デジタルにはない魅力があるということから一部の若い人たちの間で人気が再燃している「フィルムカメラ」。インスタグラム等でもたくさんのフィルム写真がアップされています。そこで、かつて沖縄でカメラ屋をやっていたことがあるというデイリーポータルZ編集部の安藤さんが、いまから始めるならこれ!という視点で、おすすめの機種やフィルム写真の魅力をカメラ初心者の同編集部 古賀さんに指南します。
(執筆・撮影/安藤昌教、編集/デイリーポータルZ編集部、メルカリマガジン編集部)
いまフィルムとフィルムカメラが値上がりしている
安藤
古賀さんは普段どんなカメラ使ってるんですか。
古賀
SonyのRX100というやつを使っていたんですが、一回壊れて、修理にだしたのにまた壊れました。もうだめだ。
安藤
デジカメはすぐ壊れるので仕方ないです。
古賀
そういうものですか。いいやつを買ったら、もう一生カメラには困らないと思っていたのに。
安藤
壊れなくてもすぐに新機種がでますからね。デジカメは消耗品になってしまいました。そこでいまやるならフィルムカメラです。
古賀
へぇ~!
安藤
どうして今さらフィルムなのかというと、いまフィルムやフィルムカメラを作っていたメーカーが次々生産をやめたり縮小したりしてまして、フィルム自体がすごい値上がりしてるんです。前は1本200円くらいだったのに、いまは1,000円とか平気でしますから。
古賀
なるほど、だからこそ今のうちに使っておいた方がいいと。
安藤
そうです。使う人が増えればメーカーもフィルムを作り続けてくれるし、ほんと来年どうなってるかわからないくらいの状態なんです。助けてください。
古賀
そんなギリギリの状態なんですね。
安藤
あとフィルムカメラはもう新製品が出ないので、新しいカメラに目移りしなくて済む、というのも大きなメリットです。
古賀
ポジティブすぎる。
フィルムカメラは空シャッターも楽しい
安藤
古賀さんが前に記事で取り上げていた(※1)ライカのフィルムカメラ、あれメルカリだと数万円になってますよ。
古賀
うっそ!!!お宝じゃんけ!
安藤
ライカのここ最近の高騰ぶりはちょっと異常ですね。僕は何年か前に10万円くらいで買ったライカのフィルムカメラを使い倒していたんですが、この前、別の機種を買うためにメルカリに出したら20万円で売れました。
古賀
動悸がしてきた。でもいつかフィルムがなくなったら暴落するのでは。
安藤
それがですね、フィルムカメラにはデジカメにはない楽しみ方があって。それが空シャッターです。フィルムを入れずに巻き上げて、ピントを合わせてシャッターを切る。つまり素振りです。
古賀
あー。聞いたことあるぞー。高校の頃に演劇部の先輩がやってましたわ。
安藤
これで僕らみたいなマニアは満足なんです。フィルムがいつかなくなっても大丈夫。
古賀
その先輩、カメラが好きすぎてシャッターだけ押して撮るふりしてて。なにが面白いんだと思ってたんだけど、そこにフィルムカメラの活路があったわけだ。
でもフィルムがなくなって、みんな空シャッター切ってる時代はそれはそれで泣ける。
安藤
涙でピントが合わないでしょうね。
これから狙うべきはコンパクトカメラ
安藤
これからフィルムカメラを始める人にはコンパクトカメラをお勧めします。具体的にはコニカビッグミニ、コンタックスTシリーズ、ローライ35、リコーGRあたりでしょうか。
古賀
ビッグミニはHIROMIXが「ロッキング・オン・ジャパン」のアー写撮るのに使ってたやつですね!
安藤
さすがカルチャーの申し子古賀さん、よく知ってますね。当時みんなHIROMIXにあこがれてビッグミニを使っていました。
古賀
平間至さんとかも流行りましたよね。
安藤
平間至さんはもうちょっと大きなカメラ、ペンタックス67なんかでタワーレコードの「NO MUSIC, NO LIFE.」で有名なポスターを撮ってました。
古賀
タワレコのポスター! すごいな、カメラファンは機材で歴史を覚えているんだ。
安藤
そういうところありますね。その写真家に憧れて機材から真似する、みたいな。
ライカを買うならバルナックがおすすめ
古賀
ライカというのはやっぱり高いんですか。
安藤
ライカはブランドとしても人気なんですが、主力商品かつカメラの王様とも言われているM型ライカは全般的に高騰している印象ですね。
そんな中、おすすめなのがバルナックライカです。バルナックライカは今のカメラの元祖みたいな存在なんですが、ライカの中でも比較的安く手に入るモデルです。
安藤
バルナックライカは見た目古いけど、電子部品を使っていないので、壊れにくいし壊れても直して長く使うことができます。僕も1930年代のモデルを今でも使っていますから。
古賀
フィルム自体がなくならなければな!
安藤
そしたら空シャッターを切るから大丈夫です。バルナックライカは安い機種だと2~3万円くらいから買えます。
古賀
へ~!!それなら!
安藤
でもレンズは別売りなので注意してください。
古賀
出た出た出た出た!カメラの落とし穴「レンズは別売り」。付けて売れよ。撮れないじゃん。
安藤
こういうカメラはレンズ別売りが基本です。家買ったって家具ついてないじゃないですか。それと一緒です。
古賀
窓あるじゃん、家には。レンズって窓でしょうよ。
安藤
ライカのレンズについてはコシナっていう長野県を本社に置くのメーカーが安くて性能のいいレンズをたくさん出しているのでお勧めです。
古賀
窓の例え無視すんな。
古賀
ライカのレンズじゃなくていいんですね。
安藤
ライカのレンズは気絶するほど高いので。そして撮れる写真は同じなので。
古賀
でもメーカー純正じゃないレンズがいい仕事するのは得した気分ですね。
安藤
古賀さんもデジカメが壊れたのを機にフィルムにしましょう。
古賀
記事の写真を全部フィルムにしたら、たしかにかっこいいかも。
安藤
1本で36枚しか撮れないですけどね。
古賀
わたしだいたい1記事で300枚くらい撮るから10本いりますね。それで書くのはまんじゅう食べ比べとかだからな。
安藤
現像するまで撮れてるかどうかわからないのも恐怖ですよね。
古賀
スマホでも撮っておきます!
大判カメラがロッカーに?
安藤
ビッグミニとかライカとかよりも、もっと大きなフィルムを使う「中判」とか「大判」と呼ばれるカメラがあって。今からフィルム写真やるなら、あえてこういう本気なやつもいいかもしれません。
古賀
あ! 待って安藤さん
安藤
え?
古賀
これ私も持ってる!
安藤
え? え??
古賀
会社のロッカーに入ってます。祖父にもらって、なんだかわからないけど記事のネタにならないかなと思って放ってありました。今度見てください!これカメラなんですか。
安藤
そうです。デイリーポータルZの過去の記事(※2)で、ゴルフ練習場を撮ってたやつです。
古賀
フィルムカメラを使うなら今だし、売るのも今だってことがわかりました。いいこと聞きました。
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※1 デイリーポータルZ「2018年の食べ物を1970年っぽく撮るには」
※2 デイリーポータルZの記事「全長100メートルの深海魚」
安藤昌教(あんどうまさのり)
デイリーポータルZ編集部勤務。ものをむかずに食べる「むかない安藤」としても活躍中。好きなものはカメラと恐竜。あとサメが出てくる映画。
古賀及子(こがちかこ)
デイリーポータルZ編集部員兼ライター。声が大きくせっかちで、起きるのも歩くのも食べるのも早い、5人きょうだいの長子です。好きなものはパソコンとぬいぐるみ。梱包作業も好きなので誰かのメルカリ発送をいつでも手伝いたい。