心者向けの最初の1本は?
安藤
フェンダーよりもっと安く買えるベースもあるっていうことですか。
宮城
たくさんありますよ。特に日本製の楽器は安くても品質が安定していてパーツもいいものを使っていることが多いので、初心者にはぜったいおすすめです。
たとえばスクワイアは日本やアジア諸国で製造されていて、バッカスなんかは長野県で作られてます。どちらもすごく質がよくてお買い得だと思いますよ。
宮城
スクワイアはフェンダーの派生ブランドです。同じフェンダーのプレべでも、生産国によってかなり値段が違いますよ。USAは高いけど、フェンダージャパンのものだと日本製で、安いけど品質はすごくいいと思いますね。
安藤
生産国によって値段が変わってくるのは、これは円安とかの影響なんですか?
宮城
というよりも材料となる木材の違いだったり、パーツの違いだったり、あとは職人さんの手間の問題もありますよね。やはりブランドとして本家のUSA製じゃなきゃ!という気持ちもわかるんですが、品質と価格で見ると日本製の方がコスパが高かったりします。僕がいま初心者で、最初の1本を買うのならこのあたりを買いますね。
宮城
バッカスのユニバースシリーズは、初心者向けにベストコストパフォーマンスを目指して制作されているエントリーラインナップなので、作りが良くて弾きやすいです。カラーバリエーションが豊富なのもいいですね。
安藤
人間的に、どういう人がベースに向いてるとかありますか。
宮城
曲全体を俯瞰して見られる人、全体を把握できてる人、ですかね。なんて言いながら、バンドやりたいけどあまり目立ちたくはない、みたいな人もベースやる率高いです。
安藤
まさに縁の下の力持ちですね。
宮城
そうです!やりましょう、ベース!
安藤昌教(あんどうまさのり)
デイリーポータルZ編集部勤務。ものをむかずに食べる「むかない安藤」としても活躍中。好きなものはカメラと恐竜。あとサメが出てくる映画。
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宮城剛(みやぎつよし)
本業は映像制作をしているバンドマンでエアギタリスト。趣味はバンド活動で、数種の楽器演奏ができることもあり、バンドができるなら担当楽器はなんでも良いがポリシー。マンガを読むのも大好きで、休日の過ごし方はバンド活動とマンガを読むかのどちらかです。
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