旅行2021.06.07

「またいつか、世界の果てで会おう」118ヵ国を巡ったイモトアヤコさんが、必ず持っていく旅グッズ

2007年から日本テレビ系バラエティ「世界の果てまでイッテQ!」のワールドツアーで、世界中を旅してきたイモトアヤコさん。さまざまな土地を訪ね、現地の不思議な生き物や知られざる風習を紹介してきました。その一方で、「イッテQ!登山部」のメンバーとしてエベレスト登頂などにも挑戦。これまで巡った国々は、なんと118ヵ国にものぼります。

何度も旅をするうちに、イモトさんがスーツケースに入れるアイテムは自然と厳選され、いまでは「これを持っていけば間違いない」という旅グッズのスタメンが出来上がったそう。不要になったものは、メルカリで売ったりもしているんだとか。
現在は「ジャパンツアー」を決行しながら、またいつか世界を旅する日々を待ち望むイモトさんに、「旅の必需品」について寄稿していただきました。(文・写真提供/イモトアヤコ、タイトル文字/熊谷菜生、編集/メルカリマガジン編集部)

シャレオツカメラ女子に憧れ、たどりついた「おじさん激推しカメラ」

海外ロケに行き始めた最初の数年間。私は携帯電話の「カメラ機能」以外のカメラというものを、一切持っていなかった。これはもう後悔してもしょうがないが、とてつもなく勿体ないことをしたもんだと思う。

何年かしてそのことに気づいた私は、ちょうど世間で流行っていた小さい一眼レフカメラ、いわゆるミラーレスを手に入れた。オリンパスの「PEN」という、当時宮﨑あおいさんがコマーシャルをしていたカメラだった。意気揚々と首からぶら下げ、「空、雲、カプチーノ」といったシャレオツカメラ女子の三種の神器をパシャっていたのだ。もちろん海外ロケにも持って行き、撮影の合間などに風景や出会った人などを撮っていた。

そんなある日旅先で、カメラのことならのプロ中のプロ、(ロケに帯同していた)山本啓太カメラマンに「写真好きならやっぱフルサイズだよな。今ならキヤノン5D Mark IIにカールツァイスのレンズだな」と聞いたこともない呪文のようなワードを、矢継ぎ早に言われた。ちんぷんかんぷんだった。しかし相手はプロのカメラマン。カメラの知識に関しては、おそらく宮崎あおいさんより豊富なはず(たぶん)。すぐに「詳しく教えてもらっていいですか?!」と言われたものをメモり、帰国後すぐに家電量販店のカメラコーナーに向かった。

店頭で「キヤノン5D Mark IIにカールツァイスのレンズをつけたい」というと、店員さんは「かなりお詳しいのですね、渋いチョイスですね」と言った。そりゃそうだ、ほぼ50歳にもなるおじさんカメラマンの受け売りなのだから。だがその事実は隠しつつ、誇らしげに「宮﨑あおいさんおすすめ」の3、4倍の値段はする「おじさんカメラマンおすすめ」のカメラを手に入れた。それは、絶対に片手では撮れない重さの無骨な相棒だった。

旅先で撮った写真を見ると、視線の先にあった旅の表情がよみがえってくる(撮影/イモトアヤコ)

ただ、やはり名機。最高に素敵な写真が撮れるのだ。単焦点のオートではないレンズも、これがまた柔らかい良い味を出してくれる。マダガスカルで出会った二人の幼なじみ、台湾の屋台、姪っ子の成長...いろんな記録をこのカメラを通して焼き付けることができた。

そして年月も経ち、SDカードが使えないなど、時代の流れの中でさすがに少し不便を感じてきたころ。またまた例のおじさんカメラマンとロケで一緒になり、禁断の扉をあけてしまった。うっかり「最新のおすすめカメラないですかね〜」と聞いてしまったのだ。すると「やっぱ今はSONYのα7R。動画もきれいだしプロも結構使っている」と還暦を迎えた山本カメラマンは、またもや淀みなく言った。しかし今回はちゃんと聞き取れたし、実はすこし気になっていた商品でもあったのだ。山本カメラマンのお墨付きをもらってしまい、これまた帰国後すぐに家電量販店へ。とてつもなくカメラに詳しい中国からきたという店員さんにも「このカメラは本当に良い」と第二のお墨付きをもらい、もはや迷う余地はなかった。

2代目の愛機「SONY α7R」

それから海外ロケやプライベートの旅先でも、この新たな相棒とはいつも一緒だ。
撮った写真はたまにインスタグラムにあげるくらいなのだが、とても楽しい。スマートフォンで手軽に撮れる写真も好きだし便利だけど、撮るぞ!って気合いを入れて気持ちを込めてシャッターを押す儀式も大好きで、「なんかぽくない?  私、“やってる”っぽくない?」とにやにやしてしまう。憧れのシャレオツカメラ女子とはちょっと違うけど、おじさんカメラマンの渋すぎるアドバイスのおかげで旅がまた一つ楽しくなりました。

山も海も。どこまでも行ける、ホカオネオネの「ボンダイ6」

もし私が究極のミニマリストになり「靴は1足しか持たない」と決めたら、迷うことなくホカオネオネの「ボンダイ6」にする。それくらいこの黒くて一見ぼてっとしたスニーカーにはお世話になっている。旅先では一にも二にも、とにかく歩きやすく疲れにくい靴が必需品である。ファッション性を重視し、少しイキった靴で行こうものなら大変だ。初日に心が折れ、行動範囲が日に日に狭まり、場合によっては現地のお店でもう一足調達することになる。だが、このボンダイ6に出会ってからは、そんなことは一回もない。履いた瞬間あまりの気持ちよさに「こいつとならどこまでも行ける」と小躍りしたほどだ。

ホカオネオネ「ボンダイ6」

旅先で少し早く起きてはホテルの周りをぶらぶらしてヒイヒイする(イモト的に“萌え”の意)カフェを見つけてみたり、雑誌『ターザン』の表紙が決まった時は、旅先でもトレーニングしようと、こいつと一緒に中国の僻地でランニングしたり。ボンダイ6がすごいのは、これだけ機能や履き心地が良いのに、ファッション性にも長けているところだ。ヨーロッパのちょっと良い感じのレストランでも、ボンダイとであれば引け目なく食事することができる。プライベートで沖縄旅行したときもボンダイと。テンションが上がって海でパシャパシャし、濡れた足をそのまま突っ込んだのだが、数分後には乾いていた。速乾性もあるのだ! 万能すぎる。

今では気に入りすぎてレザータイプやワイドタイプなど3足ほど履きまわしている。結果、物欲まみれの私が究極のミニマリストになることは難しいが、いつかそんな日がくるのであればどこまでもボンダイと共に、である。

イモト流時差ぼけ対策

私の飛行機での過ごし方には、長年の旅生活で身につけたちょっとしたハックがある。まず乗る前。早朝であろうが深夜であろうが、空港のレストランでたらふくご飯を食べ、お腹いっぱいにしてから搭乗する。そしてその満腹感とともに爆睡。機内ではお水以外はほぼ口にしない。着陸の2~3時間前に目が覚めると、だいたいCAさんに食事はどうだと聞かれる。「NO, thanks」というと「信じられない!大丈夫か?」みたいな反応をされるが、それでもNOだ。NOといえる日本人なのだ。経験上アメリカやヨーロッパなどの長時間の飛行機移動は、この方法だと現地についてからの時差ぼけが少ない気がする。

しかし直行便一本で到着すればよいのだが、場所によってはそうはいかない。ブラジルや南アフリカなどに行く際は、まずアメリカまで12時間、そこで5~6時間のトランジットをしてからの10時間飛行――みたいなことがざらである。寝ても寝ても着かない。そうなってくるとさすがに先ほどの作戦だと身体がついてこなくなり、完全に時差ぼけ地獄におちいる。しかも年を重ねれば重ねるほど、時差ぼけはひどくなる一方だ。現地に着くと夜なのに飛行機で寝過ぎて眠れないのだ。

寝る場所もさまざま

そんな時に私が頼りにしているのは快眠サプリメント。体内のリズムを調整してくれるもので、現地で夜「眠れなそうだなぁ」と感じた時に飲むと睡眠導入がスムーズになり、翌朝もすっと目覚め「時差ぼけいっちょ完了!」といった感じである。もちろん毎回使うわけではないが「地球の裏側」クラスまで遠方にいく際には、お守り代わりに携帯している。

僻地のロケでは必須アイテム、お手軽防ダニシート

ジャングルや山奥など、いわゆる僻地に行くときによく持って行くものが「防ダニシート」だ。既製品も売っているのだが、私は100均などにある携帯できるビニールシートやサバイバル用のアルミシー トみたいなものを、勝手に防ダニシートとして使用している

私が初めてダニにやられたのは、10年ほど前にグアテマラのティカル遺跡に行った時のこと。遺跡近くのロッジに宿泊したのだが、見るからになんとなくジメジメしているベッドだった。そして翌朝。私は凄まじい痒みに起こされ、悶えた。脚を見ると、数えきれない赤いブツブツ。明らかに蚊とは違う二重にかまれたような痕。すぐさま現地のコーディネ ーターさんに報告すると 「あーダニですね。半年くらいは痕残りますよ」という回答。最悪である。半年間もこの痒みとブツブツに支配されるなんて。だが、もう後の祭りである。私だけでなく、スタッフさんたちも同じようにダニにかまれ、ブツブツができていた。なぜか不思議と、結束力は高まった。ダニのいやらしいのは、皮膚の柔らかそうな部分を狙ってくるところ。 内ももや二の腕の裏、指の間といった「よりにもよってそこ!」といった場所を噛むのだ。
この経験から少しでもじめっとしてる雰囲気のお部屋であれば、冒頭で書いたオリジナル防ダニシートをベッドマットの上に引き、布団は使わずバスタオルをかけて寝るようになったアルミシートなどはシャカシャカうるさいわ、反射で目がチカチカするわで寝心地は最悪なのだが、ダニに食われることを思ったらどうってことはない。

白飯に恋い焦がれ。アルファ米と塩昆布という救世主

海外に行く楽しみの一つが、現地の美味しい食事である。イタリアなんかに行った日にゃ、美味いパスタに洒落たチーズ、お出汁がしみまくりのリゾット、もう2〜3キロ増量は許容範囲で覚悟して挑む。ただ毎回イタリアやスペインといったグルメな場所に行くわけではない。というか、私の旅のほとんどは自然豊かな僻地に行くのである。そうなった場合、食事もパサパサのパンと噛み切れない肉の塊というのがセットになってくる。日本と違いコンビニのおにぎりでも買って、という訳にはいかない。特にランチに関しては移動飯が多いので、よほど発展した街でファストフード店でもない限りは、村の商店で調達したパサパサのパンにチーズと、まったく水分のない萎れたレタスとトマトをはさんで車で食べる」のが定番のランチである。

イタリアでのご飯。しかし、こんなご馳走はレアである

こちらが定番のランチ風景

ただアフリカはフランス領だった国も多いため、たまにとんでもなく美味いフランスパンに巡り会うこともある。以前アフリカ・ベナンの水上マーケットで、私の上半身ほどの大きさはある巨大フランスパンに出会った。その大きさも驚きだったが、あまりの美味しさに何も挟まず、ただただ巨大フランスパンをむさぼっものだ。

ベナンで見つけた最高に美味しいフランスパン

そんな思いがけない美味しい出会いもある一方、普段から和食好きの私は、とにかく日本のお米が大好き。海外に行き数日も経つと、米に恋い焦がれだす。しかし移動が多い中で炊飯器を持っていくわけにもいかないし、都合良く行く先々に日本食屋さんがあるわけでもない。そんな時の救世主が「尾西の白飯」と「塩昆布」である。これはアルファ米と言われるもので、袋にお湯を注ぐだけで15分後にはあら不思議! 炊きたてのご飯ができている。登山ロケで山に行ったときに登山家の方から教えてもらったものだ。便利さもさることながら、味も抜群に美味いのだ。

尾西食品「尾西の白飯」

それからというもの普段のロケで常備している。そして私のおすすめの食べ方は、炊きたてのアルファ米の袋に塩昆布を直接いれるのだ。これがもう超美味い。アフリカのコートジボワールのような、日本食なんか滅多にお目にかかれない地で食べた日にゃ、感涙もんの美味さである。

もちろん、旅ではその国のものを食べるのも素晴らしい経験になる。ただやはり自分の安心する味を携帯しておくというのも、長期で旅をするには大切なことだと、118カ国行ってみて思ったのであった。

どこでも「家」になる、無印の爆睡パジャマ

たとえ1泊の旅行であろうと必ずお供させるのが、無印良品の脇に縫い目がない「フランネルパジャマ」。このパジャマに出会うまでの私は、寝るときの格好はスポーティなTシャツに短パン。というか部屋着とパジャマはほぼ同じ、なんならコンビニもその格好で行くくらいの人間だった。パジャマに対しての認識も、小学生の姪っ子たち(子ども)が着るもの、もしくは私の父母(年配の人)が着るもの、という感じだ。コンビニにも行きづらく、宅配便の方の前に出るのも気まずい、寝る時にしか着られないものなど効率が悪いと思っていた。

しかもそれを海外ロケにまで持って行くなんて、もってのほかだった。20歳から30歳くらいまでは、次の日の衣装を着てギリギリまで寝る、そしてそのままロケをするーーというのが私の睡眠スタイルだった。効率がいいのか、ただのズボラなのか。とにかくパジャマとは縁もゆかりもない人だった。

翌日の衣装を着て寝るのが習慣だった

そんな私に変化が訪れたのは、30歳の引っ越しのときだった。引っ越しを機に少し「丁寧な暮らし」を心がけてみようと思い立ち、巷の丁寧な方々の情報を集めていると、驚異的な事実が発覚した。ほぼみんなと言っていいほど、丁寧な方々はパジャマを着て寝ていたのだ。 なかには数万円もするパジャマを愛用している方もいるではないか。しかしそれまで次の日の衣装を着て寝ていた自分が、いきなり数万円のパジャマに身を包むのは、さすがに体が追いつかない。というわけで、良いものをお手頃にゲットできる無印良品さんに行くと、さまざまな種類のパジャマがあり、私はひとつひとつ手触りをチェックしていった。そこで出会ったのだ。私の睡眠を満たしてくれる運命のパジャマに。触った瞬間、あまりの気持ちよさになぜかパジャマを抱きしめてしまった。

無印良品「フランネルパジャマ」

それからというもの、家でも旅先でもいつもこのパジャマで寝ている。パジャマを着ることにより「私は今から寝ます!」 宣言を自分自身にできるというのも、思わぬ効用であった。今では毎シーズン2着ずつ買い足しているくらいだ。旅中は時差があったりおのずと神経が高ぶり、どうしても睡眠が浅くなる。でもこのお気に入りのパジャマのおかげで、どこに行ってもいつもと同じように寝られるようになった気がしている。

パジャマから着替える朝の3分間は、衣装のまま寝ていた頃と比べると、効率的には少々悪いかもしれない。だが結果、もっと価値のある深い眠りとスイッチの切り替えをもたらしてくれることを、10年前の自分に言ってやりたい。

いまはこれらの旅の愛用品を持って、119ヵ国目のどこかへ行ける日を楽しみにしている。またいつかまだ見知らぬ誰かに、世界の果てで出会えることを願って。

イモトアヤコ 
1986年1月12日生まれ。鳥取県出身。
2007年より日本テレビ系バラエティ「世界の果てまでイッテQ!」、TBS—ラジオ「イモトアヤコのすっぴんしゃん」、NHK・Eテレ「テレビで中国語」に出演。その他ドラマ・舞台などの俳優業やエッセイ「棚からつぶ貝」(文藝春秋)など執筆活動も行っている。

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メルカリマガジン編集部

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