記事で読む2026.09.29

古着屋やメルカリは「他人のクローゼット」。スタイリスト・伊賀大介と杉本学子のリアルな買い物

「最近、何買った? 何売った?」というお買い物トークを入口に、さまざまなゲストの価値観や本音をのぞいていくビデオポッドキャスト「バイバイ BUY×BYE」。3回目のゲストは、スタイリストの伊賀大介さんと杉本学子さん。ファッション誌を入り口に、映画やドラマの第一線で活躍してきた二人は、普段どんなものを、どんな理由で買っているのか。子どものために選んだ古着、仕事で探すデザイナーズアーカイブのバッグ、何度も読み返す漫画、部屋に置いておきたいアート。買い物の話を聞いていくと、スタイリングにも通じる、二人の「生活へのまなざし」が見えてきた。(取材・執筆/長畑宏明、撮影/山田沙百合、編集/メルカリマガジン編集部)

古着屋は「他人のクローゼット」

ーーまず、お二人はどういう関係なんですか?

伊賀:友達みたいなもんだよね。
杉本:私は専門学生の頃から伊賀さんを見ていて、ずっと憧れのスタイリストでした。あるCMの現場でご一緒した時に「大ファンです。いつか映画やドラマみたいな長い作品もやってみたいです」と話したんです。そうしたら数か月後、本当に声をかけてくださって。

ーーそれが、杉本さんにとって初めてドラマの衣装を手がけた『大豆田とわ子と三人の元夫』だったんですよね。

伊賀:脚本を読んだ時に、自分一人で完結させるより、もう一つ脳みそがあった方がいいと思ったんです。とわ子というキャラクターを考えた時に、杉本さんが入ったらうまく進みそうだなと。
杉本:最初に一緒に脚本を読んで、「この人はこういう生活をしているはず」「ここにこう書いてあるなら、こういう人物なんじゃないか」と解いていきました。

ーー具体的に、衣装を考える上でどんな方針があったんですか?

伊賀:杉本さんはそれまでエディトリアルを中心にやっていたから、その感覚をそのまま持ってきてほしかった。普通、ドラマの衣装を考える時って「この人はいくら稼いでいて、だからこのくらいのランクの服が買える」とか、生活のリアリティを考えるじゃないですか。でも、あのドラマでは「クローゼットは無限大でいい」と。
杉本:当時はコロナ禍で、みんな外に出られず、部屋着で過ごしていた時期でもあったんですよね。
伊賀:そう。だからドラマを見た人が「素敵な服を着て出かけたい」と思えるようなものにしたかった。リアリズムだけを追うんじゃなくて、あの作品なら多少ファンタジーに振っても成立すると思ったんです。

ーー色もかなり印象的でした。

伊賀:音楽もヒントになりました。坂東祐大くんの音楽って、オーケストレーションでいろんな楽器が入っていて、テーマ曲も毎回アレンジが変わる。だったら衣装も、いろんな色を使っていいじゃん、と。杉本さんがかわいい服をいっぱい持ってきてくれたから、「いいじゃん、いいじゃん」って(笑)。
杉本:伊賀さんから「とにかく華やかに、ファッションを楽しんでいる人にしたい」というお題をもらえたので、自分一人だったら選ばなかったものにも挑戦できたんです。

ーーでは早速、最近買ったものを教えてください。

伊賀:ひとつめは、息子用に買った古着のデッドプールのTシャツ。これは息子が最近いつも着ています。あと、これ。ハーバードのスウェット。映画『チャレンジャーズ』で、(主人公のタシ・ダンカン演じる)ゼンデイヤがハーバード大学のスウェットを着ているのを見て、こっちは娘に着せようと思って。下北沢の古着屋で2000円くらいでした。

ーー同じ服のくくりで、NIKE ACGのブルゾンもありますね。これはどういうきっかけで?

伊賀:NIKE ACGは見つけるとだいたい買っちゃうんです。中学生の頃、(プロテニス選手の)アンドレ・アガシが履いていたスニーカーを見て、衝撃的にかっこいいと思ったのが始まり。90年代のACGって、今より色が狂ってるんですよ(笑)。
ーー普段から古着屋によく行かれるんですね。

伊賀:行きます、行きます。トレファクとかセカストみたいなところも。ああいう店って、俺にとっては「他人のクローゼット」なんですよ。そこから、仕事で使いたいものがあったらお金を払う。「この、6回ぐらい洗ってある感じがいいじゃん」みたいな。
杉本:私も、仕事で使えそうなものを見つけると、ついついストック用に買っちゃいますね。ドラマでも古着をかなり使います。

ーー仕事用の衣装をメルカリで買うこともあります?

杉本:買いますね。『大豆田とわ子と三人の元夫』で2018年の時代を描く時に、当時のセリーヌのバッグを持たせたくてメルカリで探したり。バッグって時代性がすごく出るんです。
伊賀:ファッションが好きな人が見たら、「あ、この時代ね」ってわかる。例えばマーク バイ マーク ジェイコブスのキャミソールなんかを見ると、『うわ、2000年代じゃん』って懐かしくなるとか。

漫画も本も「紙で持っていたい」

ーー服以外だと?

伊賀:最近『柔道部物語』(小林まこと/講談社)を全巻買い直しました。本当に思い入れのある漫画で。特に最後の西野戦とか、大ゴマの使い方がすごいんですよ。俺の持論ですけど、井上雄彦先生も小林まこと先生からかなり影響を受けてるんじゃないかと思っていて。試合はものすごく熱いけど、日常パートのギャグもめちゃくちゃ面白い。

ーーやっぱり、漫画は電子ではなく紙なんですね。

伊賀:紙ですね。
杉本:私も、ちゃんと頭の中に入れたい本は紙です。さっと読みたいものは電子でもいいけど。

ーー杉本さんは最近、どんな本を?

杉本:思想系が多いです。40代になって、「元気に生きられるのって、あと半分くらいなのかな」と考えた時に、今までの人生を変えてみたいと思って。本当に今までの人生も大好きなんですけど、この先をもっと豊かにするには、自分には知識が足りないんじゃないかと思ったんです。

ーー読書は仕事にもつながる?

杉本:ドラマをやるようになったことも大きいですね。自分が生きたことのない人生を送る人をスタイリングしなきゃいけない。今までは洋服を知っていればできていたことが、もっと人物に寄っていく必要が出てきた。だから、人を知るためにいろんな本を読むようになりました。

ーー伊賀さんも、漫画以外の本もかなり買う?

伊賀:そうですね。時間があるときは新宿の紀伊國屋を一周して、気になったものや欲しいものがあれば、どんどん買います。

ーー今日も二冊お持ちいただきました。

伊賀:山口晃先生の『すずしろ日記』。絵はもちろんなんだけど、小さいコマとかも面白いし、字も味がある。近藤聡乃さんの『ニューヨークで考え中』も、ひらがなの手書き文字を見てるだけで心が落ち着くんですよ。

『すゞしろ日記』山口晃/2009年/羽鳥書店
『ニューヨークで考え中』近藤聡乃/2015年/亜紀書房

「好きなものに囲まれている」ために買う

ーーでは、今度は杉本さんが「最近買ったモノ」を教えてください。

杉本:山崎悠人さんの木彫りの作品です。今日持ってきたのは、一輪挿しとサボテン。個人的に植物系を集めていて、中には車の作品なんかもあるんですけど、それも全部木彫りなんです。手作り感と、ちょっとほっこりする感じが好きで。
ーー山崎さんのことは、どうやって知ったんですか?

杉本:知り合いのインテリアショップに置いてあって、直感で「これ欲しい」と思って調べたのがきっかけです。

ーーインテリアもお好きなんですね。

杉本:すごく好きです。家の空間が好きだし、アートもモノも好き。好きなものに囲まれて、それがきちんと整頓されている状態が落ち着きます。焼き物の食器も集めていますし、この前はメルカリでラグも買いました。

ーー自宅の物量は多い方ですか?

杉本:うーん、自分のパーソナルスペースはそんなにモノだらけにはしたくなくて。衣装部屋はすごい量ですけど(笑)。
伊賀:自分の洋服はたくさん買ってない?
杉本:最近は少し控えてますけど、それでも月に4、5着くらい。すごく「うわー、これ欲しい」と思ったら買っちゃいます。

ーー伊賀さんは、メディアに出る際も、格好がいつも変わらないですよね。

伊賀:そもそも服をあんまり買わないから(笑)。あと、自分が着たいから買うだけじゃないんですよ。古着屋でTシャツを見て、「俺は着ないけど、あいつが着たらいいじゃん」と思ったら買っちゃう。特に古着なんて出会いだから。

ーー「所有したい」というより、モノの行き先まで考えている?

伊賀:そうかもしれない。どこかの誰かが着ていたものが段ボールに入って東京まで流れ着いて、今は高円寺とかにあるわけじゃん。その歴史を自分のところで終わらせてやる、っていうか(笑)。でも、それもまた、次の人に渡っていく。そういう意味で、考え方的にはメルカリとかすごい好きなんですよ。
杉本:私は逆に、自分の暮らしを気持ちよくするために好きなものを買っているところがありますね。

ー目的は違っても、二人とも「そのモノがどこにあるといいか」をすごく考えているんですね。

あの登場人物はどの沿線住み? ドラマのスタイリングが面白すぎた(ゲスト:伊賀大介/杉本学子)

出典: YouTube

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メルカリマガジン編集部

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