バラドルの新星 NMB渋谷凪咲のルーツは『ぬかるみの女』とラジオと昭和歌謡

「大喜利が強いんですよ、ビビるくらい」。バラエティー番組「アメトーーク!」(テレビ朝日系)の「小物MC芸人」の回で、麒麟・川島明さん千鳥・ノブさん から絶大な支持を得た人物がいる。「自分がMCのときスタジオにいると助かる人」として手練のお笑いベテラン勢に名を連ねたのは、なんとNMB48の人気アイドル渋谷凪咲さん。ほんわりした天然キャラながらその即興力と包容力で、芸人に安心感を与える存在としていま注目を集めている。

7月18日(土)からはじまる新番組『鎮まれ!もったいないオバケちゃん』(読売テレビ)ではゲストとして登場し、MCの川島さんやFUJIWARA・藤本敏史さんらとスタジオを盛り上げる。子どもの頃から昭和歌謡が大好きで、星由里子さんのような女優に憧れていたという23歳は、同世代のメンバーから「言葉のチョイスが古いって言われます」と笑う。イマドキとはちょっと違う魅力でブレイクした、“バラドル”の新星にルーツを聞いた。
(撮影/石垣星児、編集/メルカリマガジン編集部)

お笑いの師匠はラジオ

――先日の「アメトーーク!」で渋谷さんのお笑いセンスが「鳥肌もの」だと話題になっていましたね。

本当にもうびっくりしました...。まさか「アメトーーク!」に自分の名前が出てくるなんて夢にも思わなかったので(笑)。川島さんがそんな風に感じてくださっていたのも知らなかったですし、ノブさんは1、2回お仕事させていただいたことはあるんですけど、まさか私のことを覚えてくださっているなんて思ってもみなかったんです。大阪は東京より放映時間が30分遅いんですけど、まず東京で観た方がSNSで教えてくださいました。お兄ちゃんからも「すごいで!!」って連絡がきて。私は大阪のおうちで観たんですが、お母さんは驚きのあまり仏壇に手を合わせてました。

――仏壇に(笑)。 川島さんが「いまや関西ではどの番組でもひな壇にいる」というくらい売れっ子の渋谷さんですが、その大喜利スキルはどうやって鍛えられたんですか?

いやぁとんでもないです...特殊な教育は受けてないと思います(笑)。ただ、うちは大阪では一般的なお笑い大好き家族で、ずっとお笑い番組を観ているような家でしたね。特にお母さんとは『兵動・小籔のおしゃべり一本勝負』のDVDとか、小さい頃からよく一緒に観てました。あと私はラジオがすごい好きで、昔からいっぱい聴いてるんです。いまも移動中とか、お仕事帰りに2駅手前で降りて歩きながら聴いたりとか。でもほんま、そのくらいかなあ...。

――ラジオはどんな番組を聴かれてるんですか?

ダイアンさんの「よなよな」とか、小籔さんと笑い飯さんの 「土020」とか、あと芸人さんの「オールナイトニッポン」はずっとチェックしてますね。お母さんがファンだったのをきっかけに聴きはじめた、上沼恵美子さんの「こころ晴天」も大好きです。

――かなり聴いていらっしゃる...! それが知らずしらずのうちに英才教育になったのかもしれませんね。

ふふふ、いま自分でも思いました(笑)。

大人になって家族との関係が変わった

――渋谷さんはSNSで発信するエピソードなどから、家族想いとして知られていますよね。どんなご家族なんですか?

お母さんはすごい天然で、おっちょこちょいなんですけどめちゃくちゃ優しくて、本当に「ザ・お母さん」みたいなママです。お父さんはしっかり者で、モットーは「妥協なし」。真っ直ぐで優しいパパで。ふたりともとっても仲が良くて、お互いを尊重し合っているのが子どもながらに伝わってくる両親でした。ママは子どもたちの前で、絶対にパパの悪口を言わなかったんです。「パパは一家の主で、すごい人やから」っていつも立ててたんですね。最近になってお母さんが「子どもたちがちゃんと尊敬できるように、ママはパパの素敵なところをたくさん言うようにしていた」とか、当時の教育方針みたいなことを話してくれて。昔からお母さんとはすごく仲良かったんですけど、いまは対等な立場でいろいろなことを教えてくれるようになったんです。人を立てるのが大事というのも、お母さんが身を持って教えてくれたことで、お仕事をする中でも生かしていきたいと思っています。

――昨年の渋谷さんの23歳生誕祭では、お兄さんからの感動的な手紙が読まれましたね。

お兄ちゃんは、子どもの頃はめっちゃやんちゃで自己中で、お姉ちゃんと私から「暴君」って呼ばれてたんです。当時私、電話帳でお兄ちゃんを「ブタゴリラ」って登録してましたから(笑)。でもそんなお兄ちゃんが、ラグビーをするために東京の大学に進学したんですね。大阪の実家から離れて、向こうでいろいろあったのかなと思うんですけど、人間的に成長して今度はめっちゃいい人になって帰ってきたんですよ! いまはすごい尊敬してて、大好きになりました。ラグビーはチームワークが重要なスポーツで、周りのことを考えながら結果に結びつけないといけない。そこで生まれる悩みとかプロ意識って、私のお仕事にもすごいリンクするんです。いまチームMのキャプテンをさせていただいているんですけど、グループの中にいながら自分の目標にどうやってたどりつけるかとか、人を動かすには自分が変わらないといけないとか、よくお兄ちゃんとはそんな話をしていますね。仕事での自分の弱みとか、できひんかったこととか...ママとかパパに言ってないことでも素直に話せるし、自分の次につながる答えをくれるんです。お兄ちゃんも「なぎがこんなに頑張ってるから、俺も頑張らないと」って言ってくれてます。

――ご家族と大人同士の関係になったんですね。

外では「なぎちゃんは天然やな」って言われたりもしますけど、家族の中ではお父さんとお兄ちゃんと私が、一応しっかり者キャラなんですよ。お姉ちゃんとお母さんはめちゃくちゃ天然で、ほわほわしてる。でも普段はメンバーと一緒にいることの方が多いので、休みの日は絶対家族と過ごしたいなあって思ってるんです。やっぱりこういう活動をしているとみなさんにちやほやしていただける機会もあって、それは嬉しいし有り難いんですけど(笑)、慣れてしまうと何かがズレてくる気がするんです。でも家に戻ると、自分の中身がすっと元あった位置に戻るような感覚がして。そういう意味でも、家族との時間はすごく大切ですね。あとやっぱり、いろんな番組に出させていただくと家族が喜んでくれるので、もっと頑張ろうって思いますね。

――以前ほかのインタビューで、ご兄妹でメルカリを使ってくださっていると知って、すごく仲良しだなあとびっくりしました。

そうなんです、私が着なくなった服とかをお兄ちゃんがメルカリで売ってくれるんです。NMBの握手会は私服を着ることも多いんですが、やっぱり特別な場だからちょっと派手なデザインを買ったりして、「もうこれ着ないな」ってなることもあるんですね。それならメルカリで売って、また新しい服を買おうってなる。そういうとき、お兄ちゃんに頼んだりします。お兄ちゃんはしっかりやってくれるんですよ。お姉ちゃんは天然なんで、「分かったー」って言ったのにやってへんやん、みたいなことがあるんで(笑)。

バイブルは昭和歌謡と高度成長期のドラマ

――家族好きと同じくらい、渋谷さんはNMBで昭和歌謡好きとしても有名です。2年前には、昭和の曲オンリーのセットリストでソロ公演をされていましたが、きっかけは何だったんですか?

子どものころ渋谷家は毎年旅行に行ってたんですけど、そのときいつも車でお母さんが昭和歌謡をかけてたんです。さだまさしさんや松田聖子さん、中森明菜さんとか。昭和の曲って、聴いていると映像が鮮明に浮かんできて、ひとつの物語みたいなんですよ。車で窓の外を見ながら、その歌詞の意味とか状況とかを考えて聴いていたら、まるで一本の映画を観ているような感じがして。そういう言葉のチョイスとかセンスが、昔からすごい好きだったんです。私は松田聖子さんの『秘密の花園』って曲が大好きなんですが、「つねってあげる」とか可愛いなあと思って。中森明菜さんだったら『十戒』の「愚図ね」とか、いまはなかなか使わないようなカッコいい言い回しに痺れるんです。カラオケでは斉藤由貴さんの曲が自分の声と合うというか、音程が歌いやすいので、ベタですけど『卒業』をよく歌っていますね。あとはワンマンショーでも紹介させていただいたんですが、斉藤さんの『MAY』っていう曲も好きです。私が飼っていた猫がメイっていう名前だったんですけど、ほんまに私とメイの関係を歌っているような歌詞なんです。それからさだまさしさんの『関白宣言』とか『雨やどり』とかも好きやし。昭和歌謡は、ストーリーになってる感じが、やっぱり聴いてて楽しい。話し出すと止まらないんですけど(笑)、いまも昔の歌ばっかり聴いてます。

――ほとばしる愛が伝わってきました。昭和アイドルの方や当時の作品は、アイドル・渋谷凪咲にどんな影響を与えていると思いますか?

特に意識しているわけじゃないんですけど、憧れの存在として吸収したいなと思う部分はあります。たとえば山口百恵さんの、すっごいキレイな表情とか...なんていうんでしょう、なにも作っていないような、顔に力を入れずにすっと歌ってはる感じとか。松田聖子さんのかわいい仕草、動き方や角度、あったかい雰囲気とか。あとは、いまの自分にすごく影響を与えた作品ということでいうと、『ぬかるみの女』というドラマがあるんです。

――『ぬかるみの女』...! また意外なパワーワードが飛び出しました。

ふふふ。星由里子さんが主演で、私のお母さんが小さい頃に再放送で観てたドラマやから、もう40年くらい昔のドラマですもんね。星さん演じる主人公の文子はすごい純粋な女性なんですけど、子どもたちを食べさせるため戦後の高度成長期にキャバレーで働くんです。夜の街で人の悪い部分とかも見たりするんですけど、文子は心がきれいな人で「汚い働き方は嫌やから」という理由で、真っ白なドレスを着て出勤するんです。毎回お客さんが帰るとき、文通みたいに「ありがとうございました」ってお礼状を渡すような上品な人で。礼儀とか心配りとか、大切なものを教えてくれるようなドラマでした。小学生のころ、学校から帰ってきたら友達と遊ばずに『ぬかるみの女』の録画をお母さんと観るのが楽しみだったんです。当時お昼にテレビでやっていたんですけど、再再再再再再放送くらいだったんかな(笑)。でもいまになってみると、私がアイドルとして活動させていただく中でも生かせることがたくさんあるんです。ファンの方への思いやりとか...きれいごとだけじゃない人間の汚いところとかもちゃんと描いていて、人としても勉強になるんです。いまだにDVDに焼いたものを見返しているくらい、『ぬかるみの女』は渋谷凪咲のバイブルですね。

――渋すぎるバイブルでびっくりしました(笑)。 以前NMBの吉田朱里さんが女性誌のインタビューで「自分に息子がいたとしたら、なぎさは嫁として連れてきてほしいNo.1」と仰っていました。メンバーは渋谷さんの古風な好みをどう思っているんでしょう?

うーん、やっぱりこういう自分の趣味が出ちゃってるのか、言葉のチョイスが古いとは言われます(笑)。「なぎちゃんは真面目やなあ」とか「そのまま変わらんといて」みたいなことも言われますね。あ、でもこの前ラジオで、さえぴー(村瀬紗英)さんとアカリン (吉田朱里)さんが、「なぎさには、ほんまに素敵な恋愛してほしい。もし誰かがなぎさを傷つけるようなことしたらゆるさへん」って仰ってくださってて、そんなふうに思ってくださってんねやってめっちゃ嬉しかったです。

“もったいない”と思う人はあの芸人さん

――同世代や同性からも「守ってあげたい」と思われるのが、渋谷さんらしいですね。今日は今回出演される『鎮まれ!もったいないオバケちゃん』にちなんで、渋谷さんがもったいなくて捨てられない、ずっと大事にしているものを持ってきていただきました。

渋谷さんが自宅から持ってきてくれたぬいぐるみ

これは、私が小学校の頃にサンタさんからもらった、うさぎのぬいぐるみなんです。当時「ぬいぐるみが欲しいです」ってお手紙でお願いしたんですけど、なぜか強めの主張で「サンタさんの手作りがいいです」って書いてたらしいんです(笑)。それを読んだお母さんが、手芸とかめちゃくちゃ苦手なのに一生懸命作ってくれたらしくて。いま見てみると、このスカートの縫い目とか若干あやしいし、耳の位置もここであってるんかな?という気もするんですけど、お母さんが作ってくれたんだなって思うと、ほんまに愛おしくて。もらったときからずっと、ベッドの枕元のところに置いてあります。最近は部屋もシンプルにしていて正直インテリアとは合ってないんですけど、すごい気持ちがこもってるので、ずっと大切にしようと思ってます。

「お母さんが『恥ずかしいからやめて〜』って言ってたけど持ってきちゃいました」

――これは絶対に捨てられないどころか、もはや人生の宝物ですね...!では、渋谷さんが「もったいないなあ」と思う人はいらっしゃいますか?

番組でもちらっとお話したんですけど、ダイアンの津田(篤宏)さんです! 私は芸人さんの中で一番ダイアンさんが好きで、関西圏で拝見するときは本当に面白いんですけど、なぜか東京でのお仕事ではまだまだ面白さが出てない気がするので、もったいないと思ってます(笑)。おこがましいですが、もっと本来の面白さが関東圏にも広がれ〜!って念じていますね。

――ご本人に届くといいですね(笑)。渋谷さんご自身は、今後どういった広がり方をしていきたいですか?

演技は昔からやってみたいなと思っているんです。星由里子さんとか、いまだったら綾瀬はるかさんのような女優さんが憧れなんですけど、気づいたら全然違う方向...むしろ真逆に走っている気もしてます(笑)。でもお陰さまで毎日がとっても楽しいので、この先になにがあるかまだ分からないんですけど、一つひとつ目の前のことを頑張っていきたいですね。『ぬかるみの女』みたいに、ふふ。

NMB48 渋谷凪咲(しぶや・なぎさ)
2012年、NMB48の4期生として加入。チームM所属、同チームのキャプテンを務める。
NMB48のシングル選抜の中心メンバーで、バラエティ番組にも多数出演し活躍中。
8/19にはNMB48の23枚目のシングル「だってだってだって」の発売が決定している。

出典: https://www.ytv.co.jp/obakechan/

『鎮まれ!もったいないオバケちゃん』 7/18(土)昼12:53~14:00から読売テレビで始まる新番組。7/24(金)の第2回以降は毎週金曜深夜に隔週放送。“もったいない”をキーワードに、毎回出演ゲストたちがメルカリに出品したり、メルカリで買ったものをだけを使ってさまざまな企画に挑戦する。どう値付けしたらいいのか、どんなモノがよく売れるのか、メルカリをやる上でのノウハウが満載。関西ローカルだが、読売テレビ公式動画配信「MyDo!」や「TVer」「GYAO!」で放送終了後に無料視聴も可能。 https://www.ytv.co.jp/obakechan/
30 件

WRITTEN BY

宮川直実

(みやかわ・なおみ) 編集者。猫3匹と暮らす。好きなものは、コーヒー、プロレス、海外文学、お買い物。

好きなものと生きていく

メルカリマガジンは、「好きなものと生きていく」をテーマにしたライフスタイルマガジンです。さまざまな方の好きなものや愛用品を通して、自由な人生の楽しみ方や多様性を紹介していきます。