さまざまなブランドとのコラボレーション、アーティストやセレブのデザイナー起用など、いま百花繚乱のスニーカー界。日本でも70年代に「運動靴」から進化を遂げたスニーカーカルチャーは、現在かつてないほど多様性に溢れているという。今回はメルカリで「スニヲタ」として知られるお二人に、トレンドやおすすめ、それぞれの楽しみ方を聞いた。(編集/メルカリマガジン編集部、撮影/熊田勇真)
徳永 幸大
株式会社ユナイテッドアローズ、自身でブランドやアパレルの製造、企画会社等を経て、2017年9月よりメルカリに参画。
田面木 宏尚
GMOクラウド株式会社、ピクシブ株式会社等を経て、2017年2月に執行役員としてメルカリに参画。 2018年10月、執行役員メルカリジャパンCEOに就任。
スニーカーは共通言語
メルカリマガジン編集部
お二人はメルカリでも大のスニーカー好きと伺いました。
田面木
会社のslackにスニーカーチャンネルがあるんですけど、日々そこで情報交換する仲です。
メルカリマガジン編集部
スニーカーチャンネル?
徳永
ひたすらスニーカーの話だけする部活みたいな。欲しいスニーカーがあると「これどう思いますか?」って他の人のレビューを聞いたり、「今日この抽選がありますよ」ってリマインドしたり。
みんな部署も役職もバラバラで、相手がいまどんな仕事してるのか知らなくても、その人が買ったスニーカーは全部把握してるみたいな集団です(笑)。
田面木
僕、普段からの癖で、街でも会社でもつい人の足元見ちゃうんですよ。
徳永
分かります! この人スニーカー好きなんだろうなあと思うと、コミュケーションに繋がったりしますよね。
田面木
この間アメリカの支社に出張に行ったんだけど、あっちのオフィスはスニーカー好きが多いんです。「そのUltraBoostやばいね!」「あれ、VETEMENTSのINSTAPUMP FURYどこで買えたの?」みたいな感じですごく盛り上がるんですよ。
徳永
いろんな壁を越える共通言語ですよね。僕は前職でアパレルの企画をしていたんですけど、ずっとお取引のない営業先があって。でもある日、たまたまALL STARの珍しい色を履いていたら、「それどうしたの?」って聞いてくださって。実はかなりスニーカー好きな方だったんです。
そこからまず話を聞いていただけるようになって、ついにお仕事につながったということがありました。
メルカリマガジン編集部
すごい、ALL STARでわらしべ長者のような話が(笑)。
徳永
飲み会とかじゃなくても、日常の中で、ちょっと年の離れた上司とか新入社員の子とかと、スニーカーをきっかけに距離が縮まることも多いんですよね。
メルカリマガジン編集部
人が履いているスニーカーを見るだけで、何のモデルか分かったりするんですか?
徳永
昔の仕事で靴の真贋鑑定をしていたこともあるので、型番もそうですし、本物かどうかも分かりますよ。
田面木
あと、匂いでもだいたいどこのブランドか分かる(笑)。
徳永
分かりますね! スニーカー買ったら、箱開けてまず匂いかぎますよね。「よしよし、NIKEの香りだ」みたいな感じで。
メルカリマガジン編集部
えーと、初めて聞きました(笑)。
最近のトレンドとスニヲタあるある
メルカリマガジン編集部
最近のスニーカーって、めちゃくちゃ種類多いじゃないですか。いまトレンドってどうなっているんですか?
徳永
おっしゃるように、昔に比べて人気が多様化していますね。たとえば、1990年代は世の中でNIKE人気がダントツだったのですが、最近はadidas、Reebok、New Balance、PUMA、asics、Onitsuka Tiger、CONVERSEなどそれぞれのブランドの良さや個性が楽しまれていますよね。
田面木
いろんなメーカーから次々と良いモノが出てるもんね。
徳永
ファッションブランドとのコラボレーションも人気で、たとえば、LOUIS VUITTONやSACAI、UNDERCOVER、COMME des GARCONSといったブランドもコラボレーションスニーカーを出しています。そこから、スニーカーの魅力に気づくという人もいますね。
田面木
新しいコラボも頻繁にあれば、再販もあるしで、スニーカー好きにとってはもう天国のような状況なんだよな……お財布には地獄とも言えますが(笑)。
徳永
そうなんですよ! ファンとしては、欲しい靴ばかりになって大変です(笑)。今はSNSで世界中の情報を知れるので、ますますスニーカーにハマりやすくなりましたよね。
田面木
最近は欲しいスニーカーをオンラインで見つけることが多いですね。たとえばナイキの『SNKRS』っていうアプリとか、スニーカーウォーズのLINE@もおすすめです。抽選サイトだとSLAM JAM、End.なんかを見ているかな。店舗に並ぶこともありますよ。
徳永
どうしてもほしいものはメルカリとか、フリマアプリで買うこともありますね。
メルカリマガジン編集部
どのくらいの頻度で買われるんですか?
田面木
うん、それはね…家族も読んでるかもしれないから…。
徳永
気持ち、分かります(笑)。僕も新しいスニーカーを買うと、奥さんによく「同じ黒の似たようなやつ持ってなかった?」とか言われちゃうんです。「いや、素材が違うんだよ! 見て、こっちはスエードだよ?」とかプレゼンするんですが、違いがなかなか伝わらない。
あと、スニヲタあるあるとして、収納問題があるんですよね。家族としてはかさばるので「箱を捨てて」って話になるんですけど、僕らとしては箱にも価値があるので捨てたくない。
田面木
スニーカーチャンネルのメンバーで、家に置くと家族に怒られるから全部会社に置いてる猛者もいたよね。
徳永
そうそう、席の周りがナイキの赤い箱で要塞みたいになってて、本人が全然見えないの。
田面木
危ないので片付けてもらいましたが(笑)。
徳永
でも最近は奥さんにもいいものがあると「これ可愛いよ!」ってオススメするんです。たまに「あ、いいね」って言ってもらえると嬉しいんですよね。
田面木
僕もお揃いを提案したりしてる。「こちら、23センチもあるようですが、お揃いでいかがですか?」みたいな。これもスニヲタあるあるですかね(笑)。
スニーカーは僕らの青春
メルカリマガジン編集部
そもそもスニーカーの世界にハマったきっかけは何だったのでしょう?
田面木
僕は81年生まれで、ちょうど裏原宿ブームど真ん中の世代なんです。当時はネットの情報もないので、『smart』や『Boon』という雑誌のストリートスナップを隅々まで読んでいましたね。「やっぱLOWRIDERいいな。20471120いいなーー」と。
あのムーブメントの中でスニーカー好きになって、それが今でも続いていますね。
徳永
僕は小学生のころにエアマックスブームがあったんですけど、その時思ったんです。「なんて宇宙的な靴なんだ」と。
田面木
はいはい、あの未来感ね。
メルカリマガジン編集部
心が通じてますね(笑)。
田面木
Air Max 95イエローグラデだよね。
徳永
はい。それでスニーカーがすごく好きになって、中学に入って初めて買ってもらったのがAIR FORCE 1の白だったんです。
田面木
おぉ、いいね〜!! 今でもAIR FORCE 1のローカットの白を履いている人を見ると、「ああ、この人はさんざん履いてきた人なんだな」って思うよね。いろいろ周って、ここに戻ってきたんだなって……(遠い目)。
徳永
そうそう! おしゃれな人が返ってくる場所というのか(笑)。僕も白のAIR FORCE 1は、必ずミドルとローカット一足ずつストックがあります。
田面木
ストックしちゃう気持ち、分かる。
徳永
いつNIKEの工場に隕石が落ちてくるかわからないじゃないですか。
田面木
え、なに、そっち?!(笑)
徳永
不謹慎なことを言ってすみません。でもそのくらい自分にとっては大切な、原点というか。
メルカリマガジン編集部
有事に備えてAIR FORCE 1なんですね。トイレットペーパーとかではなく。
スニーカーはタイムカプセル!?
メルカリマガジン編集部
そこからどんなスニーカーを履かれてきたんですか?
徳永
中学はバスケ部に入ったんですが、『スラムダンク』の桜木花道が履いていたAIR JORDAN 1に憧れて。1年のときは学校から与えられるASICSを履かないといけなかったんですが、どうしても欲しくて、2年になってやっと手に入れたんです。
ただ初めて履いた日にはしゃぎすぎて、捻挫しました。松葉杖つくくらい激しいやつです。
田面木
気持ちが高まっちゃったんだ。「ついに俺とバスケとAIR JORDAN 1と……グキッ」みたいな(笑)。
徳永
高まりすぎましたね。その後、古着にも興味がでてきて、ヴィンテージスニーカーにもはまりました。それからCORTEZっていうナイキのランニングシューズも好きになって・・・
田面木
ヴィンテージの領域に足を踏み入れちゃうと、またこう深い沼がね。
徳永
そうなんですよ。でもシルエットが日本のものより細長くてかっこいいんですよね。ヴィンテージスニーカーって、加水分解でどうしてもソールが固くなって割れちゃうんですけど、当時はまだ80年代のNIKEとかぎりぎり履けたんです。
田面木
今はあの時代のヴィンテージものは劣化して履けないもんね。
徳永
でも……たまに買っちゃいますね、観賞用として(笑)。さらなる劣化を防ぐためにサランラップでぐるぐるに包んで、実家のベランダに密封して置いてあるんです。将来、自分の子どもに名品として見せてあげたいんですよね。
田面木
子への伝承を見越して(笑)?!
徳永
もうタイムカプセルだと思ってますね。でもこの間、実家から「このサランラップに包んであるゴミみたいなの何なの、捨てていい?」って連絡があって「ヤメロォ〜!」って慌てて止めましたね。危なかった。
田面木
親御さんにとっては怖かっただろうね、正体不明の塊がベランダにあって(笑)。
いまお気に入りのスニーカー
メルカリマガジン編集部
最近よく履かれているスニーカーってありますか?
田面木
徳永くんはCONVERSEのALL STARの印象が強いよね。しかもすごくレアだったり、いい色を履いてるんだよなあ。
徳永
今日履いているのはブルースエードですね。70年代のCHUCK TAYLORっていうヴィンテージがあるんですけど、そのゴールドも好きですね。からし色なんです。確かにALL STARはローテーションの中から消えたことがないかも。
田面木
服に合わせやすいよね。シンプルだから、ビジネスシーンでも使えるし。
徳永
時代かもしれませんが、服装の多様性が広がる中で、スニーカーも様々なシーンで許されるようになってきたなと感じています。なので基本的にその日の予定だったり気分に合わせて、履くスニーカーを選んでいますね。
田面木
いまローテーションはどんな感じ?
徳永
仕事でも合わせやすいのは黒のCORTEZですかね。革靴のように磨いて履きたいなと思って買った一足です。
田面木
それかっこいいな。レザー素材だもんね。
徳永
あとは AIR JORDAN 1はやっぱり好きで、つい集めちゃうんですよね。最近よく履くのは「ノースカロライナカラー」というバージョンです。ファンにはたまらないカラーリングのみならず、ヴィンテージ風の加工をしている逸品です。
田面木
いいね〜バスケ部での思い出も蘇るね(笑)。
徳永
New Balanceもローテから外れたことないですね。王道のスニーカーですが、最近のお気に入りはグレーカラーというオーセンティックなカラーに、ピンクのロゴでアクセントがある一足。
田面木
くー渋さと可愛さのバランスが絶妙だね。
スニーカーの履き方にも流儀がある
メルカリマガジン編集部
いろいろなデザインやカラーバリエーションを自由に楽しんでいらっしゃるんですね。
徳永
IT業界だと特に自由度は高いかもしれませんね。
田面木
ただ、天気は気にするかもしれない。なんとなく「晴れの日用」と「雨の日用」があるんです。
メルカリマガジン編集部
雨だと水に強い素材のものを選ぶとか?
田面木
いや、素材とか関係なく、自分の中のランクかな。それこそストックがあるとか、ちょっと年季入ってるやつは「雨の日用だな」とか。
最近だとNIKE AIR MAX 97 SILVER BULLETが雨の日用になってますね。すごいお気に入りなんだけど、結構ヘタってきてるから。
メルカリマガジン編集部
天気以外にも、スニーカーのメンテナンスで気をつけてることはありますか?
田面木
新品で買った場合は、CREP(クレップ)っていう防水スプレーを全体に吹きかけるようにしてるかな。
徳永
僕は家にスニーカー用の「激落ちくん」が大量にあるんですね。週に1回バケツに水を入れて、「磨く用の靴」のソール周りを毎週手入れしてますね。
メルカリマガジン編集部
「磨く用の靴」と「磨かない用の靴」は何が違うんですか?
徳永
たとえば今日履いているCONVERSEは、基本磨いちゃいけないんですよ。憧れていた人たちが汚して履いていたので、僕も自分なりに汚しながら履くのがかっこいいなと思って。
田面木
そうそう、CONVERSEは磨かないね。
徳永
でもCONVERSEでも、例外的にONE STARは磨くとか、細かいこだわりはあるんですけど(笑)。
田面木
分かる、CT70の先っちょをピカピカにさせておきたいんだよね(笑)。僕は最近Yeezy Boost V2のGlowを買ったんだけど、それでソールプロテクターのリシューブネイターソールシールドを買ったの。
だけど、あれ難しいね。ドライヤーの熱で溶かしてソールに貼るんだけど、型取りが難しくて。
徳永
でも確かにメルカリで売るとき、ソールが茶色いと「アアァ……!」ってなりますもんね。
最後にいま気になるスニーカー
メルカリマガジン編集部
最後に、いま注目しているスニーカーはありますか?
田面木
HOKA ONE ONEが気に入っていますね。トライアスロンなんかで使われる厚底のスニーカーなんですけど、履き心地が抜群なんです。出張の時はこの靴が必需品になりました。
徳永
最近リメイクが流行っているのですが AIR FORCE 1やStan Smithのリメイクで、アッパーだけ残して革靴のソールを合わせたものがでています。アムステルダムの「PETERSON STOOP」というブランドが作っているのですが「よくNIKEがOKしたな」と思いますね。かっこいいです。
田面木
音楽って聞いてた当時の思い出があるじゃない。スニーカーも「あの時こうしてたな……」って思い出したりするよね。
メルカリマガジン編集部
お二人にとってスニーカーは、青春時代をリプレイする装置みたいなものなんですね。
徳永&田面木
そうそうそう、そうです!
メルカリマガジン編集部
ハモった(笑)。
田面木
徳永くん、なんかすごい汗かいてるけど大丈夫?
徳永
愛が溢れちゃって、体温が上がってしまいました。
終わりに
スニーカーをきっかけに、世界中の人と会話を始めるということができるというのはスニーカーの魅力の1つだなぁと感じた取材でした。「いい靴は、素敵な場所へ連れていってくれる」という欧州のことわざを思い出しますね。