アパレル2021.12.08

柄on柄の足し算で楽しむ。瀧波ユカリがメルカリで探すOLD KENZOコーディネート

時代を越えて今なお新鮮な輝きを感じられるヴィンテージファッションやアイテム。4コマ漫画『臨死!! 江古田ちゃん』や、TVドラマ化された『モトカレマニア』の著者である漫画家・エッセイストの瀧波ユカリさんは、1着のワンピースと出会ったことをきっかけに、OLD KENZOの魅力にハマったといいます。

これまでメルカリやヴィンテージショップで掘り出してきたお気に入りのOLD KENZOアイテムを、コーディネートでご紹介いただくとともに、ヴィンテージファッションに惹かれる理由や、迷走期を経て辿り着いた「おしゃれ観」についてお伺いしました。
(執筆/秦レンナ、撮影/伊藤圭、編集/メルカリマガジン編集部)

KENZOのなつかしい花柄に魅せられて

――「OLD KENZO沼」にハマっているという瀧波さんですが、そのきっかけは何だったのでしょうか?

おそらく80年代のものだと思うんですが、古着屋さんで偶然KENZOのワンピースを見つけたんです。色も、やわらかな生地感も、袖がゆったりとしたデザインもすごく好みだったんですけど、何より花柄が素敵で。「KENZOってこんなにかわいかったんだ」と衝撃を受けました。

最近のKENZOは、トラや目玉のモチーフを使った、派手でイケイケなイメージが強いと思うんです。でも、今40〜50代の方はとくに、KENZOと言えばこの花柄を思い浮かべる方のほうが多いんじゃないかと思います。私が小・中学生のときかな、食器からティッシュケースみたいな小物から、このKENZOの花柄であふれていた時代があったんですよね。古着のワンピースに出会ってからそんなことを改めて思い出して、80〜90年代のKENZOアイテムをリサーチするようになったんです。

古着屋さんで出会ったOLD KENZOのワンピース。赤い花柄に襟のグリーンが映える。「普段でも、きちんとしたいときにも着られるから出番が多いんです」

――これまでとくに意識していなかったKENZOの魅力を、花柄で再発見したという感じですね。

そうですね。しかも、このワンピース、裾の裏側にはレースがついていて、見えないところにまでこだわりが感じられます。私はファストファッションのお洋服も好きですし、着るのですが、こんな風に丁寧で細かいしつらえは、やっぱりなかなか見られない。細部に感心しながら、すごく豊かな気持ちになりました。

古着屋さんで出会ったOLD KENZOの花柄のワンピースにヴィンテージのストールを。「ストールのシックな柄は珍しく、お気に入りです」

――そもそもヴィンテージファッションがお好きだそうですが、どういうところが好きですか?

こう言うと少し悲しい感じがするけど、日本が元気だった頃を感じるというか。80〜90年代のお洋服を見ていると、素材もいいものを使っているし、スカートも布の量がたっぷり。当時の定価はわからないけれど、今、こんなにいいものを買えるんだから、似合うかどうかは気にしないでかわいいと思ったら買っちゃえばいい! と思ってしまうんです。

OLD KENZOのお洋服もこうして並べて見ると、確かに派手なんですが、当時はこれが流行で、着ていた人がいっぱいいたんですよね。だからこそ今古着として流通しているわけで……。でも今は、街中を歩いている人を見ると、こんな服を着ている人はなかなかいない。みんな昔より色を使わなくなっているような気がします。
――瀧波さんがOLD KENZOに惹かれる一番の理由は何でしょうか?

「世の中に媚びていない」という感じがするからかな。着ると元気が出るし、「(自分が)間違っていない」という感じがするんです。

シャツジャケットは黒いパンツに合わせて着ることも。やわらかなウール地のスカートは、布地がたっぷり使われていて広がり方もきれい

メルカリで時代を超えたKENZOコーディネートを

――現在は札幌で暮らしているそうですが、日頃どんな風にOLD KENZOのアイテムを見つけているのですか?

ネットで見つけることがほとんどですね。はじめは古着屋さんのオンラインショップを見たりもしていたんですけど、お店のサイトを個別で見ていくのって結構大変で、メルカリならKENZOだけで検索できるからすごく便利です。

メルカリで検索するときは、「ヴィンテージ KENZO」や、「花柄 KENZO」「80’s  KENZO」といったワードを入れています。アイテムを見ているうちに、この柄は何年代のものなんだなとか、このデザインはいつのコレクションのものなんだなということが、だんだんわかってきて、知識が蓄積していくのも嬉しいですよね。

――今日は、本当にたくさんのKENZOアイテムをお持ちいただきありがとうございます。なかでもメルカリで買ったお気に入りのアイテムを見せてください。

目玉モチーフのスウェットは、2000年以降のKENZOの象徴的なデザインの一つだと思うんですけど、OLD KENZO好きにしてみたら、流れを買えてしまった若干の憎しみみたいなものがあって(笑)。初めはすごく抵抗があったんですけど、色味に惹かれて買ってみたんです。で、着てみたら案外悪くないかもって。

目玉モチーフのスウェットは10,900円で購入。カラーがお気に入り

これに合わせた馬柄のジャケットは、1986年にカジュアルラインとして発表したKENZO JEANSのもの。リアルな馬柄の裏地に一目惚れして、絶対にリバーシブルで着たい! と即購入でした。

馬柄の裏地をあえて表にして着たKENZO JEANSのジャケットは、メルカリで8,100円で購入

こうやって、昔×今の、時代を超えたアイテムをミックスしたコーディネートが楽しめるのは、メルカリのいいところ。

メルカリで購入した目玉モチーフのスウェットと、古着屋で見つけた「おそらく80年代のもの」だという花柄のサルエルパンツを合わせて

この花柄のバッグもメルカリで買いました。いろんな型があって、私が選んだのはまるっとした形がかわいいショルダータイプです。
長財布とエコバッグを入れたらいっぱいいっぱいって感じのサイズなんだけど、収容力なんて関係なく肩に下げたい。完全にアクセサリーと同じ感覚ですね。

「中もチェックで可愛いんですよ」

ペイズリー柄に惹かれたパンツはメルカリで4,800円で購入。「KENZOでウェストがゴムなものは珍しい。かわいくて楽だなんて嬉しいですよね(笑)」

――個性的な柄が印象的なKENZOを着こすのは難しいと感じてしまいますが、コツはあるのでしょうか?

「着る人を選ぶ」みたいなことは全然なくて、実は誰にでも似合うと思うんです。 KENZOを着ようとするとどうしたって柄on柄になるんですが、あんまり気にしなくていいと思います。何を合わせても不思議といい感じにまとまるんですよね。

私の場合、逆に無地同士の組み合わせだと、どうしてもディテールに目が行くから「ちょっと丈が足りない」とか「バランスがおかしい」とか、気になってしまって、コーディネートに時間がかかってしまう。でも、このシャツジャケットもスカートも、柄にしか目がいかないから、丈感なんて気にしなくて大丈夫(笑)。柄もの万歳です!

メルカリで出会う「あの頃欲しかった服とちょっと気になる人」

――OLD KENZOアイテムを掘り出すほかにも、瀧波さん流のメルカリの楽しみ方があればぜひ教えてください。

10年くらい前に、すごく欲しい服があって、でも当時は高くて買うことができなかったんです。でも、心の隅にその服の存在がいつもあって、ふと、メルカリにならあるんじゃないかと調べてみたことがあるんです。そしたら見つかって、もちろん買いました。たまにそういう風に「あの頃気になっていた服」を、メルカリで調べてみたりすることがあるんですが、また再会できるところがすごいですよね。

そこで、気になってくるのが出品者のこと。自分の好きなものを持っていた人がどんな人物なのか興味がわいて、プロフィールをじっくり見ることもあります。そうするとその人の人となりがわかってくるんですよ。

――それはエッセイ漫画を描く、瀧波さんならではの視点ですね(笑)。気になる方がいましたか?

ものすごい数の服とか靴を出品している50代くらいの女性なんですが、プロフィールを読むと、東北の方と関西の方とヨーロッパにも家があるらしいんです。その情報だけで興味深いじゃないですか。家が3つもあるんだ! みたいな(笑)。商品写真もリッチな雰囲気の家の一角で撮っていて、たまに本人が着用している写真もあるんですけど、きれいなグレイヘアのマダムなんですよ。この方、今までどういう人生だったんだろう……ってすごく気になってしまって。

確かめようもないし仲良くもならないけど、そういう「ちょっと気になる人」が時々現れては、じっとプロフィールを見ながら想像するのが楽しいんです。だけど、服を買って受け取って終わり、というのがメルカリのいいところ。そのくらいの距離感、ほど良い縁が心地よくもあるんですよね。

異性ウケもママ友ウケもどうでもいい。おしゃれは「好き!」と「かわいい!」のインスピレーションに従う

リゾート感のある花柄セットアップは古着屋さんで。腰ひもを巻きつけて履くパンツの作りの複雑さが気になって買ってしまったそう。

――見せていただいたコーディネートから、瀧波さんは本当に自分に似合うものをわかっている方だなと感じます。瀧波さんが好きな服は、一言で言い表すとどんな服ですか??

OLD KENZOにも通じますが、「強い服」でしょうか。異性ウケとかゼロ。まったくどうでもいいかな。「人の目」が入るとわかんなくなっちゃうんですよ。

実は、年相応の「ちゃんとした格好」をしなきゃと思った時期もありました。それでデパートに行って、地味ではないけどちゃんとしたデザインの服を買ってみたりして。

でも、全然似合わないんですよね。今思うとなんでああいう服を着ていたんだろうと思うんですが…。自分が着たい服がわからなくなる「迷走期」ってありませんか? 流行とか、ママ友や異性の目とか、周りを気にすると途端に何を着ていいのかわからなくなっちゃう。でも、それって、たぶん自分の軸が定まっていないからなんですよね。
――その「軸」はどうしたら見つけられるのでしょうか?

好きなものしか着ない。あんまり頭を使わず、これいいなという直感に従うことだと思います。自分が好き! と思うものだけ買っていたら、自然と何か通ずるものが集まってくるから、どれを組み合わせてもおかしくならないんですよ。好きな服に、好きなバッグ、好きな靴、好きなアクセサリーを合わせればいい。私の場合、おしゃれは足し算ですね。引くことなんてしません。

柄on柄コーデに大ぶりのピアスとリングを合わせて

左右色の違う大ぶりのリングはヴィンテージショップで見つけた1930年代のもの

――30代では出産を経験されましたが、そうした人生の変化はファッションにも影響しましたか?

出産後は、とにかく動きやすさ第一で、自分の好きな服を着たいなんて考えられなかったですね。でも、ちょっとずつ子どもが大きくなって、スカートが履けるようになったり、アクセサリーもつけられるようになったり、自由度が増していって。徐々に自分のおしゃれを取り戻しているような感じですね。そんな中でOLD KENZOにも出会ったんです。

――瀧波さんはどんなときにおしゃれを楽しんでいるのでしょうか?

服って心に影響しますよね。私の場合、家で仕事をしているからこそ、これまでは週に1回とか10日に1回くらい友達に会うときに着飾るのがすごく楽しみだったんです。でも、それがコロナ禍になって人と会わない時間が続くと、部屋着暮らしが続いて。そうするとどんどん心が死んでいくというか、自分が匿名的になっていくような気持ちになるんです。ふと鏡を見たときに「これ自分だったかな……」って愕然として。それで、毎日おしゃれしてインスタグラムにアップするというのをやってみたりもしたんですよ。2週間くらいで気が済んだんですけど、なんだか心にハリが戻ったような気がしました。
周りの友達も、子どもがいようが、仕事をしていようが、自分の好きなものを着ている人ばかり。みんな本当に楽しそうですし、おしゃれってそういうことなんだと思うんです。友達と「あれ買ったんだ」「いいね」なんて話すのは刺激的ですし、着こなしも友達を参考にさせてもらっています。

今、一番困っているのは病院に行く服がないということ。たとえば……今日、撮影前に私が着てきたTシャツ。気に入っているんですけど、「健康」と大きな文字が入っているので、さすがに病院には着て行けないですよね……。病院に行くのにちょうどいい服って、どんな服なんでしょう。難しいですね。

瀧波ユカリ(たきなみ・ゆかり)
漫画家。1980年北海道生まれ、札幌在住。主な作品に『臨死!!江古田ちゃん』『モトカレマニア』(共に 講談社)『ありがとうって言えたなら』(文藝春秋社)など。現在は講談社のWEB漫画サイト「&Sofa」にて『わたしたちは無痛恋愛がしたい』を連載中。

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メルカリマガジン編集部

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