カメラ2022.12.20

【趣味のカメラ好きが選んだ】いま使わずにいつ使う?今こそ手に入れておくべき「フィルムカメラ」

デジタルにはない魅力があるということから人気が再燃している「フィルムカメラ」。今回はカメラ好きを代表して、かつて沖縄でカメラ屋をやっていたことがあるというデイリーポータルZ編集部の安藤昌教さんが、いまからフィルムカメラを使うならこれ!というおすすめ機種を教えてくれました。

(執筆・撮影/安藤昌教、編集/デイリーポータルZ編集部、メルカリマガジン編集部)

フィルムカメラが窮地に立たされている。

去年だったと思う、FUJIFILMがPRO400というカラーネガフィルムの製造中止をアナウンスした。
今「ネガ」とタイピングしたら「根が」と変換されたのだけど、これはフィルムの立場が怪しくなったからというより、僕の変換ソフトがものを知らなすぎなのだろう。

話はもどってFUJIFILMのPRO400というネガである。僕はこのフィルムを10年くらい前までよく使っていた。プロとついているけれど当時はそれほど高くなく、性能もよくて、迷ったらこれを入れておけば大丈夫、という安心感があった。そんな使いやすかったフィルムなので、これの製造が終わるというのはちょっとしたショックだったのだ。

FUJIFILMだけではない。コダックもイルフォードもローライも、ここ数年でフィルムを作っている会社がのきなみ値上げや製造中止をアナウンスしている。
つまりフィルムで撮る写真は、本当の本当に、いまが最後かもしれないのだ。

最後とは言わないまでも、これからもフィルムが安くなることはまずないだろう。高いフィルムを使ってわざわざ写真を撮るからには、撮ること自体が面白いカメラを使いたいではないか。

今回は、カメラ好きを代表して、いまからあえてフィルムカメラを使うならこれ!というテーマで書かせてもらおうと思う。なお、内容は完全に僕の主観なので異論は認めます。むしろご意見ください、飲みに行きましょう。

おすすめのフィルムカメラ:Rollei35(ローライ35)シリーズ

小さくてかわいくて、からくり箱みたいに触っていて面白いカメラがこちらのRollei35シリーズである。

rollei35T

このカメラは製造期間がとにかく長く(1960年代から2000年代まで作られていた)、種類も大量にあるので集め始めるときりがないのだけれど、主にレンズの違いで3タイプに分けられる。

1台だけ買って満足いく大人ならテッサー(カール・ツァイス社が製品化した単焦点写真レンズで、とにかくシャープに写る)が付いているやつをおすすめしたい。
テッサーレンズの付いたRollei35Tは本当によく写るし使いやすい。シャッターを1/125に、絞りを8くらいに設定してISO400のフィルムでも入れておけばだいたい押しただけで撮れる。

その後にゾナーの付いたRollei35Sを買ってもらい、それでもなにか物足りないのならばトリオターを、という順番で揃えていくといいと思う。僕はその順で揃えておかげさまで毎日が楽しいです。健康診断でも悪いところはありません。
Rollei35シリーズは持ち歩いて暇を見つけてレンズを引っ張り出したりするだけでもテンションが上がるのだけれど、たまにフィルムを入れて巻き上げると、ゴリゴリとした巻き上げ感覚の中に「いっちょやったるか!」というやる気みたいなものが感じられる。撮れた写真はまさかの高解像度かつノスタルジックな色合いで、これもデジタルに慣れた目で見ると新鮮で面白いと思う。

おすすめのフィルムカメラ:LEICA(ライカ)シリーズ

今からあえてフィルムカメラを買うような人は、普通のカメラじゃ物足りないと思っている僕みたいな人だろう。そんな人におすすめなのがライカです。

ライカというカメラはちょっと特別で、刺激に飢えた変態カメラ好きをも黙らせる孤高のブランド力を持っている。ああいう面倒くさい人たちは(僕を含め)最終的にライカを持たせておけばおとなしく空シャッター切っていてくれるのだ。悪い人じゃない。

カメラが好きなら、一度はライカを手にしてもらいたい。

いろいろなタイプがあるけど、もう好きなやつでいいと思います。

ライカはとにかく高い。M型ライカ(ライカのレンジファインダーカメラのこと。Mはドイツ語でメズスハー(距離計、レンジファインダーの意))のきれいなやつだと20万円くらいから、上は300万円くらいまで見たことがある。
しかも信じられないことに20万円のライカと300万円のライカで、撮った写真を並べても違いなんてない。ライカの値段の差は、写りには全く関係ないのだ。これはちょっとすごい話だと思う。100円の寿司と5000円の寿司が同じ味だったら普通怒るだろう。僕なら怒る。しかし、ライカという名前の下では、それもいたって日常の光景なのである。

ではライカの価値はどこで決まるのか。それは人気と希少性である。今、特に人気があるのがM6という機種だ。
ライカのM6はシャッターと巻き上げ巻き戻しと露出計という、カメラにおいて最低限備えておいてほしい機能を真面目に備えている。

逆にM6より前のライカにはこれらすら備わっていなかったりするのでおっかない。M6はその完成度の高さから、長い期間にわたりたくさんの記念モデルが作られてきた。後続のM7が出てからいったん現行機のラインナップから外れたが、このたびまたM6の復刻版をライカが正式に販売するアナウンスがあったくらいである。そのくらい人気のある、ライカを代表する機種なのである。

ライカ使いの先輩「木村伊兵衛」

日本でライカを早くから使っていた写真家といえば木村伊兵衛だろう。秋田に行ったときにたまたま回顧展をやっていたので見に行ってきた。
木村伊兵衛は90mmのレンズでポートレートをよく撮っていた。

秋田の展示で買った木村伊兵衛の写真集。

ライカは町中でのスナップ写真はもちろん、相手とコミュニケーションを図りながら撮影するのにむいているカメラだと思う。一眼レフだといかにも「撮りますよ!」と、人の動きを止める雰囲気があるのだけれど、ライカの場合、流れを止めずに一瞬を切り取る感覚がある。だからなんとなく旅なんかにも合う。これはもしかしたら気分の問題なのかもしれないけれど。

このところオークションやメルカリで、ライカの値段が高騰している。僕がライカに凝っていた20年前の値段から比べると、ざっと倍から、機種によっては3倍くらいになっているのではないだろうか。僕がM型ライカを買ったときは15万円も出せばきれいなM4かM6が買えたように思うのだが、今同じ状態の物を探そうとすると40万円くらいする。
いつかフィルムが完全になくなった世界が来たとしても、僕はライカを手放さないだろう。ライカは持っていること自体が楽しいカメラであり、僕くらい魂をライカに捧げてしまっていると、ピントを合わせて空シャッターを切るだけでも精神が安定するのだ。実際僕は、原稿を書く時にはいつもなんらかのライカを手元に置いている。原稿に飽きたらテーブルの上のミカンなんかにピントを合わせて空シャッターを切っているのだ。そっとしておいてほしい。

ライカの流れで別のアプローチからおすすめしたいカメラにコニカのヘキサーRFという機種がある。これはライカのレンズが使えて、しかも絞りさえ設定したらシャッター速度を自動で計算してくれるという優れものである。加えて巻き上げや巻き戻しも自動なのであるから親切すぎる(そのくらい当たり前だろう、という人もいるかもしれないが、フィルムカメラではなんでも自力でが基本なのです)。
僕は長きにわたるフィルムカメラ人生の中で、このコニカヘキサーRFをつかって一番たくさんのフィルムを消費したと思う。ピント精度が高いので明るいレンズでも外さないし、露出のシビアなポジフィルムでもばっちり濃さを揃えてくれる。今でいうところのデジカメ感覚でフィルム写真が撮れてしまうのだ。便利。

僕は残念ながらデジタルへ移行するときに資金繰りに困り手放してしまったのだが、これからフィルムで作品撮りするのであればコニカヘキサーRFをイチオシしたい。数は少ないが、ライカよりもずっと安い。僕もいいのを見つけたらまた買いなおしたいと思ってメルカリのキーワード検索に登録している。

おすすめのフィルムカメラ:大判カメラ

フィルムで撮ること自体がもはや特別なことであるのならば、徹底的に特別なカメラで撮ってみるのもいいかもしれない。そこでおすすめしたいのがシノゴとかバイテンとかいった大判と呼ばれるカメラである。
昔の映画やテレビなんかで、カメラマンが獅子舞みたいに布をかぶって写真を撮っているシーンを見たことないだろうか。彼らが使っているのが大判カメラである。フィルムはシート状のものを使い、レンズを通した光でピントを合わせる。

大判カメラはその名の通り、フィルムのサイズが大きいことから、撮れる写真のクオリティが圧倒的である。なによりカメラの元祖みたいな機械を、今でも現役で使うことができるというレアな体験にもしびれる。

友達と遊びに行くときなんかにシノゴを一式持参して、自撮り撮ろうよ!みたいになったらおもむろに三脚を組んでレンズボードを差し込み蛇腹を広げ、乾布をかぶってピントを合わせ、フィルムバッグを取り付けて友達の横に並び、笑顔でレリーズを押してもらいたい。友達は何が起きたかわからないはずだ。
ライカをはじめ、フィルムカメラのなかでも中古価格が高騰しているものがあるが、みなさんはあまりそうしたバブル的な値動きには動揺せず、本当に欲しいカメラを虎視眈々と狙ってほしい。コツは毎日メルカリなどのフリマアプリや中古市場、オークションを巡回して値段感を身に着けることである。それから、安いからといって欲しくもないカメラを値段だけで買ってはいけない。僕みたいになる。

本当に欲しかったカメラを納得のいく金額で見つけた時は喜びもひとしおである。枕元に置いて寝ながら空シャッター押したくなる、本当に。

レンズの話は次回

ここまでさんざんおすすめしてきたフィルムカメラだが、取り上げたカメラの多くは本体のみで売られていて、レンズは別売りなのだ。

ご存じのとおり写真はレンズがないと撮れない。次回は「標準レンズ」と呼ばれる最初に買うべきレンズについてお話したいと思います。

安藤昌教(あんどうまさのり)

デイリーポータルZ編集部勤務。ものをむかずに食べる「むかない安藤」としても活躍中。好きなものはカメラと恐竜。あとサメが出てくる映画。

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